「ニセコバブルもいよいよ崩壊か」などと言われるようになった。2025年春には、開発会社の破産により高級リゾートの建設工事が中断したとのニュースが報じられ、話題となった。
一方、札幌市在住の筆者は、今なお季節を問わず多くの外国人観光客がニセコを訪れていることを実感している。
本格的なスキーシーズンを控えるいま、ニセコエリアはどうなっているのか。2025年の10月のようすを現地からレポートする。
■「ニセコバブル」とは何か
ニセコは北海道の西部、後志(しりべし)地方に位置する。札幌市内や新千歳空港からは車で2時間ほどの立地である。
一般にニセコのリゾートエリアとされるのは、ニセコ町と倶知安(くっちゃん)町を含む地域だ。ニセコ町は面積197.13平方キロメートルの小さな町で、2025年4月現在の人口は5071人、うち外国人登録者数は733人に及ぶ。
倶知安町はニセコ町より広く、面積は261.34平方キロメートル。2025年9月現在の人口は1万4411人で、外国籍の住民は1353人となっている。
山に囲まれたニセコエリアは寒暖差が激しく、湿気の少ないサラサラした雪が多く積もる。エリア内には4つのスキー場があり、良質なパウダースノーが楽しめることから多くのスキーヤーを魅了してきた。蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山やニセコアンヌプリなどの美しい山並みも魅力だ。
オーストラリア人を中心とする多くの外国人スキーヤーが訪れるようになったニセコには、2020年頃までにヒルトン、リッツ・カールトン・リザーブ、パークハイアットなどの外資系高級ホテルが次々に進出した。
外国人向けのコンドミニアムや飲食店、多言語対応の可能な施設が増え、さらに外国人の支持を集めた。地価や不動産価格だけでなく宿泊費や人件費も高騰し、ニセコバブルなどと評されてきた。
たとえば人気のひらふエリアでは、基準地価の対前年変動率は2023年から3.3%、5.8%、9.7%と上昇し続けている。
ちなみに札幌市在住の筆者は、冬季のニセコに宿泊したことがない。北海道内の他地域に比べて宿泊費があまりに高く、とても手が出せないと感じる。北海道生まれの友人たちに聞いても、ここ10年ほどは冬季のニセコには行ってないという声ばかりだ。
比較的高級なホテルであれば1室あたりの宿泊費が1泊10万円を超えるのも珍しくなく、外国人向けの高級スキーリゾートというイメージが確立している。
とはいえ地価や不動産価格の高騰が続く中で、ニセコバブル終焉もささやかれるようになった。
2025年4月にはニセコ町曽我地区でエリア最大級となるリゾートホテルを建設中だった「La Plume Niseko Resort特定目的会社」が東京地裁による破産手続き開始決定を受け、ニセコバブル崩壊の象徴であるかのように話題を集めた。
■冬季以外にも外国人が訪れている
ニセコエリアでは、主に外国人投資家によって不動産価格が高止まりしていると言われている。「FOR SALE」と書かれた外国人向けと思われる英語の不動産広告も各所で見かけるし、今なおコンドミニアムなどの建設工事が進められているところもある。
一方、以前は冬季のスキーヤーに偏っていた外国人観光客の姿が、ニセコの知名度が上がったためか、通年で見られるようになった。
北海道民である筆者にとって、夏のニセコはホテルも安く、観光客も少ない中でのんびりできる場所というイメージだったが、近年は夏のシーズンでも、ひまわり畑や羊蹄山をバックに写真を撮るアジア系の旅行者などを見かけるようになったと感じる。
また、ヨーロッパの山荘のような雰囲気を持つJRニセコ駅は小さな駅だが、ここでも外国人観光客を見かけることが増えてきた。
今回は10月に訪ねたためスキーシーズンにはまだ早いが、多くの外国人観光客が紅葉や温泉を楽しんでいるように見受けられた。とあるリゾートホテルのエントランスには、東アジア系の団体旅行者を乗せたバスが何台も到着していた。
今後の大規模開発としては、シンガポールに拠点を置く高級ホテル「カペラ・ホテルズ&リゾーツ」が進出する計画があり、2026年に着工する見込みだ。
外国人旅行者を呼び込むリゾート地としてのニセコは、まだまだ堅調と言えるかもしれない。
■隣接する真狩村で地価上昇中
ニセコの地価高騰は、周辺の地域に波及している。2025年の地価調査書においては、ニセコ町に隣接する真狩村(まっかりむら)の上昇率が目を引く。
演歌歌手・細川たかし氏の故郷としても知られている真狩村は、もともと羊蹄山麓に畑が広がる農村地域のイメージが強い地域だ。羊蹄山の名水で育つじゃがいもやトウモロコシ、ゆり根などが特産品として人気がある。面積は114.25平方キロメートル、人口は2025年9月現在で1953人と、倶知安町やニセコ町と比べてもさらに小さな自治体である。
基準地価7900円/平米、前年度からの変動率プラス19.7%となった真狩村字真狩の住宅地周辺を歩いてみた。現地は真狩村役場や真狩小学校にほど近く、北海道道97号線の先に羊蹄山がそびえたっている景観が印象的だ。今のところ、この界隈で大規模なリゾート開発などが行われている様子はない。
ニセコのスキー場周辺で地価が高騰しすぎたことにより、リゾートの従業員用の住宅や地元民の住まいのニーズが隣接する真狩村へ流れたとも言われている。6600円から7900円ではわずかな値上がりのように感じられるが、従前の地価が安かったため、変動率1位になったのではないだろうか。
なお、真狩村は村内全域が都市計画区域外のため用途地域等は定められていないが、北海道によって「羊蹄山麓広域景観形成推進地域」に指定されている。大規模な開発行為や一定以上の規模となる建物の建設には事前の届出が必要だ。
■ニセコエリアの今後の見通しは
ニセコを訪れる外国人観光客数は、コロナ禍によって大きく落ち込んだ。2025年における前年度比の外国人宿泊者数は、倶知安町でプラス1.7%、ニセコ町でプラス0.2%だが、コロナ禍前の2018年の水準を下回っている。
一方で、新千歳空港を運営する北海道エアポート株式会社は、2025年冬季国際線スケジュールにおける東南アジア路線などの大幅な拡大、オーストラリア人スキーヤーが利用するシドニー線の運航再開を発表している。
直行便の運航が増えるため、2025年のスキーシーズンには、より多くの外国人旅行者が北海道を訪れることが予想される。
交通アクセスも改善され、一定のブランド力を獲得しているニセコには、良質なパウダースノーと快適なスキーリゾートを求めるスキーヤーが今後も安定的に訪れると見られ、ごく短期間のうちに人気が廃れるとは考えにくい。北海道民にはとても手が出せない価格であっても、冬季のホテルや民泊、駐車場等のニーズはしばらく続くと思われる。
現在すでにニセコエリアに不動産を所有している人は、引き続き手堅い経営ができるのではないだろうか。
また、ニセコエリアの長期的なトピックとしては北海道新幹線の新駅建設がある。
JR倶知安駅は、新函館北斗駅から札幌までの延伸が予定されている北海道新幹線の停車駅となる計画があり、駅周辺でも少しずつ準備が進められている。
北海道新幹線の延伸開業の時期は当初のスケジュールより遅れており、現在のところ2038年度末頃になる見込みだが、札幌や函館からのアクセス改善が期待されている。
ニセコエリアの不動産価格はすでにかなり高騰してきているとはいえ、国際線直行便の復活による旅行者増の伸びしろや北海道新幹線など、長期的に明るい話題もある。今後も注目しておきたいエリアの1つと言えるのではないだろうか。
羽田さえ/楽待新聞編集部
不動産投資の楽待 編集部
最終更新:11/14(金) 19:00