高報酬のヘッジファンドに円金利トレーダー流出、人材逼迫に拍車

4/23 8:59 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 日本に拠点を置く外資系証券などから、より報酬の高いヘッジファンドへの円金利トレーダーの移籍が相次いでる。日本銀行の政策変更を受け債券取引が活発化する中、収益拡大に向け人材獲得競争が激しさを増している。

事情に詳しい複数の関係者によると、過去1年半においてモルガン・スタンレーMUFG証券やシティグループ証券などを含めた金融機関から少なくとも12人以上の円金利トレーダーがヘッジファンドへと移籍した。今後数カ月のうちに、さらに数人の移籍が見込まれている。

関係者によれば、円金利トレーダーの積極的な採用に乗り出しているのは、ブルークレスト・キャピタル・マネジメントやキャプラ・インベストメント・マネジメントといった海外ヘッジファンド。米ミレニアム・マネジメントやシンガポールのダイモン・アジア・キャピタルも複数人を採用したという。

モルガンMUFGからは、1月にマネジング・ディレクターに昇格したばかりの人材ら2人がヘッジファンドに移籍する。そのうちの1人はブラーマン・キャピタル・マネジメントに移籍予定。ブルークレストはこのほどシティ出身者を採用したほか、他の金融機関からも2人が移籍した。

モルガンMUFGとシティ、キャプラ、ブルークレストの各広報担当者はコメントを控えた。

こうした動きは、日銀の政策変更を背景に円金利トレーダーへのニーズが一段と高まっていることを示している。日銀が2016年にマイナス金利政策とイールドカーブコントロール(長期金利操作、YCC)を導入した後、円金利は低位に張り付き、日本国債の取引量も大きく減少。債券市場参加者は収益機会を失った。しかし、22年末に日銀がYCCの修正に乗り出すと状況が改善。今年3月には両政策が解除され「金利のある世界」が復活した。

東京に拠点を置く金融人材紹介会社ディバイン・ソリューションズ・ジャパンのマネジャー、アリスター・ラムズボトム氏は「金融機関は多くのトレーダーをヘッジファンドに奪われている。すべてのヘッジファンドが目を光らせており、人材が出てくると即面談を求めるという状況だ」と指摘する。

人材育成には時間

外資系証券のみならず、野村証券やみずほ証券など国内金融機関からもヘッジファンドに人材が流出している。

ヘッジファンドは証券会社などと比べ、相対的に雇用の安定性が低く、査定評価が厳格であると言われている一方、より多くの報酬が期待できる。モーガンマッキンリーの熊沢義喜ディレクターによると、稼いだ利益に対するトレーダー自身のボーナス還元率が、証券会社では標準的に3%程度と言われているのに対し、ヘッジファンドでは20%程度になる可能性もあるという。

ヘッジファンドへの相次ぐ移籍は、東京の大手銀行や証券に100人前後いるとみられる円金利トレーダーの人材需給ひっ迫に拍車をかけている。ヘッジファンドは証券会社にとって重要な顧客でもあり、トレーダーを逆に引き抜くというのは困難だ。

野村証の野々村茂マネジング・ディレクターは18日、都内で開催された国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)のセミナーで「円金利トレーダーは不足しており、人材育成には時間がかかることから、ひっ迫した環境はしばらく続きそうだ」との見方を示した。

原題:Hedge Funds Snap Up Japan Rates Traders in Bet on Comeback(抜粋)

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--取材協力:David Ramli、Bei Hu、Ambereen Choudhury、Ruth Carson.

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/23(火) 10:43

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