【経済統計】民進党・頼新政権がかじを取る台湾の対中政策の行方

4/1 9:29 配信

週刊 金融財政事情

 今年1月、台湾で総統選挙が行われ、与党・民進党の頼清徳氏が当選した。立法院(国会)では過半数を得ることができなかったため全面勝利とは言い難いものの、2期続いた蔡英文政権に続き、民進党が初めて3期連続で国政を担うことになった。国際社会として関心が高い対中政策を巡り、頼氏個人は台湾独立志向を強く持っている模様だが、執政に当たっては従来の民進党のスタンスを継続する考えのようだ。すなわち、台湾はすでに独立した主権国家であるとの基本認識の下、政治面では中国との関係について現状を維持し、経済面では中国に対する依存度を低下させていく方針だ。
 対中経済依存度の低下を目指した政策は、蔡政権下で徐々に強化されてきた。例えば、経済や科学技術、文化などの分野でASEANや南アジア諸国との関係強化を促進する「新南向政策」(2016年発表)がある。そのほかにも、中国投資の実績がある台湾企業に対して優遇措置を提供することで台湾回帰を促すアクションプログラム「歓迎台商回台投資行動方案」(19年発表)が挙げられる。これら政策の背景には、中国の成長鈍化や人件費上昇といった中国経済の構造変化や、米中摩擦の激化といった国際情勢の変化がある。
 こうした変化を受け、台湾経済の対中依存度は低下しつつある。代表的なものが対外直接投資の動向だ。対外直接投資の国・地域別シェアを見ると、10年代前半には中国が全体の約7割を占めていたが、10年代後半には43%、20~23年には25%と、中国のシェア低下が著しい(図表)。特に20年以降は、TSMCを主とする半導体関連企業が日米欧を中心に大規模な新規・拡張投資を行ったことでシェアが大きく変化している。その要因には、新型コロナウイルス流行による供給網の混乱や先進諸国の対中デリスキング強化の流れを受け、供給網の分散化に対するニーズが高まっていることがある。
 輸出についても、中国が占めるシェアは10年代を通じて長らく20%台後半で推移してきたが、21年以降低下し続け、23年には22%にとどまっている。これには、米国による半導体の対中輸出規制の強化が影響している。
 頼政権の対外政策、特に中国との関係のかじ取りを巡っては、不確実性が高い。中国が台湾に対して今後どのような対応をするのか、また米大統領選挙でトランプ氏が再選した場合、いかなる台湾政策を推し進めるのかなどに大きく左右されるためだ。
 しかし、経済関係に限れば、米国の対中抑止の基本姿勢や各国のデリスキングの動きは続くと考えられ、台湾の対中経済依存低下の趨勢は今後も変わることはないだろう。各国製造業の生産活動に大きな影響を及ぼし得る半導体関連企業を中心に、台湾企業の供給体制がどのように再形成されるのか、国際的な供給網の行方を占う上でも目が離せない。(台湾経済部投資審議委員会「対外投資統計」「週刊金融財政事情」2024年4月2日号より転載)

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最終更新:4/1(月) 9:30

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