エージーピー「インバウンド回復で需要増」=井田・経営企画部長にインタビュー
日本の主要空港を下支えするエージーピー <9377> の業績が好調だ。インバウンド(訪日外国人観光客)の増加による国際線運航便の増加に加え、新型コロナで停滞していた空港の設備更新需要も取り込む。空港の環境対策にも貢献する同社の足元の状況と今後の展望について、井田直人・経営企画部長に聞いた。
エージーピーは1965年に創業。国内主要8空港において、駐機中の航空機への動力供給事業を展開している。航空機は、空港での駐機中には機体に内蔵する航空機用補助動力装置「APU」を稼働し、必要な電力や冷暖房を補うことができるが、このAPUは多量の排気ガスと騒音が発生する。そこで駐機中に必要な電力と空調は同社の航空機用動力設備から供給することで、APUの使用時と比較して、CO2(二酸化炭素)排出量を約10分の1に削減し、騒音の低減、航空機用燃料の削減に貢献している。
設立当時は、空港において、CO2問題に加えて航空需要の増大により車両衝突事故などの事故が多発していた。こうした状況に対し、従来の地上作業車で行う動力供給から同社の航空機用動力設備に切り替えることで、ランプ場の混雑を緩和するとともに事故発生の大きな原因となっていた作業車を削減。空港全体における作業の合理化と安全性の確保、航空機稼働率の向上と定時運航の確保につながった。
――インバウンド(訪日外国人観光客)の復活、政府によるカーボンニュートラルの推進で事業環境が好転している。
「菅義偉政権によってカーボンニュートラルが進められたことにより、監督省庁の国土交通省がCO2低減に向けてGPU推進に動き始めた。インバウンドに関しても、政府は国策として進めている。インバウンド需要への取り組みを間接的に下支えしており、国策の追い風を受け業績を拡大している」
――今年4月には設立以来初のプロパー社長となる杉田武久氏が就任した。
「これまでJAL <9201> など大株主出身の幹部が社長に就任してきたが、生え抜きの杉田氏の社長就任で独立した意思決定ができる体制がようやく整うことになった。上場会社としてのガバナンス水準を備えた、公正で透明性の高い経営を念頭に置き、今後も国内の主要8空港において中立的な立場で公平なサービスを提供するほか、外資系航空企業への対応も進める」
――25年3月期第1四半期は売上高31億4100万円(前年同期比10.0%増)、営業利益は2億2400万円(同89.8%増)と大幅増益を達成した。
「インバウンド需要の影響による国際線の運航便数増加に伴い、動力供給事業が堅調に推移した。空港内設備の維持やメンテナンスなどのエンジニアリング事業における更新工事なども増加し、売上高と利益はコロナ禍前の水準まで回復した。メンテナンスや工事等はコロナ禍で停滞していたが、インバウンドの回復とともに需要が戻っている」
一方、通期の売上高予想は143億円(前期比10.1%増)、営業利益予想は8億1000万円(同24.7%減)と慎重だ。
「今期は企業成長に資する研究開発投資の計画があるほか、今後に向けた中途採用などの人材強化にも積極的に取り組んでいる。採用も進んでおり、来期以降の業績への貢献が期待される」
――空港の電力使用量を最適化する統合エネルギーマネジメントシステム(EMS)などの新たな取り組みも進んでいる。
「空港全体で使用するエネルギーをいかに最適化するかは業界の大きな課題となってきている。EMSは海外展開を狙うとともに、採用に向けて国内外の空港運営会社と話し合いを行っている」
――2025年には設立60周年を迎える。
「設立60周年を転機に、新たな気持ちを持って組織改革を行い、新たな体制でスタートする。独立した上場会社として、設備を利用する全ての顧客に対し、中立的な立場で、公平で安全なインフラサービスを提供する会社でありたいと考えている」
「空港以外の事業展開も推し進めており、これまでの技術や経験を生かし、新しい事業の創出に向けたチャレンジにも取り組んでいる」
提供:ウエルスアドバイザー社
ウエルスアドバイザー
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最終更新:10/23(水) 9:01