1999年度の新入社員は「形態安定シャツ型」→では2023年度のタイプは?

5/11 7:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 現在の若手社員たちは昔のように出世や給料アップを望むのではなく、ノー残業や休日確保、そしてプライベートに干渉されないことを望む。それにしたがって求める上司像についても、ここ10年でかなり変化しているという。※本稿は、新田龍『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を抜粋・編集したものです。

● 若手社員が求めるものは 「出世」や「給料アップ」ではない

 労働環境が変わる中、社員たちが上司に求める理想や常識も変わっています。

 では、どんな上司像を若手社員たちは求めているのでしょうか?

 直近10年だけでも、若手社員の就労意識は大きく変化しています。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング社が毎年発表する「新入社員意識調査アンケート結果」によると、時代の趨勢としてこのような特徴が垣間みえます。

 【以下、意識調査アンケート】

 ・会社が私生活に干渉することを拒む
・プライベートな時間を確保し、会社以外の居場所を大切にしたい
・したがって、会社の人と業務後に飲みに行くのは気が進まない
・会社という枠組みにとらわれず、自分自身の価値観に従って仕事をしたい
・新卒で入った会社で働き続けることは当たり前ではなく、転職も含め将来の多様な可能性を求めたい
・兼業・副業にも前向き
・協調性には自信がある
・一方で、創造力や積極性に欠けると自認している
・たとえミスをしても広い心で受け入れ、温かく成長を見守ってくれる「寛容型」の上司を求める

 どうでしょうか?

 かつての上司世代が考える「報酬」といえば「出世」と「給料アップ」であり、「逆にそれ以外に何があるのか?」という意見がほとんどだったでしょう。

 しかし、現在の若手社員の価値観は大きく異なります。

 彼らが会社組織に求めるのは「給料よりもノー残業&休日確保」です。また、この10年間で「プライベートに干渉されないこと」を重要視する人の割合も明らかに高まっています。

 すなわち、昨今の若手社員にとっては「ワーク・ライフ・バランスを確保すること」も「働く時間と場所を自由に選べること」も、「周囲に気兼ねなく定時に帰り、休みも取れる環境」も、そのすべてが「報酬」になるのです。

 したがって、それらを含めた多様な価値観を許容できる上司、および組織こそが、若手にとって魅力であり、選社基準だということを上司世代は強く認識しておくべきです。

● 部下が上司に求めるのは 情熱よりも寛容さ

 さらに押さえておきたい点として、あらゆる調査において、「求める上司像」が変化しつつあることが挙げられます。

 一般社団法人日本能率協会「2022年度新入社員意識調査」によると、同年度の新入社員にとって理想の上司・先輩は、「仕事について丁寧に指導する人(71.7%)」が1位。同項目は2012年度以降の調査で過去最高を記録しています。

 一方で、2012年度当時数値の高かった「場合によっては叱ってくれる上司・先輩」や「仕事の結果に対する情熱を持っている上司・先輩」は大幅にダウンしています。

 これらの結果を見ると、若者世代が従来のような「情熱的な上司」よりも、「寛容な上司」を求めていることがわかります。

 全体的な傾向として高まっているのが「丁寧な指導」「成長や力量に対する定期的なフィードバック」へのニーズです。つまり、若手社員が上司や先輩に対して求めているのは、「手厚い個別対応」なのです。

 「指示が曖昧なまま作業を進めること」に対しては8割の若手社員が抵抗を感じており、「質問のしやすい風土や対応」も上位に挙がっています。

 日本企業の慣習としておこなわれがちだった「ちゃんとして」「きっちりやれ」「しっかり仕上げて」といった曖昧な指示をする上司は、嫌われるのです。

 同時期の別会社の調査においても、同様の結果が出ています。

 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2022」によると、「上司に期待すること」として「相手の意見や考え方に耳を傾けること」「職場の人間関係に気を配ること」が過去最高の選択率となっています。

 価値観の多様化が謳われる社会において、一方的に伝えるだけではなく、部下の意見もきちんと聞く……といった、個性や違いに受容的で、傾聴型のコミュニケーションを望む傾向を生み出していると推測できます。

● 先輩世代は「新入社員」の イメージをリセットせよ

 新入社員に対する接し方やイメージは、上の年代であればあるほどリセットする必要があります。なぜなら、ここまで見てきたように、世代間における「仕事」や「上司」「会社」に対するイメージは大きく変わってきているからです。

 余談ですが、かつて公益財団法人日本生産性本部が毎年「今年の新入社員の特徴とタイプ」を発表していました。私が新入社員だった1999年度当時の特徴とタイプは、「形態安定シャツ型」でした。

 その心は「防縮性、耐摩耗性の生地(新人)多く、ソフト仕上げで、丸洗い(厳しい研修・指導)OK。但し型崩れ防止アイロン(注意・指示)必要」とのこと。「厳しい指導OK」というコメントは、今となっては隔世の感があります。

 なお、同本部による「新入社員の特徴とタイプ」発表は2017年度で終了してしまいましたが、現在は、産労総合研究所が引き継いで実施しており、2023年度の新入社員のタイプは「可能性は∞(無限大)AIチャットボットタイプ」だそうです。

 「知らないことがあればその場でごく自然に検索を始めるデジタルネイティブ世代である彼らは、さまざまなツールを扱い答えを導き出すことにかけては、すでに高いスキルを持っている」

 「先輩社員は、彼らの未熟な面や不安をこれまで以上に汲み取りながらコミュニケーションを取ってほしい。AIチャットボットが適切なデータを取得することで進化していくように、彼らは適切なアドバイスを受けることで、想定を超える成果を発揮する可能性に満ちている」

 とのことで、ここでもまたコミュニケーションの配慮が促されている点は非常に印象深いところです。

 さて、これらの調査結果から導き出せる若手世代とのコミュニケーションの要点は、「多様な価値観への理解」をベースにした「寛容なコミュニケーション」であり、彼らのちょっとしたプラスの変化や長所に対する「承認の姿勢」といえます。

 それによって職場の心理的安全性を高め、彼らの一歩踏み出すアクションを促すことができれば、上司や先輩に対する信頼感は増していくはずです。

 誰もが部下時代に経験したかもしれませんが、そもそも部下と上司ではアクセスできる社内の情報に大きな格差が存在しますし、部下の数が増えれば増えるほど、1人あたりの部下に割ける時間も配慮もコミュニケーション量も少なくなりがちです。

 部下の知見や視座が、上司や先輩世代からすれば「レベルが低い」と感じることもあるでしょう。仮に部下が様々な疑問や不満を抱いていたとしても、組織的なヒエラルキーや発言力の差により、すべてを上司に伝えることが叶わないケースもあります。

 それによって、部下時代に「なぜ上司はわかってくれないんだ!?」と不本意な思いを抱き、「自分はもっと部下に理解のある上司になるんだ!」と心に決めた人も少なくないはず。今こそ、その考えを行動に移すべきです。

 「そうはいっても、日々多忙な中で、いちいち部下をケアして、配慮したコミュニケーションなど取っていられない」と思われるかもしれませんが、だからこそちょっとした配慮が大きな差を生みます。

 それらの配慮によって、部下や若手があなたを信頼すれば、自分自身の仕事を進めやすくなります。それが成功体験となり、横展開していくと、あなたの組織も良い方向に大きく変わっていく契機にもなります。

 ぜひ、あなたから、その一歩を踏み出して頂ければ幸いです。

ダイヤモンド・オンライン

関連ニュース

最終更新:5/11(土) 7:02

ダイヤモンド・オンライン

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング