マンション「同価格なら中古より新築」の落とし穴 リノベーション済み中古マンション「大事な」見極め方

5/21 8:02 配信

東洋経済オンライン

都心を中心にマンションの価格が高騰しています。価値観の変化やテクノロジーの進化など時代が大きく変革している今、マンションの購入や売却、また資産性向上には確かな判断力がより一層、求められるようになってきました。そこで本記事では、さくら事務所会長で不動産コンサルタントの長嶋修氏による著書『マンションバブル41の落とし穴』から一部を抜粋、再編集し、価格が同じなら中古より新築を選ぶほうがお得なのか、またリノベーション済みの中古物件で見るべきポイントはどこかについてご紹介します。

■不動産業界でも「ステルス値上げ」

 昨今のマンション価格の上昇には、一部マンションへの需要の集中のほか、人件費や資材価格の高騰も影響しています。

 工事現場の責任者(現場代理人)や職人は常に不足しており、結果として人件費が上昇。

 また、木材や鋼材などの建築資材も世界的に値上がりし続けており、不動産デベロッパーは膨張したコストを吸収するために、マンション価格を高くせざるを得ない状況です。

 とはいえ、マンション価格を引き上げすぎると、一般のファミリー層には手が届かなくなります。

 そのため、新築マンションでも価格を一定レベルで据え置いている物件は多いのですが、こうしたマンションが「お買い得」というわけではありません。

 価格の抑えられた新築マンションは、少し前に建てられた同価格帯のマンションと比較すると専有面積が狭かったり、内装・設備のグレードがダウンしていたりすることがあります。

 インフレでさまざまな食品が値上がりするなか、価格を据え置いて内容量を減らす「ステルス値上げ」が話題になりましたが、不動産業界でもステルス値上げが起こっているのです。たとえ同じ値段でも、面積が狭くなっているなら実質値上げです。

 不動産デベロッパーからすると、150㎡強の広い住戸を一つ作るよりも、70㎡の住戸を2つ、あるいは50㎡の住戸を3つ作ったほうが売りやすく、実入りも多くなります。そのため、最近の新築マンションでは一戸あたりの専有面積を減らし、分譲戸数を増やすパターンが目立ちます。

 今は「空間」より「時間」を重視する人が多いため、狭くても、内装や設備のグレードが下がっても、好立地であれば売れています。購買層の大半は世帯人数の少ない核家族なので、それほど部屋が広い必要はなく、部屋数も少なくていいという考え方が主流です。

 求められる間取りも、昔と今とでは変わっています。かつては分譲マンションというと、70㎡3LDKのような間取りが一般的でした。

 今は、なるべくリビングを広くして、その代わりに寝室や子ども部屋は狭くてOK、ただし収納は十分にほしいというニーズが根強く、60㎡2LDKのような間取りがファミリー層に人気です。

 とはいえ、狭い物件が積極的に好まれているわけではなく、多くの人が資金の問題で、やむを得ず狭い物件を選択せざるを得ないのが実情のようです。その証拠に、相場よりややお得な価格帯で70~80㎡ほどの物件が出ると、驚くほど申し込みが殺到します。

 東京オリンピック選手村跡地に建てられた大規模マンションの「晴海フラッグ」は、80㎡超の広めの住戸が多かったのですが、価格が割安だったために引き合いが強く、かなり高倍率の抽選になりました。

 晴海フラッグは東京オリンピック選手村跡地に建ったということで話題性は抜群。ブランド力の高い中央区アドレスに加えて街全体の利便性などの魅力があるものの、最寄り駅から徒歩20分前後です。

 多少駅から遠くてもそれを上回る魅力があれば、人気が跳ね上がることを実証したレアなケースと言えるでしょう。

■「早く買わなければ」は禁物

 大手デベロッパーが手掛ける大規模タワマンなどでは、期を分けて販売されることがよくあります。

 たとえば3期に分けて販売される場合、1期に申し込みが殺到すれば、2期には販売価格が引き上げられます。人気の継続が確認できれば、3期はさらに値上げされることも。不動産デベロッパーは情勢を見ながら供給をコントロールしているのです。

 そのため、デベロッパー側は「買うなら早くしたほうがいい」「次期の販売では価格が上がるかもしれない」などと言って、買い手に早く決断させようとすることがあります。

 あらゆる観点から検討して、本当に良い物件であれば思い切って買ったほうがいいかもしれませんが、「早く買わなければ」と焦り、予算をはるかにオーバーして購入を決断するのはNGです。

 すぐに完売する物件ばかりではなく、デベロッパーが完成在庫をたくさん抱えているケースもありますが、人気エリアの物件は売り手市場なので、デベロッパーもあまり売り急ぎません。値引きしなくても、いずれ売れる公算が高いからです。

 3月の決算期前などは、不動産デベロッパーも売上を伸ばしたいので、割引価格で物件を買えることがありますが、売り手市場で超割安物件をつかむのは難しいでしょう。

■中古物件「リノベ済みで安心」の落とし穴

 新築の大規模マンションが好まれる一方で、中古マンションも売れています。

 人気エリアの駅近物件は、新築マンション価格の高騰に引っ張られて価格が上昇。築浅の物件が人気ですが、築古の味わい深いマンションにも一定のニーズがあり、ヴィンテージマンションなどと呼ばれて注目を集めています。

 中古マンションを買えば、自分で好きなようにリフォーム・リノベーションすることができますが、あらかじめ不動産会社が中古の物件を購入し、リフォーム・リノベーションを施したうえで再販することもよくあります。

 大手デベロッパーの新築マンションはたしかに住みやすいですが、内装にはあまり個性がありません。

 これに対し、リノベ済み中古マンションは漆喰壁にモルタル床だったり、あえて配管がむき出しになっていたりと、一般的な分譲マンションとは趣の異なるおしゃれな内装の物件がたくさんあります。

 リノベ済み物件を購入する場合、自分で中古物件を購入してリフォーム・リノベーションをするよりも、内装工事費用やデザイン料などが上乗せされているので価格が上がりますが、新築マンションを買うよりはずっと安上がりです。

 同じエリアで、同じサイズ感の新築マンションと比較すると、おおむね2~3割は安く買えるでしょう。

 リノベーションで中古物件を蘇らせることは、空き住戸が急増する団地の再生などにもつながります。

 無印良品がUR都市機構と組んで、団地リノベーションプロジェクトを行っていますが、これも社会的に意義のある活動と言えるでしょう。

 ただ、リノベ済み物件のおしゃれさ、手頃さに惹かれて即決で購入するのは危険です。特に築古物件は構造や配管設備、断熱性能など目に見えない部分がどうなっているかを入念に確認する必要があります。

 適切なタイミングで維持修繕がされていなければ、買った直後に想定外のリフォームが発生する事態になりかねません。旧耐震基準の場合にはマンション全体の耐震補強工事の履歴も確認すべきでしょう。

 中古物件を買って、スケルトンにしてから自分でリノベーションする場合は、構造や設備の状態をあらかた確認できますが、すでにリノベーション済みだと新品の壁や床を剥がすわけにもいかず、チェックの難易度が上がります。

 住宅診断ができるホームインスペクターに調査してもらってから購入を決めるのが無難です。

■リフォームやリノベをするときの注意点

 自分でリフォーム・リノベーションを希望する際は、どこに水回りを配置して、どこに寝室を持ってくるかなど、考えているだけで夢が膨らむでしょう。

 ただ、物件によっては水回りの位置を動かせないこともよくありますし、動かせても莫大なコストがかかる可能性が高くなります。配管を大規模に変更することになるので、リノベーション会社が施工に難色を示すケースもあるでしょう。

 そもそも管理規約で水回りの移動を禁止しているマンションもあるので、規約のチェックも必要。ほかにも、換気ダクトが移動できるか、窓の変更ができるかなど、リノベーションを考えるうえで注意すべきポイントは数多くあります。

 大手デベロッパーの分譲マンションは没個性的な間取りや内装ですが、それは多くの人に受け入れられやすいからです。

 リノベーションによって、ドアで区切られた個室のない巨大な1LDKの間取りにしたり、収納をまったく作らなかったり、生活動線に配慮しなかったりすると、いずれ売却となったとき、購入を検討してくれる層が狭まります。

 逆に、そうした個性的な作りを気に入ってくれる人もいるでしょうが、売却のチャンスは少なくなります。

 そのため、たとえば個室を作らずに思いっきりリビングを広くしたいなら、後で簡単に間仕切り壁を付けられるようにするなど、一定の工夫は必要です。

 今は広いリビング、大きな収納、可変性の高い間取りが、多くの人に好まれるポイントなので、そのあたりは押さえながらリノベーションプランを決めていくのがおすすめです。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:5/21(火) 8:02

東洋経済オンライン

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング