軽キャンパー超えなるか?トヨタ「タウンエース」ベースのレクビィ新コット/ホビクル タウンランダーに注目

4/30 9:41 配信

東洋経済オンライン

 近年、トヨタ自動車(以下、トヨタ)の「タウンエース バン」など、商用ライトバンをベースとするキャンピングカーも人気だ。コンパクトな車体は、狭い道などでも女性や高齢者でも運転がしやすく、1~2名のキャンプなどに最適。また、軽自動車をベースとするキャンピングカーと比べると、室内はより広く、走行性能にも余裕がある。

■老舗が新型キャンパーを発表

 そんな商用ライトバンの新型キャンパー「コット」「ホビクル タウンランダー」を老舗キャンピングメーカーのレクビィ(愛知県瀬戸市)が発表。「ジャパンキャンピングカーショー2024(2024年2月2~5日、千葉県・幕張メッセ)」で初披露した。

 創業40年以上の歴史を誇る同社が、はじめて手がけたというタウンエース バンをベースにしたキャンピングカーがこれら2機種。長年培った技術力を活かし、各部にはさまざまな快適装備が施されている。だが、一方で、タウンエース バンは、OEM生産を手がけるダイハツ工業(以下、ダイハツ)の認証不正問題により、最近まで出荷停止。新車の供給は遅れるだろうし、イメージなどもよろしくないだろう。

 ここでは、そんなレクビィの新型2モデルの主な特徴を紹介するとともに、あえてタウンエース バンのキャンピングカーを開発した背景、今後予想できる展開などについて紹介する。

【写真】トヨタ「タウンエース」をベースにした新型キャンピングカーの細部(50枚以上)

 レクビィが発表したコットとホビクル タウンランダーの新型2モデルは、ハイエースのキャンピングカーなどで有名な同社が、それらのテイストや技術をコンパクトな車体にまとめたことが特徴だ。

■女性ユーザーをターゲットにした「コット」

 まず、コットは、主に女性ユーザーをターゲットとして開発したモデル。外観は、白と水色のツートンカラー、それにオレンジの差し色を入れて清潔感やかわいらしさを演出している。なお、ボディサイズは、ノーマル車と同寸の全長4065mm×全幅1665mm×全高1930mmで、展示車のベースはタウンエース バンのGLグレード(4WD)。8ナンバーのキャンピングカー登録車で、乗車定員5名/就寝定員2名となっている。

 外観とマッチングさせたカラーを採用した室内も見どころのひとつ。オリジナルの2列目シートには、背もたれとヘッドレストを一体化し、ゆったりと座ることができるハイバックシートを採用する。大人3名が着座できる横長のシートは、背もたれを前後に移動できる可動式だ。走行時は前向き仕様、停車時に背もたれを前へ移動させれば後向き仕様にもなる。この状態で着脱式テーブルをセットすれば、ダイネット(リビング)に早変わり。天気のいい日などにリアゲートを開ければ、ゆったりと大自然を眺めることもできる。

 さらに2列目シートの後方左側にも、停車時に着座できるリアシートを配置。その後方、室内最後尾の左サイドには冷蔵庫などを収納し、コンロ台にもなるキャビネットも装備する。同じく、室内最後尾の右サイドには、丸型シンクを備えるキッチン。それらの間には、脱着式カウンターもセットでき、料理などをする際に便利だ。

 就寝時には、2列目シートの背もたれを倒し、付属の分割式ベッドマットを敷きつめれば、フラットなベッドにもなる。ベッドサイズは1800mm×1200mmで、大人2名が横になれるスペースを確保する。なお、運転席と助手席の背もたれを前に倒しセットする前席背面マット(オプション)も備えれば、より快適な空間を作り出すこともできる。

 ほかにも、このモデルは、エンジン停車中に家電製品などの電源となる100Ahのリチウムイオンバッテリー、室内を暖めるFFヒーターなど、本格的キャンピングカー並みの装備が満載だ。また、吸音/遮音/制振材、熱反射シート、断熱シートを3段重ねにした独自の薄型シートを壁面内側などに採用。室内へ外からの熱や音、振動などが伝わりにくく、季節を問わない快適な室内空間に貢献する。

 価格(税込み)は、標準装備車の場合で、ガソリン車2WDが470万8000円、ガソリン車4WDが495万1100円。また、専用ホイールや外装のオリジナル塗装とデカール、200Wのソーラーパネルなどのオプションを装備した展示車の場合では627万660円となっている。

■男性をターゲットにした「ホビクル タウンランダー」

 一方のホビクル タウンランダー。このモデルは、キャンピングカーのエントリーモデルとして開発し、シンプルで拡張性の高い装備などが特徴のモデルだ。主なターゲットは男性ユーザーで、外装にはグレーとホワイトのツートンカラー、それにブラックの差し色をマッチングしていることがポイント。ボディサイズはコットと同じ全長4065mm×全幅1665mm×全高1930mmで、こちらも外観フォルムはほぼノーマルのままだ。なお、展示車のベースはタウンエース バンのGLグレード(4WD)で、8ナンバーのキャンピングカー登録車、乗車定員5名/就寝定員2名というスペックも、コットと同様だ。

 このモデルの大きな特徴は、上・中・下段にセットできるベッドだろう。室内後方に独自の「ベッドレール・エクステンドスライダー」を採用することで、ベッドマットの高さ調整を可能とする。また、ベッドを展開しないときは、分割式ベッドを活用し3段式の棚にすることも可能。荷物の大きさなどに応じたアレンジもできる。なお、ベッドマットには、高い剛性を持ちつつ軽さも両立する素材を採用。ベッドには帆布風の難燃生地を使うことで、高い耐久性なども実現する。

 2列目シートは、コットと同じハイバックシートを採用。背もたれを倒し、リアのベッドマットを敷けばフラットな就寝スペースとなるのも同様だ。また、室内後方の壁面には、走行中もバッグやポーチなどの荷物をしっかり固定できる「サイドモールシステム」を採用。

 キッチンは、コットと異なり、室内最後尾の左側にコンパクトなタイプを装備する。ただし、吸音/遮音/制振材、熱反射シート、断熱シートを3段重ねにした独自の薄型シートを壁面内側などに採用する点は、コットと同じ。可能な限り室内を快適にする見えない工夫は、長年キャンピングカーを製造してきた同社のこだわりでもある。

 電装系については、ポータブル電源の使用が前提となる。そのため、DC12Vのアクセサリーソケットの装備はあるものの、サブバッテリーは基本的に搭載していない。あくまで、シンプルな車中泊仕様車というのがこのモデルのコンセプトなため、装備については必要最低限に留めているのだ。そのぶん、価格(税込み)はコットよりも安く、標準装備車の場合で、ガソリン車2WDが409万2000円、ガソリン車4WDが437万4700円。停車時に日よけとなるサイドオーニングとルーフキャリア、FFシーターなどのオプションを装備した展示車の場合で594万5500円となっている。

■タウンエースをベースに開発した背景

 レクビィの担当者によれば、これらモデルは、「多くのユーザーからの要望に応えた」ものだという。そうしたユーザーたちは、「(ハイエース・ベースなどの)大型で本格的なキャンピングカーまではいらないが、軽自動車ベースでは、室内が狭いなどで物足りない」のだという。そこで、商用ライトバンのタウンエース バンに着目。外装をほぼ変えないタイプとすることで、通勤や買い物などの普段使いもできて、車中泊なども使いやすい装備を持つモデルを目指し、2023年の春頃から開発に着手した。

 そして、今回、晴れて2モデルをショーで初披露。ところが、その直前に問題が発生した。先に述べたように、ベース車となるタウンエース バンが、OEM生産を担当するダイハツの認証不正問題により、2023年12月に出荷停止となったのだ。幸いにして、同じタウンエースのトラックタイプのように型式認定取り消しにはならなかったが、今回の展示会の時点では受注を受けても新車ではベース車両の供給は不確か。安全性の問題だけに、中古車ベースでも製作は難しいだろう。

 ちなみに、2024年1月19日に、国土交通省では、タウンエース バンを含む5車種について、道路運送車両法の基準に適合していることが確認されたとして、出荷停止の指示を解除。だが、ダイハツの公式サイトからの情報によれば、2024年4月19日時点でも、生産については未発表(生産はインドネシアの現地法人アストラ・ダイハツ・モーターが担当)。また、出荷についても、「車種により出荷再開の時期が異なる」という発表のみで、具体的な時期は未発表だ。

■レクビィの受注や販売はどうなる? 

 レクビィの新型2モデルは、同社初の試みとなるタウンエース バンがベースのキャンピングカー。しかも先述のように、ユーザーの要望に応えて開発したものだ。それだけ、同社としてもこれらモデルには、大きな期待を抱いていただろう。それが、まさかの認証不正問題や出荷停止。もちろん、現在は安全性について確認済みのため、今後、いずれかのタイミングで、ベース車も通常の生産や受注が行われるだろう。

 だが、レクビィにとって、少なくとも、これらモデルの受注や販売のスタートが出遅れたことは確か。また、要望を寄せ、登場を待ち望んでいるユーザーたちにとっても、納期などが遅れることが予想される。つまり、今回の問題は、ダイハツやトヨタだけでなく、より多様な人たちの迷惑となっているのだ。

 乗用車や商用車だけでなく、キャンピングカーにとっても、ベースとなる車両が、安全面をはじめとする基本性能をしっかり確保し、安定して販売されるものでないと作れない。その意味でも、ダイハツやトヨタには、今後、きちんとしたモノ作りや、安定的な販売体制の構築などを望みたい。

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最終更新:4/30(火) 10:32

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