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「目の日焼け」濃いサングラスで安心する人の盲点 最新研究で判明、目の健康を損ねるのは「紫外線」だけじゃない

5/26 7:02 配信

東洋経済オンライン

目は皮膚と同じように紫外線の影響を受けやすく、浴び続けると老眼や白内障など病気リスクも高まる。それだけに、しっかり対策をとって目の病気を防ぎたい。
「特定非営利活動法人 紫外線から眼を守るEyes Arc」理事長で、紫外線が引き起こすさまざまな目の病気に詳しい金沢医科大学眼科学講座教授の佐々木洋さんに、紫外線から目を守るための対策について聞いてみた。

■日本人の目は紫外線を浴びやすい? 

 紫外線の量は5月ぐらいから強まることがわかっている。夏になる前から始めたのほうがいいのが、目の紫外線対策だ。

 紫外線は私たちの皮膚や目に影響を与える。特に目への影響は人種によっても異なるという。その差を生み出すのは体質などではなく、「顔の彫りの深さ」だ。

 佐々木さんによれば、顔の彫りが浅く、目の周りが平べったい日本人をはじめとする東洋人は、彫りが深く、目の周りがくぼんでいて影になっている欧米人に比べ、目に紫外線を浴びやすい傾向があるという。

 紫外線の強さは1日のなかでみると、午前10時から午後2時にかけて最も強くなるので、当然ながら注意が必要だが、目の場合は、それ以外の時間も気を付けたい。

 というのも、朝日や夕日など、太陽が低い角度にあると、紫外線が目に直接、入りやすいからだ。つまり、目は朝から夕方までの長時間、紫外線の影響を受けやすいといえる。

 また、間接的に浴びる反射光による紫外線の影響も見逃せない。

 水面、白い砂浜などでは太陽光を反射するため、アスファルト面に比べ目は多くの紫外線を浴びやすい。とくにこれからの時期でいうと、川岸でのBBQやキャンプ、ボートや釣り、海水浴など、水辺や砂浜でのレジャーでは、特に意識して紫外線対策を行いたいところだ。

 ちなみに、砂浜の場合、日陰でも日なたの約75%、日傘やビーチパラソルをさしても約80%程度の紫外線量を目は浴びることがわかっている。

 都市部でも建物の窓ガラスやビルの外壁、道路からの紫外線の反射も無視できない。特に晴れた日には、これらの反射光にも注意が必要だ。

■眼鏡は「UV400」表示のレンズを

 では、どのような紫外線対策が効果的なのだろうか。

 佐々木さんは、「UVカット機能付きサングラスか眼鏡、あるいはUVカット機能付きコンタクトレンズ」、「帽子」いずれかの2点セットを推奨する。

 まずUVカットについて。

 最近はほとんどの眼鏡にUVカット機能が備わっている。できれば「UV400」と表示されている紫外線カット率99%のレンズを使用したいところだ(コンタクトについては後述する)。

 紫外線カットという意味では、眼鏡の形状もチェックポイントの1つ。

 せっかくレンズが紫外線を高率にカットしても、上方や耳側の隙間から紫外線が入り込んでしまう。

 確実な紫外線カット効果を狙うなら、眼鏡のレンズが大きく、テンプル(つるの部分)の太さが太いものや、ゴーグルタイプのように、フレームが広範囲に目全体をカバーするデザインを選ぶとよい。

■サングラスの色「濃いめ」の問題

 サングラスに関しては、UVカットを目的とするなら、色つきにこだわる必要はない。というのも、レンズの色の濃さが紫外線カット効果に直結するわけではないからだ。

 むしろ、色の濃いレンズでは瞳孔が広がり、より多くの光を取り込もうとするため、UVカット機能が不十分であれば、かえって多くの紫外線が目に入るリスクがある。

 「サングラスを選ぶ際には、外側から目の様子が見える程度の色の濃さにして、紫外線カットの性能が高いものを選ぶことが望ましいです」(佐々木さん)

 佐々木医師は確実な目の紫外線対策として、UVカット機能付きのソフトコンタクトレンズをすすめる。今使われているソフトコンタクトレンズにはUVカット機能がついているものとついていないものがある。

 「ソフトコンタクトレンズの幅は黒目よりもやや大きくなっているため、黒目を紫外線から保護することができます。コンタクトを装着した上に、UVカット機能付きサングラスをかければ白目部分も保護でき、万全です」(佐々木さん)

 帽子も紫外線カットには有効だ。

 使い方によっては、紫外線を大幅にカットできるという。ポイントは、できるだけ広いつば付きの帽子を着用すること、だ。

 幅70センチ以上の大きめのつばが全周についた、麦わら帽子など英語でいうハット(hat)タイプの帽子が特にいいという。つばの広さが大きいものなら、目に入る紫外線の約70%をカットできる。

 紫外線の強い夏場などでは、2つ以上のアイテム使用が効果的だ。

 つばの広い帽子を深めにかぶり、UVカット機能付き眼鏡やサングラス、コンタクトレンズなどと併用する。そうすると、紫外線カット効果は90%以上となり、より確実に紫外線を避けることできる。

 晴れている日だけでなく、曇りの日も紫外線は降り注いでいるため、年間を通して、日中の外出時はつねにいずれかの予防策を実施したい。

 なお、皮膚に塗る日焼け止めのようなものは、目薬では存在しない。ヒアルロン酸などの成分が入った目薬も日焼けによるダメージを防ぐことができない。だからこそ、先に挙げた対策が重要といえる。

■高温多湿も目の病気のきっかけに

 最近になって、紫外線だけでなく別の環境因子も、目にダメージを与えることがわかってきた。その環境因子とは、高温多湿だ。

 なぜ高温多湿が問題なのか。

 それは、気温が上昇すると、体内の水分が蒸発しやすくなり、体温調節が困難になる。特に気温だけでなく、湿度も高い環境下では、汗が蒸発しづらく、熱が体内にこもりやすくなるため体温が上昇する。それに伴い、水晶体の温度も自然と上がるというのだ。

 佐々木さんの研究によれば、水晶体の温度が35℃から37.5℃に上昇すると、水晶体のタンパク質の変性が進んで白くにごり、白内障が生じやすくなる。つまり、紫外線の影響のみならず、熱中症リスクが高い高温環境下でも白内障リスクは高まる、というわけだ。

■高温多湿から目を守る方法

 では、高温多湿のときには目の健康のためにどんな対策をとればいいか。

 夏場の高温多湿の日には屋内で過ごす時間をできるだけ増やし、十分な水分補給とともに、冷暖房設備を利用して室温や湿度を適切に管理することが熱中症のみならず白内障の予防にもなる。

 熱中症になった場合の処置も同様だ。

 体温を下げるために可能な限り涼しい環境で脇や首などを冷やすとともに、冷たいタオルなどで目の周りも冷やし、水晶体の温度もできるだけ上がらないようにすることが大切だという。

 「目に対する紫外線対策や熱中症予防を日常的に行うことで、目の病気のリスクは軽減できます。さらに、早期に目の病気の兆候を発見し、適切な治療を受けるためにも、定期的に眼科検診も受けましょう」(佐々木さん)

 紫外線によるリスクから目の健康を守るために、今日からでも適切な対策を心掛けたい。

 (取材・文/石川美香子)

金沢医科大学眼科学講座主任教授
佐々木 洋医師

1987年金沢大学医学部卒業後、自治医科大学眼科入局。アメリカ・オークランド大学眼研究所研究員等を経て、2005年より金沢医科大学眼科学講座主任教授。「特定非営利活動法人 紫外線から眼を守るEyes Arc」理事長も務める。国内外で紫外線関連眼疾患の疫学調査を実施している。

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最終更新:5/26(日) 7:02

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