大日本印刷にマネックス系ファンドが株主提案、経営学者・楠木建氏の社外取締役選任で経営改善を狙う

4/18 15:32 配信

東洋経済オンライン

 印刷大手の大日本印刷(DNP)が、6月に予定する定時株主総会に向けて社外取締役選任の株主提案を受けている。提案したのは「マネックス・アクティビスト・マザーファンド」に投資助言を行うマネックスグループ傘下のカタリスト投資顧問。同社が提案内容を4月18日に明らかにした。

■正式受理なら定時株主総会で賛否

 プレスリリースなどによると、提案内容は一橋ビジネススクールの教授、楠木建氏を社外取締役に選任することだ。今後DNP側が正式に受理すれば、定時株主総会ですべての株主に対して賛否が問われることとなる。

 株主提案を出したカタリスト投資顧問は、ネット証券大手のマネックス証券を創業した松本大氏が中心となって2019年に立ち上げた。以来、経営者とのエンゲージメントを通じた経営改善をうたっている。

 2021年にはベンチャーキャピタル大手のジャフコグループに働きかけ、同社が保有していた野村総合研究所株の売却につなげた。この時にはジャフコの社長が「今後も建設的な対話を期待しています」という異例のコメントを発表するなど、松本氏の個人的なつながりも生かした水面下のやりとりが得意技だ。

 その後も複数の案件でTOB(株式公開買い付け)価格に対するコメントなどを発表してきたが、株主提案や法的措置など具体的なアクションは見送ってきた。批判合戦もいとわない香港のオアシス・マネジメントや旧村上系ファンドとは異なり、穏健派のアクティビストファンドとみられている。

■DNPは3代にわたる世襲企業

 だが、直近の動きは様相が異なる。

 3月には衣料品大手のしまむらに株主還元方針の変更を提案した。DNPについては「印刷やパッケージを中心とした成熟産業においては収益性が低く、構造改革が必要な状況」(リリース)と指摘。提案内容も資本効率を高めるための増配や自己株買いではなく、社外取締役の選任まで踏み込んだ。

 一般的にモノ言う株主が社外取締役の選任を要求する背景には、現経営陣に対する強い不信感がある。東芝やオリンパスが典型例だが、ファンド側が経営体質改善のために経営陣を監視する目的で自らの腹心を送り込むケースが多い。

 今回提案されている楠木氏とマネックスの間には「一切の利害関係はない」(リリース)という。だが、楠木氏はマネックスが開いたフォーラムで基調講演を行うなど、一定の意思疎通があるのは間違いない。

 そもそも、DNPを巡っては、以前からガバナンスに関する問題点が指摘されてきた。2018年に就任した現社長の北島義斉氏は、前社長で今年2月に亡くなるまで会長だった北島義俊氏の息子。その義俊氏も父の跡を継いで社長に就いた。つまり、DNPでは3代にわたり、父親の跡を息子が継ぐ”世襲”が続いている。

 今後はDNPの取締役会が株主提案に賛同するかどうか、現経営陣の判断を踏まえて株主がどう判断するかが焦点となる。ファンド側の勝算はどの程度あるのだろうか。

 マネックス・アクティビスト・マザーファンドの持ち分はそう大きくない。直近の開示によれば、保有している議決権は0.3%程度と推定され、単体での賛否への影響力は乏しい。

■カギを握る外国株主の賛否

 ただ、DNPの株主構成を見ると、モノ言う株主として有名なアメリカのエリオット・マネジメントが4%前後の議決権を保有しているとみられるほか、外国株主の比率が約27.8%(株式数ベース)と高い。外国株主は米ISSなど議決権行使助言会社の影響を受けやすく、ファンド側につきやすい。

 上位10位の株主には、第一生命保険やみずほ銀行など金融機関が名を連ねる。こうした大株主などからの賛成を取り付けることができれば、経営陣が反対しても勝算がぐっと高くなる。

 株主の3分の2以上の賛成が必要となる定款変更と比べて、過半数で可決される取締役の選任議案はハードルが低い。しかも、提案を受ける側の企業にとっては提案を拒絶する理由をつけるのが難しく、比較的ファンド側が勝ちやすいといわれている。

 一連の提案に関し、東洋経済はDNP側にコメントを求めているが現時点で回答は得られていない。

 創業明治9年(1876年)の老舗企業は株主からの提案にどう対応するのか。今後の展開が海外投資家も含めた資本市場からの関心を集めそうだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:4/18(木) 15:32

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