伸びる子に共通する「間違い」に対する思考のクセ なぜ「できなかった問題」が「宝問題」になるのか

3/21 5:32 配信

東洋経済オンライン

【質問】
小3と中1の子どもがいます。この1年間、家で勉強しているときに癇癪を起こすので、大変でした。具体的には、わからない問題に遭遇したときや答え合わせをして間違いが多いときにそれが起こります。4月からまた同じような1年が始まると思うと気が重いです。
仮名:小峰さん

■間違えること、失敗することを極度に恐れている

 筆者は20歳で起業し、35年間教育に携わってきましたが、子どもたちを指導している中であることに気づきました。それは、「子どもたちは、間違えること、失敗することを極度に恐れている」ということでした。

 実際、当てて答えを言ってもらうときに、かなりの確率で子どもたちは「わかりません」と言います。この背景には、過去に答えて間違ったことで恥ずかしい目に遭った経験や、間違えた子の姿を見て自分はそうなりたくないというイメージから起こっているのではないかと推測しています。

 そのような子は家庭で宿題や学習をしているときにわからなかったり答え合わせをして間違いが多いときに暴言を吐いたり、癇癪を起こしたりします。それが看過できるレベルであればスルーすることもできるでしょうが、言動が激しくなると、その姿を見た親は我慢の度を越して、イライラが怒りに変わることもあるでしょう。

 実はこの問題は、あることが変わらない限り、同じようなことが今後も繰り返されていきます。

 それは、「間違いや失敗に対する認識のアップデート」です。

 多くの子どもたちが誤解していることの一つに、「間違いや失敗が悪いこと」という認識があります。もしかしたら、その考え方を保持したまま大人になり、「間違いや失敗は悪いこと」という認識のままの人もいるかもしれません。

 確かに間違うことや失敗することは気持ちの良いものではありません。できれば避けたいものです。しかし現実的には、まったく間違えない勉強、失敗のない人生はないと言っても過言ではありません。

 筆者がこれまで4500人以上の子どもたちを指導してきた中で、伸びる子とそうではない子の決定的な違いの一つに、「失敗や間違いに対する認識の相違」があることに気づきました。

 端的に言えば、伸びる子は「間違えた問題は成長につながる」と捉えており、そうでない子は「間違えた問題はやりたくない問題、嫌な問題」と捉えているということです。

 そもそも、子どもたちはなぜ間違えることを嫌悪するようになったのでしょうか。

 筆者の経験では、テストが始まる小1からすでにそれが始まっていると考えています。テストでは◯と×がつけられます。そのとき、親も先生も、◯が多いとニコニコし、×が多いと眉間にシワを寄せたり、機嫌が悪くなったりします。それをたびたび繰り返すうちに、子どもは◯は良いこと、×は悪いことと認識するのではないかと思っています。点数が高い子は良い子、点数が低い子は悪い子という誤った認識の刷り込みがされていくのもこの時期からです。

■間違いに対する認識の書き換え作業をしていく

 このようにして◯が良いこと、×は悪いことであると思ってきた子どもたちの認識を変えることはそう簡単ではありませんが、これまで筆者が指導してきた方法が参考になるかもしれませんので、紹介します。

 まず、子どもの年齢によって対応が大きく2つに分かれます。個人差があるため明確に年齢で分けることは厳密には難しいですが、中学生以降と小学生までという括りで説明していきます。

【中学生以降対象(中学受験する小学生も含む)】
 中学生には、間違いや失敗に対する認識の書き換え作業をしていきます。具体的には次のような話をします。

学校や塾で先生に当てられて、答えたときに「違う!」と言われたら、どんな気持ちかな?  「やばい」「もう答えたくない」っていう気持ちにならない? 
「間違えること、失敗すること=良くないこと」って、これまで思ってきたんじゃないかな。実はね、世の中の多くの人たちもそう思っている。だって、そのように育てられてきたから。でも、それこそが違っていて「『間違い=悪いこと』と考えること自体が間違い」なんだ。

実は「間違いや失敗=宝」と考えた人が伸びている人なんだよね。でも、そのように考えることができる人は少ない。だから一部の子しか勉強しても伸びていかないんだよ。割合でいえば、全体の5%程度かな。学校の成績で言えば、「5」を取る割合ぐらい。
勉強で言えば、間違いを正したいときに頭が良くなっているということはわかるかな。逆に言えば、間違いがなければいつまでも頭は良くならないということだね。
それを「間違いは良くない!」とか、「失敗するな!」とか、さも間違いや失敗が悪いことであるように、大人たちが言うから、子どもたちもそうだと思ってしまう。もちろん、わざと間違いや失敗をする必要はないんだよ。でも、もし間違いや失敗があったらラッキーと思ってみて。なぜなら、成長するチャンスがやってきたということだから。

例えば、10問の問題があってそのうち半分しかできなかったとしよう。“半分も間違えた“と思うかもしれないけど、そうではない。間違えた5問分の説明を聞いてわかったら、その瞬間に5問分頭が良くなっているわけだ。もし10問とも正解してしまったら、何も学べていないよね。
もちろん入学試験や定期試験では◯が多いほうがいい。でも、日頃勉強している内容は間違いが多いほうが、学べて、成長できて、頭が良くなっていくと思わない? 

よくこんな話をするんだ。「できた問題はクズ問題で、できなかった問題が宝問題だ」と。できた問題は成長に繋がらない問題、できなかった問題は成長に繋がる問題だからね。しかも、3回解いても間違えた問題は今後も出る確率が高い問題だから、それがわかったということだけでも超ラッキーだよね。

 この話は要するに、間違いや失敗に対する心構えの書き換えをするためにしているものです。おそらく、このような話を子どもたちは聞いたことがないでしょう。「失敗してもいいんだよ、直せば」とか「失敗は成功の母」などとうっすらとした格言程度の言葉を聞いたことはあるかもしれませんが、その一方で×が多いと、親や先生がいい顔をしないという、2つの矛盾した経験をしているわけです。子どもの心にしっかりと落としていくためには、ここまで詳しく具体的に話をする必要があると思っています。

■子どもは「×」をシビアに受け取る

 しかし、小学生が対象になると、この話は通じないことがあるため、別のアプローチをします。

【小学生対象】
 この時期の子どもたちは、とにかく◯をたくさん欲しがります。したがって、採点のときに次のようなことをしてみてください。

 「◯だけつけて、×はつけない」

 学校のテストでは×がどんどんつけられてしまうため、その部分は変えられないのですが、家で学習する際、親が採点をする際は、正解に◯をつけるだけで、間違いはノーチェックにします。レ点チェックもしません。そして、ノーチェックの問題を直して正解したら◯をつけます。◯が徐々に増えていくイメージを作るのです。

 間違いに×をつけることが通例として行われていますが、繊細な心を持っている子どもたちは、×を否定と捉える傾向があり、それをきっかけに「やりたくない」「嫌い」という認識になってしまう子も意外と多いものです。×の印象は大人が思っている以上に、子どもはシビアに受け取っているのです。結果として、子どもが前向きに修正して学んでいけばいいわけですから、あえて×をつける必要はないと思っています。

 実際、筆者が小学生を指導していたときは、◯のみつけて×はつけていません。そして直してきたら◯を増やしていき、どこまで◯が増えるか挑戦するゲームのようにしていました。すると、子どもたちはまるで間違い探しをするかのように前向きに取り組むようになりました。つまり、間違いを否定的に捉えなくなったということです。たったこれだけのことで、子どもの心の状態は大きく変わります。

 以上、中学生以上と、小学生までの2つに分けて説明してきましたが、実際にちょっとしたことだけで、子どもの間違いや失敗に対する認識は書き換えられていきます。

 このような心構えを持つようになった子どもは最強です。「正解は正解で良しとし、間違いは成長に繋がるので良しとする」マインドセットになるからです。これが本来の学びの姿勢だと考えています。ぜひ、ご活用ください。

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最終更新:3/21(木) 5:32

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