(ブルームバーグ): 2017年にパリで開催された会議に出席したユータロー・ルビオ氏は、見慣れない顔ぶれを見て驚いた。同氏はその時点で、オルタナティブUCITSファンドを10年間追跡しており、通常であればこのようなイベントに参加する人たちのほとんどを知っていた。
「高利回りのオルタナティブ投資を追い求める債券投資家が中心だった。中には戦略を十分に理解していない者もいたのだろう」と同氏は振り返った。
当時はオルタナティブUCITSの黄金時代だった。UCITSファンドは欧州連合(EU)法の下でヘッジファンドの投資戦略を個人投資家に提供する。
ケプラー・アブソリュート・ヘッジの調査によると、総資産は2018年初めに過去最高の約4330億ドル(約66兆4000億円)に達した。ルビオ氏は、金利がゼロ付近の間こうしたファンドに資金を置いておこうとする一過性の投資家が、この増加のかなりの割合を占めたとみている。
その後、業界は急降下した。ヘッジファンド全般が数年にわたる資金流出に見舞われたが、UCITSはレバレッジ、取引集中、ショートポジションに関する規制が厳しく、リターンも低い。さらに、最近では金利上昇により、かつての投資家層の一部が流出している。
インターナショナル・アセット・マネジメントのUCITSリサーチ責任者であるルビオ氏は「今は業界の底の一つだ。一部のファンドが投資家の期待に応えられず、業界のパフォーマンスが低迷したことが一因だ」と話した。
多くのUCITSファンドの手数料は伝統的なヘッジファンドと同程度であるにもかかわらず、投資会社オーラムのデータによれば、ヘッジファンドの方がリスクレベルに対するリターンの尺度であるシャープレシオシが高く、より大量の資産を扱うのに適している。
UCITS市場のこの一角の衰退は、その台頭とほぼ同じくらい早かった。UCITSファンドは1980年代から存在しているが、オルタナティブ投資への利用が本格化したのは2008年の金融危機以降だ。欧州規制当局がヘッジファンド投資に関するルールを強化したためだ。
UCITSは少額から投資でき、ほぼ毎日現金を引き出せる柔軟性を顧客に提供する。これにより、ヘッジファンドの長いロックアップ期間や数百万ドルもの最低投資額要件に妨げられていた顧客にも門戸が開かれた。
しかしそうした利点もリターンが高ければこそだ。銀行に現金を預けておけば5%の金利がつく今は、UCITSのアンダーパフォーマンスが目立つ。
ケプラーの調査によると、UCITS業界は昨年380億ドルの損失を出し、総資産は2400億ドルと18年のピーク時の約半分になった。UCITSファンドのパフォーマンスは昨年向上したが、4.3%の平均リターンは依然として現金同等資産を下回っている。
原題:Hedge Fund Copycats Face Reckoning as Performance Gap Widens(抜粋)
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最終更新:4/12(金) 17:14
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