アメリカが「中国EV」にブチギレ…!「虎の子EV」の壊滅で窮地に立つ習近平「経済対策」の悲惨すぎる中身

3/21 6:32 配信

マネー現代

「中国製EV」に怒るアメリカ

(文 藤 和彦) 3月7日、アメリカの上院議員3人が、バイデン大統領に中国製電気自動車(EV)の輸入関税を引き上げを求めている(ロイター・3月8日付)。

 前編『アメリカが「中国EV」に猛激怒…! 輸入規制の強化で泥沼化する、中国経済の「悲惨すぎる末路」』で紹介したように、彼らは、中国製EVが米国市場に氾濫すれば「何千人もの国内雇用が失われ、米自動車産業全体の存続を脅かすことになる」と主張しているという。3人が書簡を送ったのは、米商務長官のジナ・レモンド氏である。同氏は1月30日に次の発言をしている。

 「中国製EVは安全保障上の重要なリスクをもたらす」
「EVや自律走行車はドライバーや車の位置、車の周囲に関する膨大な情報を収集しており、そのデータがすべて中国政府に渡っているのではないか」

 ホワイトハウスは2月29日に「調査の結果次第では輸入規制もあり得る」としている。

 中国側は「根拠がない」と調査の撤回を求めているが、「米国の自動車産業労働者を守る」と公約するバイデン大統領の政治的思惑が絡んでおり、米国側がこれに応ずることはないだろう。

 中国製EVは、今後、窮地に陥り、中国経済はますます泥沼化することが懸念される。

「低迷の中国経済」に習近平は打つ手なし…

 中国経済は極端な内需の低迷にあえいでいる。2月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.7%増と6ヵ月ぶりにプラスに転じたが、「春節の一時的効果で終わり、早晩、マイナスに戻る」との見方が一般的だ。

 この内需低迷を補ってきたのが「輸出」で、1~2月の輸出額は前年比7.1%増の5280億ドル(約78兆円)だった。品目別に見ると、電気自動車(EV)が13%増、半導体や家電がそれぞれ20%超増だった。

 しかし、輸出頼みの経済はアメリカとの安全保障上の問題が大きな障壁となる。

 思い起こせば、30年前にバブルが崩壊した日本経済はその後、輸出頼みの構図が鮮明になったが、現在の中国も同じ道のりを辿っているように思える。

 バブルが崩壊した中国では過剰な生産能力の存在が問題になっている。

 中国の卸売物価指数(PPI)は17ヵ月連続でマイナスとなっており、経済全体に強烈なデフレ圧力が生じている。内需不足に苦しむ中国企業はこぞって輸出攻勢を仕掛けており、これに欧米当局は警戒感を強めているのだ。

 中でもこの問題に神経を尖らせているのが米国だ。

 アデエモ米財務副長官は2月23日、「中国の過剰生産能力が世界経済に及ぼす影響を懸念している」と述べた。

 政府の補助金で不当に安くなった中国製品が世界市場にあふれかえる事態は、悪夢以外の何ものでもない。

アメリカが中国EVを規制したい「決定的なワケ」

 米連邦捜査局(FBI)は1月21日、「米国の必要不可欠なインフラ基盤や安全保障に重大なリスクをもたらし続けている」として、中国製ドローンを使用する企業に対して警鐘を鳴らした。

 さらに、米ホワイトハウスは2月29日、「インターネットに常時接続する中国製のコネクテッドカー(つながる車)に対して安全保障上のリスクを根拠に調査を開始した」と発表した。 

 EVに搭載された半導体が織りなす「つながる車」は、運転者や同乗者に関する大量のデータを収集する。カメラとセンサーは常時米国のインフラに関する情報を常時記録されるが、こうした情報が中国政府にすべてわたっているのではないかとの疑念が、広がっているのだ。ホワイトハウスは「調査の結果次第では輸入規制もあり得る」としている。

 自動車の次は港湾の巨大クレーンだ。

 米連邦議会下院の国土安全保障委員会は3月10日、「米国内の港湾に導入されている中国製の荷役クレーンの一部に用途が把握できない通信装置が見つかった」とする調査結果を明らかにした。

 問題になっているのは上海振華重工(ZPMC)のクレーンだ。ZPMCのクレーンは全米の港湾に設置されたコンテナ吊り上げ設備の8割で使用されている。

 調査結果によれば、ZPMCのクレーンに遠隔通信が可能な装置が搭載されており、監視や妨害工作に用いられるリスクがあるという。

 米当局者の間では「中国製クレーンは『トロイの木馬』だ」との認識が広がっている。

 米国政府の圧力は造船業にまで及んでいる。

習近平「行くも地獄、戻るも地獄」

 バイデン大統領は3月12日、中国政府の造船セクター向けの補助金について精査する方針を表明した。米国を大きく凌駕する中国の造船能力は国防関係者の間で脅威となっており、今回の措置も安全保障上の要請が関係していると考えてよいだろう。

 これらの措置はいずれも米中貿易に大きな影響を及ぼすものではないが、米ワシントン界隈で中国への敵対心が以前にも増して高まっていることの重要な証左だ。

 バブル崩壊後の日本は、急成長を遂げる中国への輸出拡大に助けられたが、現在の中国は「米国への輸出拡大」で急場をしのぐことができなくなりつつある。

 中国経済が既に多くの問題に直面している状況下では、わずかなマイナス圧力が「最後の一押し」になってしまうではないかとの不安も頭をよぎる。

 米国を始めとする西側諸国との「和解」が喫緊の課題なのだが、「建国の父」だった毛沢東とは異なり、凡庸な指導者に過ぎない習近平国家主席が自らの失政を認めれば、失脚は免れないかもしれない。

 「行くも地獄、戻るも地獄」なのだ。

 全人代の結果、習氏の権限集中がさらに進んだが、これにより、中国の政治情勢はますます不安定化してしまったのではないだろうか。

 さらに連載記事『「EV」がアメリカだけでなく中国でも絶不調に…トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで「中国EV大ピンチ」の深刻すぎる実態』では、世界的にEVに大逆風が吹いている構造をさらに詳しくお伝えしているので、ぜひ参考としてほしい。

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最終更新:3/21(木) 6:32

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