言語化は「うまい言葉を使えばいい」という大誤解 元裁判所書記官が教えるうまい情報整理の本質

1/25 14:02 配信

東洋経済オンライン

「知っているはずなのに、うまく言葉にできない」。そんなもどかしさを感じるとき、実は新しい情報は必要ありません。大切なのは、すでにある情報を整理することなのです。
シンプルなのに「会議」「企画・アイデア」「知識の習得」すべてに使える裁判所書記官のメモの秘密を解説した『その場で言語化できるメモ』より一部抜粋、再構成してお届けします。

■「言葉にできない」=「知識がない」わけではない

 世の中は情報であふれています。スマホやパソコンを開けば、動画もニュースも誰かの意見も、とめどなく流れてきます。様々な情報を否応なく目にしていると、もはや、それが本当に自分の知りたいことなのか、必要なことなのか、わからなくなってきてしまう感覚すらあります。

 さらに、私たちの頭の中にはすでに、誰かから学んだこと、本や映画などの内容、過去に自分で経験したこと、感じたことなどが、ごちゃっとしまい込まれています。

 「〇〇については、あんなデータがあったような。でもあの有名人はこんな話をしていたな。私の体験としてはまたちょっと違うんだけど……」

 頭の中にある様々な情報から自分の言葉を取り出そうとしても、絡み合って、なかなか出てきません。

 こんなとき、言葉が出てこないのは知識がないせいだと思って、さらに新たな情報を探したりする人もいます。けれども、何かを足せば足すほど、余計に何が言いたかったのかわからなくなってしまいます。

 その理由は、足りないからではなく、本来なら「ある」はずの自分の想いや考えを、ちゃんとした形で引き出せていないからではないかと思います。要するに「ない」から言えないのではなく、整理ができていないだけなのです。

 あなたは、こんまりさん(近藤麻理恵さん)の『人生がときめく片づけの魔法』という本をご存じでしょうか? 

 私がこの本を読んだとき、「言語化」もある意味、片づけによく似ているなと感じました。

 こんまりさんのメソッドでは、一度、同じ種類のものをすべて集めて見えるようにし、そこからときめくかどうかで取捨選択をして整理していくことで、部屋がスッキリ片づいていきます。

 言語化も同じで、一度、情報を頭の中から出して、コミュニケーションの目的に応じて整理していくことで、ようやくスッキリわかりやすく伝えられるようになります。

 言葉が出てこない原因の大半は、「素材(情報)」が足りないからではなく、この「整理」がうまくできていないからなのです。

 「言語化」の目的には、

①相手とのコミュニケーションのための言語化
②自分とのコミュニケーションのための言語化
 の2種類があります。

■「うまい言葉」にあこがれたとしても

 まずは、相手とのコミュニケーションのための言語化について説明していきます。

 今、多くの「言語化」の本が出ています。なかにはコピーライターやコンサルタントが著者となっているものもあり、「自分の想いをいかにうまく言葉にするか」ということに重きが置かれているものが多いように感じます。

 でも、日常のコミュニケーションにおいては、言葉のプロが扱うような「うまい言葉」は必ずしも必要ありません。それよりもむしろ「何を伝えるか」という中身の部分をしっかり整理することのほうが大事です。

 ある友人が新入職員だった頃、会議の後に先輩に質問したときのことです。

 「さっきの会議で『コンセプト』という言葉が何度か出ていましたが、どういうことだったのでしょうか?」

 先輩は、「コンセプトは、アイディアの種みたいなものだよ」と、一言答えて去っていってしまいました。

 (アイディアの種ってどういうこと?  今日の会議でなぜそれが必要で、どうやって考えたらよいかも知りたかったんだけどな……)

■大事なのは「どう伝えるか」よりも「何を伝えるか」

 先輩としてはうまい言葉で端的に言語化したつもりだったのかもしれませんが、質問に答えてもらえなかった友人には、なんとも言えないモヤモヤと不満が残ったそうです。

 このように、一見うまい言葉のやりとりがされたように見えても、必要な情報が伝わっていなかったり、質問したことに十分答えていなかったり、コミュニケーションの目的が果たされていなければ、うまく言語化ができたとはいえません。

 一般社団法人日本ビジネスメール協会による「ビジネスメール実態調査2024」でも、仕事で不快に感じたメールの内容として、「必要な情報が足りない」が第1位に挙げられています。

 つまり、失礼がないか、文章が読みやすいかどうかといった「伝え方」よりも、「何を伝えるか」という素材の部分が不十分だと、相手はより不快に感じるということです。

 いくら伝え方を磨いても、前段階である「何を伝えるか」の情報が十分整理できていなければ、わかりやすく人に伝えることはできないし、伝えたところで薄っぺらだと思われてしまいます。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/25(土) 14:02

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