「どこの大学を出たんだ?」は人格攻撃でしかない…「パワハラ上司」がしがちな"3つのミス"

5/12 10:17 配信

プレジデントオンライン

ミスをした部下にどう接すればいいのか。ビジネス心理研究家の神岡真司さんは「パワハラになることを恐れてミスを見過ごしてはいけないが、感情的になって怒りをぶつければ部下から恨まれるだけだ。叱る時の3つのルールを意識してほしい」という――。

 ※本稿は、神岡真司『人生を1時間でチート化する 対人スキル20』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

■上司は部下のミスを見過ごしてはいけない

 近頃では部下を叱責すべき時に、「下手すりゃパワハラ呼ばわりされかねないから注意できないよ」――などと嘆く上司がいますが、考え違いも甚だしいのです。

 これは管理者である上司の責任逃れの言い訳であり愚痴にすぎないでしょう。

 相手のよいところを評価して「ほめること」が、「お世辞」や「オベンチャラ」「ゴマスリ」などと違うように、「叱ること」は、「怒りをぶつけること」でもなければ「罵倒すること」とも異なります。いわんや、ストレス解消のはけ口でもありません。

 職場の上司は、職場の規範を守り、生産性を向上させる責務を負っています。

 部下のミスやしくじり、怠慢といった行為を黙って見過ごすわけにはいかないのです。

■「叱ること」は「ほめること」より難しい

 ゆえに上司は、部下の失敗の原因を辿り、次にミスがないよう指導・督励する必要があるのです。その結果として、部下がやる気をもってチャレンジしてくれるようにすることが求められるのです。つまり、叱ることで部下を成長させるのです。

 ところで、「叱ること」は、「ほめること」よりも難しいものです。

 叱っているつもりが、怒っている状況になりやすいからです。感情的になると、「叱る」ではなく「怒る」です。これでは相手の共感を得られず、反感を募らせかねません。

 まずは、叱る時の「3つのルール」を心得ておきましょう。

■「怒り」をぶつけるだけでは恨まれるだけ

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①虎の威を借りない
「社長がこういうのは駄目だと言ってるだろ?」
「私でよかったな、部長が知ったら大変だったぞ」
②性格や能力に言及しない
「きみの性格が暗いから、こうなったんだよ」
「どこの大学を出たんだ? こりゃ中学生レベルだ」
③過去の失敗を持ち出す
「あの時の失敗もそうだったよな、どういうことだ」
「何回、オレの顔に泥を塗れば気がすむんだよ」
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 ①は無責任な上司です。上司としてのプライドもメンツもあったものではありません。
②は、部下の人格を踏みにじっているだけです。
③は、卑怯なエンドレス攻撃です。ネチネチと部下をいたぶるのが習性のようです。

 こんな事例は、タチの悪い上司が部下に「怒り」をぶつけているだけで、ミスや失敗を指摘される部下のほうも、内心では上司への恨みを蓄積するだけでしょう。

 叱る目的は、部下の行動を改善させ、その成長を督励することでなければいけません。

■自分の行動に自信がなければ他人を叱れない

 正攻法で部下を叱るには、上司も確たる信念をもって、仕事に取り組んでいなければなりません。口先だけ偉そうに、上から目線で部下を叱責しても、部下が内心で「お前だって、いつも怠慢だろうが……」などと思われていたら、意味がないからです。

 上司として、自らも「規範」を守り、日常的に、正々堂々と前向きに仕事に取り組んでいなければならないのです。

 叱る人の責任ある行動があるからこそ、部下を叱ることもできるのです。

■何が間違いなのかを具体的に指摘する

 叱る時に大事なのは、タイミングです。基本的には、「常識」や「マナー」に反する行為は、その場で指摘して、改善を促さなければいけません。

 「不可抗力であっても、少しでも遅れる時には、前もって連絡を入れなさい」
「きみの電話でのやり取りだけど、敬語の使い方を間違っていたよ。正しくは○○だよ」
「さっきの接客時のきみのうなずき方だけど、あれでは不躾(ぶしつけ)でお客様に対して失礼だよ」

 こんな具合に、具体的なポイントを短く指摘して、たしなめることが重要です。

 また、ミスの原因が根源的なところの場合には、時間と場所を変えて行いましょう。

■「ケアレスミス」の多い部下への声かけ

 ついうっかりのミスと、怠慢によるミスは違います。

 ただし、ここで叱責する場合には、もう一度、上司である自分の指示の出し方が悪かったのではないか――という「振り返り」もしてみるべきです。

 どこかで部下に勘違いを生じさせたのでは?――と責任の一端が自分にもあるかもしれないといった謙虚な気持ちで、部下と向き合うべきだからです。

 単純なケアレスミスは、その場で原因を指摘して改善を図るべきですが、ここでもケアレスミスが何度も続くと上司は苛立ちを覚えます。しかし、「またかよ、お前、バカじゃないのか?」「なんべんやりゃあ、気がすむんだよ!」などと言う罵声は禁句です。

 深呼吸して、「ミスしない方法を考えて報告してくれないか?」と問うべきです。

 怠慢による部下のミスの場合は、上司も頭に血が上りがちです。そんな時は、自分の頭を冷やす意味でも、「きみ、ちょっと会議室に来てくれ」などと場所を変えて、じっくり部下と向き合うようにすることです。部下も「事の重大性」を認識するはずです。

■「ほめ」と「ほめ」ではさむ叱り方

 部下を叱る時の「叱り方」のバリエーションにも気をつけたいものです。

 状況にもよりますが、ミスだけに焦点を絞って指摘するだけでなく、日頃の「よい評価」があるなら、それをミックスさせて、「ほめ」を入れて叱ったほうが、部下の「気づき」が深まることもあるからです。

 「いつものきみらしくないな」「接客上手なきみにしては珍しいミスだね」

 こんな導入の言葉があると、ミスをした部下の心もほっこりするからです。

 「ほめ」と「ほめ」のサンドイッチではさむ「叱り方」もあります。

 「いつも業績評価の高いきみが、○○のミスをしたのには驚いたよ。まあ、きみのことだからもう対策も講じてるよね。いちいち気にしないでいつも通りに頑張ってくれ」
「さっきの接客を見ていたけれど、さすがだね。ところで、たった一つだけ、優秀なきみにも、ひとつの課題を見つけたんだけど、きみの事だから、もうわかっているよね?」

 といった誘導で「気づき」を与えるのも一法でしょう。自分で考えてもらえば、こちらから指摘するまでもないからです。

■相手のタイプによって「叱り方」を変える

 「叱り方」で難しいのは、こちらは軽い指摘のつもりだったのに、本人が重大に受け止めて、すっかり落ち込んでしまうといった事態です。そうならないためには、本人の性格や気質をよく観察しておくことが大事でしょう。

 「陽気で明るいタイプの部下」には、くどい指摘や叱責でなく、短く要点を突いた内容で伝えるべきでしょう。また「内気でおとなしいタイプの部下」には、「ほめ」をよく利かせた、本人の存在を十分尊重しているといったフォローをまじえながら問題点を伝えるのがよいでしょう。

 そして、冷静で論理的なタイプの部下には、目に見える数値などのデータを示し、一緒に考えてもらう「叱り方」のスタイルが望ましいでしょう。

 また、最近増えている「年上の部下」の場合には、人生の先輩という敬意を忘れずに、的確な事実のみを示し、「手を打っていただけますか?」と解決をお願いすることです。

 なお女性の場合には、人目のないところで叱るなど、恥をかかせない配慮も重要です。



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神岡 真司(かみおか・しんじ)
ビジネス心理研究家
日本心理パワー研究所主宰。最新の心理学理論をベースにしたコミュニケーションスキル向上指導に定評がある。法人対象のコミュニケーショントレーニング、人事開発コンサルティング、セミナー開催などで活躍中。著書に、『最強の心理学』(すばる舎)、『思い通りに人をあやつる心理テクニック101』(フォレスト出版)、『嫌いなヤツを消す心理術』『口下手・弱気・内向型のあなたのための弱みが強みに変わる逆転の心理学』(ともに清流出版)、監修書に35万部のベストセラーとなった『ヤバい心理学』『もっとヤバい心理学』(ともに日本文芸社)など。
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最終更新:5/12(日) 10:17

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