「仕事とプライベートどっちが大事?」時代の終焉 これからは「ワークライフハーモニー」が大切

5/26 14:02 配信

東洋経済オンライン

IT技術の進歩やテレワークの普及により働き方が大きく変わった今、新たなワークライフバランスの在り方に注目が集まっています。30年以上前に広まったワークライフバランスという概念は果たして、現代にもふさわしいものなのかーー。自己管理術の専門家であるゴンドー優希さんは、これからの時代に目指すべきは「ワークライフハーモニー」であり、そのための手法として自己管理が重要であると話します。ゴンドーさんの著書『実行の鬼 最速で結果を出すためのエクストリーム自己管理術』の内容に新たなインタビューを加え、ニューノーマル時代に最適な仕事とプライベートの関係を考えます。

■仕事とプライベートは、本当に競合すべき? 

 私は現在、自己管理の専門家として、常時1000人を超える社会人たちに仕事、勉強、趣味、恋愛などで最速で結果を出すための自己管理術をお伝えしています。

 いろいろな相談を受ける中で最近よく耳にするワークライフバランスという言葉。私生活を大切にしたいから、仕事に費やす時間を少しでも減らしたい。仕事の生産性を高めて生み出した時間を、趣味に費やしたい。仕事を効率化し、プライベートに時間を割く手段として、自己管理に興味を持つ人が多いようです。

 ただ、仕事とプライベートを切り分けて考えるワークライフバランスの概念は、個人的にいまいちピンときません。

 仕事とプライベートを天秤にかければ、多くの人はプライベートに重きを置きたいと願うでしょう。人生において仕事とは多大な時間を費やすものであり、もしその時間に興味が持てなかったり、辛かったりすれば、相対的に人生も不幸になりかねません。

 つまるところ、仕事中であろうが遊びの最中であろうが、あらゆる時間をどれだけ楽しめるかで、人生の幸せの総量が決まるように思います。したがって、仕事とプライベートを競合させるワークライフバランスの発想はしっくりこないのです。

 仕事とプライベートの適切な関係性を紐解くとするなら、私がより共感するのは「ワークライフハーモニー」という考え方です。この概念は、Amazon社のCEO(当時)、ジェフリー・プレストン・ベゾス氏が2016年に提示したのを発端に広まったとされています。

 プライベートが幸せであれば、仕事に対するエネルギーが湧く。仕事が充実していると、プライベートもより楽しめる。仕事とプライベートは、「競合」ではなく、「融合」(harmony)させ、あらゆる時間を豊かに過ごすことを目指すべきであるーー。

 私もまた同じように考え、実践してきました。自身が提唱する自己管理術も結局のところ、人生という限られた時間の中で、仕事とプライベートの隔てなく本当に大切なことにきちんと時間を使うための、一つのアイデアに他なりません。

 ポストコロナ時代に入り、リモートワークの浸透など人々の働き方が変わっていく中で、従来のように仕事とプライベートを明確に区切るのが難しくなりつつあります。だからこそ、ワークライフハーモニーの実現がより重要になるはずです。

■自己肯定感を高めれば、あらゆる時間が充実する

 では、どのようにワークライフハーモニーを実現すればよいのか。そのためのキーワードが、自己管理です。仕事でもプライベートでも同じように自己管理を続けていけば、自然にその垣根は消え、すべての時間が充実するようになります。

 実際に私も、とにかくあらゆる物事をタスク化して管理し、分け隔てせずひたすら実行するようになってから、人生が一気に拓けた感覚があります。私と自己管理術との出合いや実践方法は、拙著『実行の鬼』に詳しく記しておりますが、だらしなかった自分が自己管理を通じてまさに生まれ変わりました。

 仕事では、NECという会社でトップの営業成績を収めることができました。入社3年で、約3万人いる営業部員の頂に立ったのは史上最速と言われました。それと並行してプライベートも大切にし、家事もしっかりこなしました。

 こうした経験を通じなによりも大きな財産となったと感じるのが、自分自身を肯定し、あるがままの自分でいられるようになったことです。

 今日やるべきタスクを定め、ただ愚直にやり切るーー。そんな生活を続けると、自己肯定感が高まっていきます。なぜなら、一つひとつのタスクをやり通すのはまぎれもない成功体験であり、こなすほど自分に自信が生まれるものです。

 また、タスクを達成するだけ成果も積み上がり、周囲からも評価されます。会社では同僚から一目置かれ、家庭ではいつも家族から感謝される。そんな状況になれば、さらに自分のことが誇れるようになります。

 自己肯定感が高い状態を築けるかどうかが、実は人生の幸福度に大きな影響を与えます。心理学においても、自己肯定感が高い人ほど幸福度も高いとされています。自己肯定感とは、明日をポジティブに生きるためのエネルギーであり、仕事もプライベートも境なく人生を楽しむためには欠かせない要素といえます。それが自己管理であり、もっとも最適な手法の一つであるというのが私の結論です。

■すべてのタスクを一つの“時間割”で管理

 ワークライフハーモニーの達成につながる自己管理の考え方で大切なのが、すべてのタスクを全力でやることです。自分の力を100として、仕事に30、プライベートに70と割り振るようなやり方ではない。すべてに全力であたるというのが、成果や自己肯定感を引き寄せるポイントといえます。

 とはいえただ全力を出し続けていると、疲れたり、集中力が切れてしまったりするかもしれません。そこで重要になるのがスケジュール管理であり、私がおすすめするのが、「時間割作戦」です。

 1日のタスクを学校の時間割のように割り振るとともに、10分や15分の休み時間を適宜設けるようにします。それが完成すれば、あとは余計なことを考えず、ただひたすら実行するのみ。妥協せず、100%の力を尽くしていけばいいだけです。

 実行にあたっては、事前に環境を整えることが大切です。たとえば仕事から帰ってすぐにジムに行くと決めたら、家の玄関にあらかじめトレーニングウェアを用意しておく。そのように先回りして準備すると、リズムよくタスクをこなしていけます。

 面倒なものや大変なことに対しては、「どうしたらできるか……」と悩むより、やるしかない状況を意図的に作るほうが手っ取り早いです。部屋を一気に片付けたいなら、友人を家に招く予定を入れる。仕事を少しでも早く終わらせるために、あえて締め切りを早める。そうして自分を追い込むと、達成しやすくなります。

 仕事とプライベートの垣根を設けずにタスクの達成を積み上げ、日々を全力で過ごしていると、ときに思わぬ気づきがあるものです。そしてプライベートで得た気づきが仕事に生き、仕事の教訓がプライベートに生きるということもよく起きます。

 『ベスト・キッド』という映画では、主人公が柵にペンキを塗ったり、車にワックスをかけたりする動作が、実は空手の訓練になっているという描写がありましたが、まさにそのイメージです。

 そのような気づきや成長によって、今日やるべきタスクをこなすスピードは次第に速まっていきます。すると自然に余裕が生まれ、本当にやりたいことや、大切なことに時間を使えるようになります。

 そこまでいけば、仕事もプライベートも充実し、意識せずともワークライフハーモニーを実現できるはずです。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:5/26(日) 14:02

東洋経済オンライン

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング