新NISAが始まり、多くの人が興味を持ち始めた株式投資。しかし、成功させるには経験や我慢する力、なにより知識が必要です。
児玉一希さんの新著『高配当10倍株投資 「高利回り×高成長」で資産を4倍速で増やす!』より一部抜粋・再構成してお届けします。
私は高配当株投資をお勧めしていますが、その際に重要な判断指標を5つご紹介いたします。
■「配当利回り」だけに飛びつくなかれ
高配当株というと、「配当利回り」や「配当性向」といった指標ばかりに目が向きがちですが、それらの指標だけでは十分ではありません。10倍株投資を成功させるには、企業を多角的な視点から俯瞰する必要があるのです。
重要な判断指標① 売上増加が続いている
企業業績を見る上で、最も私が重視しているのが売上高です。基本的に商品が売れていなければ売上は増えません。
そして、手元に残る利益の大きさはこの売上が左右します。いくら利益率が良かったとしても、売上金額自体が上がっていないと、利益額も上がらず投資家に評価されにくくなります。
そのため、大前提として投資しようとする企業の売上高が毎年増えているかを必ずチェックしてください。売上が増えていれば、その企業のサービスや製品が世の中から支持されていて、企業自体が成長しているということです。
特に3年、5年と売上を伸ばしていれば、一過性のブームではなく、時代に順応し、そして顧客から支持されながら企業がビジネス活動していると言えます。
逆に、売上が伸びないと、いくら配当利回りが良かったとしても、株価が上がらないどころか、むしろ下がり続けます。
■売上高は大事な指標
2015年に上場した日本郵政(6178)は、人口減少に伴う郵便物の減少など構造的な問題で毎年売上が減っています。2013年から2022年までの10年間で実に29%もの売上高減少を記録しました。
そうなると、高い利益率をあげるのは難しく、何とかコスト削減などで黒字にすることはできたとしても、やはりジリ貧なのは想像に難くないと思います。
近年の日本郵政の株価は2015年から2020年までの間にマイナス64%も下落しています。2026年3月までは配当金を維持すると宣言しているものの、高配当である以上に、株価の下落で損をしてしまいますね。
どんな企業もやはり売上高は大事な指標です。仮に成熟企業であったとしても、前年比で売上微増は求めたいところです。
重要な判断指標② 長期チャートで下値が切り上がる
長期下落トレンドの株がなかなか反転しない一方で、上がり続ける銘柄はきれいな上昇トレンドを描きます。特に、途中でまとまった下落があっても、下値(直近の最安値)がだんだん切り上がっていれば、長期の安定上昇が期待できます。
私はテクニカル分析をそこまで重視しませんが、チャートを使わないわけではありません。チャートは過去の値動きの推移を示しており、その株が買われたという事実を表しています。
下値が切り上がるということは、業績が悪い時でも株が売られず、以前よりも高い値段で買われているということです。
そのため、ポピュラーな日足だけでなく、私は投資判断をする際に週足や月足を確認し、少なくとも横ばい、できれば上昇トレンドに入りつつある銘柄を選ぶようにしています。
長期投資で大化けを狙っていくのであれば、日足のような短期的な指標ではなく、週足や月足を見ることによって、暴落があっても冷静に判断することができます。
重要な判断指標③ 従業員数が右肩上がりで増えている
従業員を増やし、積極的に採用している企業は有望です。
私自身も会社を経営していて思いますが、人を雇うというのは本当に重い行為です。給料や社会保険等のコストが発生するのはもちろん、その人の人生の一部を預かることになりますので、簡単にできることではありません。
ただ、大きく成長する企業は従業員数が増え、積極的に採用活動しているところがほとんどです。ビジネス自体にすでに勝ち筋が確立されており、後は人を増やして規模をあげていく、そういった段階にあるからです。
■転職サイトでの口コミが指針となる
大企業の場合、単純に採用人数を増やしただけでなく、M&Aで会社を吸収しその分の従業員数が増えたというケースもありますが、継続的に従業員が少しずつ伸びていれば問題ないでしょう。
その上で、社員の年収が高かったり、転職サイトでの口コミが良かったり、高学歴で優秀な新卒社員が入っていたりするとなお望ましいです。AIの台頭でホワイトカラーの仕事が無くなると言われている中、必ずしも人材採用は必要ではありません。本来なら、コストを増やさずに企業収益だけ上がる形が理想です。それでも高い年収を提示して人材を集めることができるのは、優秀な人材に選ばれ、ビジネスモデルが優れている証とも言えます。
特に私は、会社の強みや展望を大事にし、転職サイトでの口コミを見ています。そこでネガティブな論調ばかり目立つ会社は株価も上がっていません。
逆に、その会社を退職する人であってもその強みをはっきり言葉にしていたり、今後も伸びていくと思うような書き込みが見られれば、その時点で株価が下がっていたとしても後々持ち直していたりもします。中の人から見ても優秀な会社はやはり強いです。
重要な判断指標④ 設備投資が増えている
企業の設備投資額が年々増えているかも確認してみましょう。
設備投資とは、事業の拡大や効率化のために新しく工場を立てたり、機械を買ったり研究開発をしたりすることです。
たとえば、自動車メーカーが最新のロボットを導入して生産ラインを自動化する等、初期段階で多額の費用が掛かるものの、移行は収益が上がるきっかけになります。機械や建物のような設備投資以外にも、前項で述べた採用の強化も投資に含まれると言っていいでしょう。
企業の理想の成長パターンは、利益を得て、その利益をさらに事業に投資し、そして大きくなっていくことです。米国のアマゾンが赤字でも利益をすべてプラットフォームの拡大に費やし今日EC市場を支配するまでになったのは有名な話です。
話が少しずれますが、2023年の3月に東証が企業に対し、ため込んだ資本を有効に活用せよとの通達を出しました。
■積極的な設備投資が売上・利益額の増加に反映される
日本企業は伝統的に利益を貯め込む、つまり内部留保を増やす傾向にあります。
そのため、会社の時価総額が、会社が持っている純資産額よりも小さい「PBR1倍割れ」銘柄が、東証プライムの半数以上を占めるなど、異常な状態となっていました。
投資家サイドからすれば、自分が出した資金に対し、企業が翌年どれくらい利益を上げてくれるかを重視します。それが配当等のリターンに直結しますし、売上・利益が上がれば株価上昇にもつながります。
そのため、設備投資を積極的に行っている企業は、将来に対して前向きであり、かつ業績の向上が見込めます。設備投資をすると一時的に利益が減ったりしますが、それでも投資の成果が後々の売上・利益額の増加に反映されますので、そういった兆候が見えていれば問題ありません。
重要な判断指標⑤ EPSが急騰している
EPS(Earnings Per Share、1株当たり純利益)とは、企業の純利益を発行済み株式総数で割った値です。この数字が大きいほど、その企業は1株につき多くの利益を生み出していると言えます。投資家にとっては、利益が多い会社が魅力的に見えるため、EPSは重要な指標です。
株価というのは、理論上、このEPS(1株当たり純利益)に、投資家の期待値を表すPER(株価収益率:企業に対する期待度)で構成されます。
理論株価=EPS×PER
PERが変わらなければ、EPSが上がると株価の上昇に直結します。そして、長年成長する企業を見つけるには、EPSの前年比での成長率に注目してください。
これが前年比を上回るのはもちろん、成長率が加速していると望ましいです。四半期、1年間それぞれの業績でEPSが前年よりも上回っていると、企業が業績の成長フェーズに入っているのが分かります。
高配当株においても、EPSの成長が急騰につながります。
たとえば、2020年からの3年間で株価が10倍以上になった半導体専門商社の東京エレクトロンデバイス(2760)を見ても、2016年のEPS30.9円から2023年には同294円とほぼ10倍に成長しています。
2019年に比べ配当も4.2倍に伸びています(19年3月期:31円→24年3月期(予):131円)。この急上昇も電子機器・EV・AIをはじめとした半導体需要の伸びが貢献しているので、業界の将来性を考慮し、これからEPS成長が加速するタイミングを狙えるとベストです。
■意識するべき「5つの重要指標」
以上の5つの指標が、10倍株投資を成功させるうえでのポイントになってきます。目先の「高配当株」に飛びつくのではなく、企業の将来性やチャートなどにも留意したうえで、良い株に投資することをお勧めします。
東洋経済オンライン
最終更新:5/15(水) 14:02
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