【日本市況】円一時1%安、政局不透明で153円台-株は反発、債券安

10/28 7:39 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 28日の日本市場では円が1ドル=153円台に下落し、約3週間ぶり安値を更新。衆議院選挙での与党過半数割れを受け、政治の先行き不透明感から売りが強まり、下落率は一時1%に達した。円安や衆院選を通過した反動により、株式は急反発。債券は財政拡大への懸念から下落し、利回り曲線は傾斜(スティープ)化した。

与党敗北を受け、国内政治は不安定化が避けられず、日本市場もボラティリティーの高い、波乱含みの展開が続く可能性が高い。連立政権の行方や今後の経済・財政政策の方向性、追加利上げを模索する日本銀行への影響など不透明要因が多い中、初期反応は円売り・株売り・債券先物買いとなったが、その後株には買い注文が入り、債券は売り優勢に転じた。一方、円の売り圧力は根強く、通貨当局による介入に対する警戒感も高まりつつある。

シンガポールのサクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏はリポートで、与党過半数割れにより連立政権の枠組みが拡大すれば、財政支出が増加し、日銀金融政策の見通しを複雑にする可能性があると指摘。その上で、市場が日銀への影響を見極める中で米国要因が加わり、円安が加速するリスクがある一方、円安と財政支出拡大、企業の構造改革を背景に日本株は魅力を維持すると予想した。

為替

円は主要通貨に対して全面安。政局不透明感から日銀の金融政策運営がより慎重になるとの見方が広がり、日本時間早朝から売りが先行した。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、石破茂首相が目指す財政均衡的な政策は難しくなり、連立拡大による金融緩和継続の可能性が高まるとの評価で、海外時間にかけて「154円台を超えて155円を目指す円売りとなるリスクがある」と指摘。米国の大統領選を来週に控えて、トランプ前大統領が優勢との見方が強まっていることからも、ドル高・円安の流れが続きやすいと語った。

株式

日本株は小幅安で寄り付いた後、上昇に転換。衆院選の通過で投資家の様子見姿勢が後退し、ここ2週間ほどの相場下落の反動を狙った買いが入った。半導体関連株や、自動車など輸出関連株に為替の円安推移を好感した買いが入ったことも相場全体を押し上げ、日経平均は一時800円以上上げる場面があった。

市場関係者の間では、選挙前の下げでたまっていたショート(売り)が材料出尽くしでカバーされているとの見方が出ていた。決算発表を受けた個別銘柄の物色も顕著で、今期(2024年12月期)のコア営業利益計画を上方修正した中外製薬や通期営業利益予想を上方修正したファナックが買われた。

岡三証券の大下莉奈シニアストラテジストは、半導体は在庫調整の一巡で需要の拡大局面に入ったと言われており、「半導体市況が良くなってきているのが今回の決算でも確認できるのではないかという期待がある」と話した。

大和証券の細井秀司シニアストラテジストは株価の上昇は 「予想外の反応」とし、「市場でも過半数割れをある程度織り込んでいたのではないか」と指摘。その上で、円安進行を評価する動きもある一方、イベント通過で「ポジションを戻しているだけの可能性もあり、今後どうなるかはまだもう少し見てみないと分からない」と続けた。

債券

債券相場は下落。石破政権が積極的な財政出動に前向きな野党と連携すれば国債増発につながるとの警戒感から、超長期債中心に売られた。円安進行も債券売りにつながった。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、金融政策の正常化に対して逆風が吹きやすい政治情勢で、財政政策も拡張的な方針になりやすく、「スティープ化的な金利の動きになりやすい」と指摘。1ドル=160円近くまで円安が進めば「通貨防衛的な利上げへの臆測につながりかねず、相対的に金利があまり上がっていない中短期金利ゾーンにも波及しかねない」と述べた。

一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、新しい連立政権の枠組みが固まらない中、補正予算が通って実現できるのかは不透明だとし、「利回り曲線のスティープ化基調は続くだろうが、財政懸念だけでどんどん売られることも考えにくい」と述べた。

新発国債利回り(午後3時時点)

--取材協力:田村康剛、佐野日出之、グラス美亜.

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:10/28(月) 15:58

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