在宅勤務の裏で進んだNY老朽ビルの再開発、野村やグーグルを誘致

4/13 21:09 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): ニューヨーク市マンハッタンのペンシルベニア駅周辺は長年、失われた栄華の象徴となっていた。壮麗さを誇った駅舎が1960年代に取り壊されて以来、公共交通のハブである同駅を中心とした地域はかつての輝かしさを取り戻すことができていなかった。

地域の再開発計画はこれまで何度も頓挫してきたが、ボルナド・リアルティー・トラストによる30億ドル(約4300億円)の投資により、ようやく大規模オフィス街に生まれ変わろとしている。その中心に位置するのが、かつての駅正面口があった場所に建つ複合ビル「2ペンシルベニア・プラザ(ペン2)」だ。

「ペン2」は時代遅れのコンクリートの外壁と狭い窓を取り払い、ガラスを多用したスタイリッシュな建物に生まれ変わった。かつて交通量の多かった一角は木々が並ぶ歩行者専用広場になり、人気の飲食店が軒を連ねている。広々としたテラスや屋上、ジム、ワークラウンジなどの施設は、同じく改装された隣接ビル「ペン1」と「ペン2」の両方に備えられている。

こうした改修は、マンハッタン全体に見られる大きな潮流を反映している。リモートワークの急増で従来型のオフィススペースの需要が低下し、新たな高層ビルを建設する資金の調達も困難になる中、ビルのオーナーは既存建物の改修に多額の投資を行うようになっている。

新型コロナ禍による在宅勤務普及でオフィススペースが空いたことをむしろ好機と捉え、ビル所有者は大規模な改修に踏み切ったのだ。ガラス窓の新設やエントランスやロビーの刷新が進み、ニューヨークの街並みも様変わりしつつある。

こうした投資はすでに実を結びつつあり、シタデルやアルファベット傘下グーグルといった企業が再開発物件でオフィススペースを確保している。一部では、新型コロナ禍前の2倍の賃料で契約が結ばれているケースもある。

「人々をどうやってオフィスに呼び戻すかが課題だった。その考えがビルの改修を加速させた」と、CBREグループの幹部メアリー・アン・タイ氏は話す。この傾向は現在も続いており、マンハッタン中心部からやや外れた地域にも広がり始めているという。

ニューヨーク市のデータによれば、外観の改修を伴うオフィスビルのリノベーションについて、500件を超える申請がビル所有者から提出されている。省エネを意識した改修には、断熱性能を高めるための外装や、二酸化炭素排出量の削減を目的とした緑地空間の導入なども含まれている。また、入居者専用の屋上ラウンジといった高級共用設備も、企業誘致の重要な要素となっている。

ただ、全ての再開発が好意的に受け入れられているわけではない。ミッドタウンのオフィスビル「1270ブロードウェイ」では歴史的な石造の外観が外され、上層階の大部分は光沢ある白い外装に変わった。最上階のアーチ型の窓も、黒く縁取られた四角い窓に置き換えられた。この改修には、SNS上で批判の声が寄せられている。

「ペン2」-1968年に建設。改修は2021年に開始、24年に完了

ボルナド・リアルティー・トラストは「ペン2」の改修に7億5000万ドルを投じた。三層吹き抜けのロビーは、歩行者専用道路に面して開放されている。

アメニティー施設には280人収容のホール、ジムやピックルボールコート、そして360度の眺望を楽しめる屋上ラウンジなどがある。

ボルナドはユニバーサル・ミュージック・グループとオフィス賃貸契約を締結。野村ホールディングスの米国部門も「ペン2」でのスペース賃貸について交渉しているとブルームバーグ・ニュースは3月に報じていた。新たな入居企業にはサッカーのプロリーグ、メジャーリーグサッカー(MLS)も含まれる。

ボルナドの幹部によれば、賃料は1平方フィート当たり60ドルから100ドルに上昇。2024年半ばには稼働率が30%にとどまっていたが、年末までに80%の入居を見込んでいるという。

「セントジョンズ・ターミナル」-1934年建設、改修は20年開始、24年完了

オックスフォード・プロパティーズとカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)は約10億ドルを投じ、かつての貨物ターミナルをグーグルがグローバルビジネス部門の本部を置くオフィスビルへと変貌させた。

れんが造りの3階建てターミナルは、路面やテラスに緑あふれるスペースを備えた12階建てのオフィスビルになった。太陽光パネルや雨水貯留システムが導入されており、全フロアにハドソン川を望むワークラウンジが設けられている。

かつては入居率の低い倉庫だった建物は、再開発中にグーグルが全フロアを賃借し、最終的には2022年に21億ドルで購入した。

原題:NYC Towers Draw Nomura, Citadel, Google With Billions in Revamps(抜粋)

--取材協力:Alicia Clanton、Natalie Wong.

(c)2025 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/13(日) 21:09

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