日経平均が史上最高値更新 日本でも欧米並みの賃金インフレが起こる?

2/25 11:41 配信

THE PAGE

 日経平均株価は22日、史上最高値を更新し、3万9000円台まで上昇しました。株高が続く米国では労働力不足に伴う賃金インフレが生じましたが、日本でもこのような事態は起こり得るのでしょうか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。

米国では「億り人」が続々と誕生、高インフレに

 米国ではコロナ期において55歳以上の労働参加率(15歳以上人口に占める働く意思のある人の割合)が顕著に低下しました。それによって人手不足感が強まり、労働市場では求職者の争奪戦が繰り広げられ、賃金が大幅に上昇しました。その労働コスト増加が価格に転嫁され、高インフレに見舞われた形です。

 そもそもなぜ55歳以上の労働参加率は低下したのでしょうか。それはコロナの直接的影響(死亡、後遺症)に加え、資産価格上昇を後ろ盾とする早期リタイアがありました。ケース・シラー住宅価格でみた不動産価格はコロナ期前(2020年1月)と比較して直近では40%以上高く、株価もS&P500種指数は2020年1月の3300近くから直近では5000を超えています。日本で言うところの「億り人」が続々と誕生し、そうした人々が労働市場から退出していったことでインフレが発生し、低所得者が割を食う皮肉な構図となりました。

高齢者の労働参加率が低下すれば人手不足は深刻に

 日経平均株価がほぼ最高値に到達した現状、日本でもこのような事態が起きるのでしょうか。そこで資金循環統計で家計の金融資産残高を確認してみると、2022年7~9月期から2023年7~9月期にかけて約100兆円の増加が認められており、その内の約8割(株式・投資信託が79兆円増加、年金・保険が2兆円増加)が株価上昇で説明可能でした。この増加傾向は現在進行形でかなり強まっていると思われます。60~65歳を過ぎても就労を継続している人々の大きな動機として老後の経済的不安があると推察されます。仮にそれが金融資産の増加によって解消・緩和されるなら、リタイアや労働時間の削減といった選択肢が浮上してくるのは自然でしょう。

 日銀短観の人手不足判断DIが空前の領域(不足超)へと低下するなど人手不足感が強まる中、これまで労働力の限界的な低下を食い止めてきた高齢者の労働参加率が低下すれば、いよいよ人手不足は深刻となります。その結果として賃金上昇率が2%を大きく超えて米国型の賃金インフレが到来する可能性も完全には否定できなくなってきました。現時点では年始恒例の「今年の仰天予想」に過ぎない確度ですが、円安と株高が一段と進行するようだと、そうした展開も少しずつ現実味を帯びるのではないでしょうか。

 日銀のマイナス金利解除を以って金融政策の正常化が終了するという筆者の予想が大きく外れ、連続利上げが実施される事態に至るとしたら、こうした人手不足に起因する非連続的な賃金上昇率の加速が考えられます。逆に言えば、それくらいしか急激な賃金上昇に発展するシナリオは考えられません。

----------------------
※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

THE PAGE

最終更新:2/27(火) 22:34

THE PAGE

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング