株式週間展望:ガイダンスリスク後退、米利下げ期待も追い風に
日経平均予想レンジ:3万4800-3万6500円
トランプ関税に対する警戒感が縮小した今週の日本株相場では、日経平均株価が3万5000円台半ばまで水準を回復した。また、日米間の協議で焦点となっていた為替に関してはこれまでのところ米側の円安是正の要求はなく、先行して売り込まれた外需株は見直されやすい状況にある。もちろん不透明感は残るが、来週はFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待もテック株や新興株の追い風になりそうだ。
<世界経済見通し下方修正>
22日に昨年9月以来となる1ドル=139円台まで突っ込んだドル・円は、その後143円台後半まで反発した。24日には日本の加藤財務相と米国のベッセント財務長官が為替分野などを協議したものの、特定の為替水準目標などの話は出なかったという。
トランプ米大統領は相変わらず円安を問題視する発言を繰り返している一方で、官製での円高・ドル安誘導の現実味は薄れつつある。こうした中で株価は、今月に入り日経平均内需株50指数に対して大きくアンダーパフォームしていた同外需株50指数が、足元でやや持ち直してきた。
トランプ大統領は中国に対しても交渉を開始していることをにおわせ、従来の強硬的な態度を緩和させた。145%まで引き上げた同国への相互関税は、大幅に引き下げられる方向だと伝わっている。また、日本は赤沢経済再生相が、5月1日に2回目の米国との通商交渉に臨む。
一方で、IMF(国際通貨基金)は22日に、今年の世界経済の成長率予想を従来比0.5ポイント減の2.8%に引き下げた。米国については同0.9ポイント減の1.8%に下方修正するなど、トランプ関税の影響の大きさを示唆した格好。ただ、これにより最悪のケースの目安が生じたともとらえられる。
<好タイミングの決算シーズン>
日本株は悪くないタイミングで決算発表シーズンを迎えたと言える。株価が不安要素をある程度先取りした上に、トランプ関税を取り巻く状況そのものが一時期より好転した。25日には中国側も一部の米国製品を報復関税の対象から除外したと伝わった。このため、慎重な新年度の業績見通しが示されても、「保守的」だと判断されやすく、悪材料視されにくい。
実際、24日に収益予想を下方修正したキヤノン <7751> やルネサスエレクトロニクス <6723> は、その後株価が上昇した。今2026年3月期の業績計画を未定としたファナック <6954> にも買いが優勢だ。来週は東京エレクトロン <8035> や村田製作所 <6981> といったグローバル製造業のほか、伊藤忠商事 <8001> など総合商社が決算を開示する。
テック株については、半導体を中心に好材料が増え始めた。台湾TSMCの堅調な業況や1.4ナノメートル(ナノは10億分の1)品の量産見通しに加えて、スマートフォンへの相互関税の適用除外や米中摩擦の緩和への期待も重なる。SOX指数が反発する中で、日本の関連株も騰勢を強めてきた。
また、FRBの利下げに関しても、24日にウォラー理事が雇用情勢次第で支持する考えを示した。早ければ2会合先の6月FOMC(米連邦公開市場委員会)での政策金利の引き下げが思惑視されており、その間に出る経済指標が悪い場合も株価は好反応を示す可能性がある。
<日経平均は5日、25日線GCヘ>
来週は日本がゴールデンウイーク前半に当たり、29日(火曜日)は祝日で休場となる。5月1日までの2日間の日程で日銀が金融政策決定会合を開くが、6-7日のFOMC同様に金融政策の変更は見込まれない。一方、展望レポートの経済・物価見通しが注目される。
海外では2日の米4月雇用統計へ向けた一連の雇用指標や1日の4月ISM(米供給管理協会)製造業景況指数を通じ、一段とFRBの利下げ期待が強まるかが焦点だ。米企業の決算もピークを迎え、トランプ関税の実体経済へのインパクトが徐々に明らかになってきそうだ。
日経平均は今週、当欄の予想レンジ上限(3万5500円)を25日に上抜いた。短期上昇の反動が想定されるものの、25日移動平均線を順調に奪回し、5日線とのゴールデンクロス(GC)が迫る。為替の動きにもよるが、来週は3万4800-3万6500円と上値追いの目線で臨みたい。
提供:ウエルスアドバイザー社
ウエルスアドバイザー
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最終更新:4/25(金) 17:42