この4月に入社2年目を迎えた新入社員は、“フォロー研修”で何を得たか?

4/18 6:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 コロナ禍での就職活動を経て、昨年2023年4月に企業・団体に就職した新入社員――「『フレッシャーズ・コース2023』を活用した自律型新入社員研修」の一環として、入社3カ月後と入社6カ月後に行われた“新入社員フォロー研修”の総決算として、今年2月に、“最後のフォロー研修”が行われた。「経験学習」を繰り返しながら、自分の「強み」や「良さ」を仕事にどう生かしていけばよいか――これまで同様に、研修会場を訪れた「HRオンライン」が、その学びの様子をレポートする。(フリーライター 狩野南、ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/HRオンライン)

● 1年目を総括し、2年目に向けて弾みをつける

 「企業・団体の新卒1年目の新入社員たちを対象に、2023年4月に行われた「『フレッシャーズ・コース2023(*1)』を活用した自律型新入社員研修」――この研修には、新入社員が内定期間中に学んだ教材「フレッシャーズ・コース2023」(以下、FC)を使用しながら学びを深める計3回のフォロー研修が設定されている。第1回は2023年7月、第2回は同年10月に実施され、その最後となる「第3回新入社員フォロー研修」が、2024年2月に都内某所で行われた。

 研修から1カ月で、23卒の新入社員は入社2年目となるわけで、今回用意されたテキストには、「社会人1年目を総括し、2年目に向けて弾みをつける」というサブタイトルが付いている。これまでの経験を振り返り、社会人2年目へのモチベーションをアップしていく研修プログラムのようだ。

 *1 「フレッシャーズ・コース」(ダイヤモンド社)は、全7巻ワンセットの新卒内定者フォロー教材。毎月1巻ずつで計6カ月間の内定者フォローが可能になっている。

 今回も、これまでのフォロー研修同様、複数の企業・団体の受講者たちがひとつの会場に集まって行う「集合型」かつ「公開型」のスタイルだった。この日は10社44人が参加し、6人ないし5人のグループに分かれたが、できるだけ多くの「初対面の相手」と知り合うために、同じ企業の社員同士は同じグループにならないようになっていた。

 開始時間の午前10時、過去2回のフォロー研修でも講師を務めた内山厳さんが登壇した。

 内山講師が「“フォロー研修”の受講は『今回が初めて』という人はいますか?」と問いかけると、半分ほどが手を挙げた。初めての参加者が多いからかもしれないが、皆が、やや緊張気味にみえる。内山講師は、受講者の緊張をほぐすように、「この研修は、リラックスして、異業種の人たちとリアルな思いを交換する場です。多様な視点を取り入れて、いろいろ話しながら学んでいきましょう」と、柔らかいトーンで語りかけた。自己紹介をし合い、いまの気持ちを共有する「チェックイン」など、語り合う時間が増えるうちに、受講者は少しずつ、お互いに打ち解けてきた様子だ。

 まず、「FC」の付録「コミュニケーション・ペーパー(*2)」内のページのコピーが受講者たちに配られた。「コミュニケーション・ペーパー」とは、内定期間中に、人事担当者と内定者がコミュニケーションを図るためのツールで、「FC」の内容に沿った設問に内定者が答えるかたちで構成されている。第2回のフォロー研修では、「入社後にしたいこと、身につけたいこと」を受講者が記したページのコピーが配られたが、今回は、「FC全巻を読んで印象に残った言葉を用いて、入社から1年たった未来の自分に書いた手紙」のコピーが用意された。その“自分への手紙”を再読し、さらに、それらをグループ内で閲覧することで、活発な意見交換が行われていく。単に1年前の自分の思いを振り返るだけではなく、他者の意見を聞くことで、現在の自分の立ち位置がつかみやすくなるのだろう。社会人1年目を総括するにあたって、とても効果的な導入だと、私は思った。

 *2 「フレッシャーズ・コース」は、巻ごとの課題に即した「コミュニケーション・ペーパー」が付録になっている。その「コミュニケーション・ペーパー」のやりとりで、人事担当者(採用担当者)は、内定期間中に内定者と交流が図れる。

 併せて読みたい!
新卒社員の入社6カ月研修レポート(「HRオンライン」2024年1月25日配信)

 入社から6カ月時点の“23卒新入社員の成長”を研修から読み取る

 「モチベーションアップ、離職防止」というテーマで行われた第2回のFCフォロー研修(2023年・秋開催)。あらゆる企業の、さまざまな職種に就く、入社半年の新入社員たちが一堂に会して行われた研修の模様を「HRオンライン」がレポートする。

● “異業種の相手”だからこそ出てくる質問も…

 導入パートであるオリエンテーションの後は、「経験学習」について学ぶ。「経験学習」は、FCに掲載され、これまでのフォロー研修でも復習してきたテーマだ。まず、経験を自分の力にするための「経験学習サイクル」、そして、「経験学習サイクル」を阻む「3つの壁」について学び、その後、今回の研修テキストに書かれている「経験から学ぶための5つの要素」について、2~3人で意見交換を行った。

 次に、入社時の4月から現在(2月)までの自分のキャリアを時系列で振り返る「時系列チャート」の作成。主な出来事を振り返りながら、どのような経験が自分にとって大きな意味を持っているのか、また、それぞれの経験における「モチベーション」を高低で示し、何に影響を受けているのかを考えてみるというワークだ。最初に個人で書き込みをした後、先ほどとは違う相手と、お互いの時系列チャートについて対話していく。

 「できるだけ違う業種の人と組んで、自分の仕事を説明するつもりで話してみましょう」と、内山講師が呼びかける。仕事内容を知らない相手に分かりやすく丁寧に説明することは自分自身の仕事の再確認につながり、異業種の相手だからこそ出てくる質問も良い刺激となるのだろう。グループワークの終了後、これまでの学びについて感じたことや疑問などを各自が無記名で付箋に記録し、机の上に貼ってから10分間の休憩となった。

 休憩時間中に私の目を引いたのは、自分のノートPCを会場に持ち込んで仕事をしたり、電話対応したりする受講者の姿だった。これまでのフォロー研修時には見られなかった光景だ。もはや、新人ではなく、一人前の社員として仕事をしている様子に、約1年間の成長の姿が感じられ、頼もしく見えた。

 休憩後、付箋の内容を読んだ内山講師が、「『モチベーションの上げ方を知りたい』など、モチベーションについて書いている人が多かったですね」と、語りかけた。続けて、「モチベーションは、『人』との関係で上下することが多いです。どんな相手と一緒に仕事をするかでも変わってきます」と解説する。研修テキスト内の「経験から学ぶための5つの要素」の中にも、「つながり」という項目があり、自分の成長を支援してくれる他者との適切な関係が大切だと書かれている。

 「経験学習は、待っているだけでは得られません。自ら工夫していく姿勢が大切です」(内山講師)

 自分が成長できるような環境を、自分のできる範囲でつくっていくこと――それが、モチベーションのアップにつながっていくのだろう。

● 新入社員の頭の中がだんだん変化している

 午前中最後のワークで取り入れられたのは、「WPL(*3)」診断だ。「WPL」は「Work Place Learning」の略で、職場の育成力と個人の成長力を可視化するための診断だ。受講者たちはその診断のためのテストを事前に受けていた。第1回のフォロー研修では「DIST(*4)」というストレス耐性テストを、第2回では「DPI(*5)」という職場適応性テストを研修に取り入れていたが、今回の「WPL」にはどういう意図があるのか――研修後に、内山講師に尋ねた。

 「1年目が終わろうとしているこの時期に、WPLでの診断結果から“成長”の現状を自分自身で把握し、2年目に向けての仕事への姿勢を考えてほしいという意図です。DISTとDPIもそうですが、フォロー研修の運営会社の強みであるテストが、現状を見る指標の一つになっています」(内山講師)

 *3 「WPL」(ダイヤモンド社)は、現場における人材の成長と学びの環境を「見える化」するもの。現場の学び力を向上させ、人材の成長を促進することをねらいとしている。
*4 「ストレス耐性テスト DIST」(ダイヤモンド社)は、仕事をする上で直面するストレス原因を4つに分類し、それらに対する耐性を受検者の普段行動から測定する。また、発生したストレスを受検者がどのように解消しようとするかの特徴を詳らかにする。
*5 「職場適応性テスト DPI」(ダイヤモンド社)は、仕事への向き合い方や他者への態度、組織への順応など広い範囲をカバーしているテストで、採用場面でのスクリーニングや受検者の特徴を広く理解することに適している。

 まず、研修テキストに沿って、「『仕事を通して成長できたことを実感しているか』という経験学習の成果に関連する7項目」と、「『仕事を通して成長しやすい特性を持っているか』という経験学習のプロセスに関する7項目」についての自己チェックを行い、その後、事前に受けたテストによる評価が記載された「診断シート」が各自に配られた。そして、自己評価とのギャップが明らかになったところで、グループでの対話がなされた。「結果に違和感があったら、そのこともしっかり考えましょう」と内山講師。評価の高低ではなく、ギャップも含めて自分の現状を知り、今後の成長に生かすことが重要なようだ。

 内山講師から、研修受講者全体の平均的な傾向について解説があり、さらにもう1枚、別のシートが配られた。「『仕事を通して成長しやすい特性を持っているか』という経験学習のプロセスに関する7項目」を、各受講者それぞれの上長が評価したものだ。前回のフォロー研修でも、「DPI」診断の項目を上長が評価したシートが配られるというサプライズがあり、会場内が盛り上がったが、今回も、受講者たちはやや興奮した様子でシートを手に取り、熟読し始めた。自己評価だけではなく、他者からの評価を知ることで、よりはっきりと自分の現状が見えてくるはずだ。再び、グループで意見の交換を行い、WPL診断で得た学びを付箋に書いたところで、お昼休憩となった。

 1時間休んだ後、受講者たちは他のグループのテーブルを回り、みんなの付箋を見ていく。上長のメッセージを励みに思うコメントもある一方で、WPL診断の項目にある「キャリアデザイン」への疑問をつづった付箋も見受けられた。内山講師がこれまで話してきたフレーズに、「頭の中の変化を研修後に(仕事で)使う」というものがある。疑問が生まれるのも、新入社員たちの頭の中が変化している証しだろう。経験から学ぶ力を、彼ら彼女たちが身につけてきているように私には思えた。

● 後輩に向かっての“フィードフォワード”とは?

 午後は「1年目の総括」に入った。最初に、この1年でそれぞれの職場において「評価されたこと」「注意されたこと」を各自で書き出し、グループで対話する。その後、2つ以上の「評価された行動」「注意された行動」と、「なぜ、評価・注意されたのか」「後輩へのアドバイス」をワークシートに書き、内山講師から、「これまでとは違う組み合わせでグループのメンバーを半分に分け、『話し手』『聞き手』『書記』に役割分担をしてください」という指示があった。Aさんの話をBさんが聞き、Cさんがワークシートに記入して、Aさんがそのワークシートを自分のものとして提出する――つまり、お互いのワークシートを交換して記入していく仕組みだ。研修終了後に、内山講師にそのねらいを尋ねた。

 「この方法では、自分で書く必要がなく、話せばよいだけなので、本人の負荷が下がります。その分、書記役の負荷は高くなりますが、話し手のために責任を持って書こうとするため、内容が深まるのです。自分で書くと、『これくらいでいいかな……』と手抜きをしてしまうこともありますが、他の人のワークシートだと、『記入欄をもっと埋めてあげよう』と考え、相手への質問も多くなります。役割を分担することによって、コミュニケーションの活性化も図れるのです」(内山講師)

 また、「後輩へのアドバイス」を語ることも、社会人1年目の総括をするうえでの “仕掛け”になっているという。

 「自分の経験をもとに、後輩にどんなことを言えるのかを考えることで、自分自身を客観視できるようになります。視点をずらすことによって、振り返りがしやすくなるように、研修のプログラムを設計しました。各グループの様子を見て回りましたが、生き生きと自分のエピソードを話している受講者が多かったですね。まさに、後輩に向かっての“フィードフォワード”をしているようでした。2年目に向けての準備がきちんとできているのではないかと感じました」(内山講師)

 次に、「この1年で自分自身が変化したこと」を、「考え方」と「行動」から挙げていった。どのグループも対話が途切れることなく時間を進めていく。受講者一人ひとりに、多くの「気づき」がもたらされているようだった。

● フォロー研修の最後は、アクションプランの作成

 研修も最終盤を迎えた。課題は、「強み中心のアプローチ」――「強み中心のアプローチ」は、生産性や業績に影響を与えると報告されているという。

 「『(自分の)強み』は、実感していない人が意外と多いものです。しっかり認識して、伸ばしていきましょう」と、内山講師。「強みを伸ばす3つのアプローチ」について学んだ後、今日のグループワークから感じた「自分とメンバーの強み」をそれぞれが考えることになった。まず、グループ内の自分以外のメンバー一人ひとりにキャッチフレーズをつけるワークだ。内山講師が「例えば、『○○さんは、アイデアの宝石箱』のようなフレーズです。できれば、本人が気づいていないような『良さ』に着目しましょう」と説明する。付箋には、記入者である自分の名前を書き、相手の名前は書かず、それが誰のことを指すのかをみんなで当てるという。キャッチフレーズを瞬時に考えるのは難しいのではないかと私は思ったが、受講者たちはスラスラとペンを走らせていた。

 次に、自分の「強み」と「良さ」を考える。「この研修で発揮したと感じるもの、日々使っているもの、あるいは使えずにいるものを書き出してみましょう」と、内山講師が促していく。

 それから、キャッチフレーズの共有時間になった。一人ずつ順番に、自分が書いた付箋を並べていき、他のメンバーが「いっせーの、せ!」で誰に向けて書いたものかを当てる。当たってうれしそうな顔もあれば、「全然分からない」と悔しがる声もあり、ゲーム感覚のワークに、受講者たちは大いに盛り上がった。メンバーが指摘してくれた、自分が気づいていない「(自分の)良さ」をどう生かすか……それを考えていくことが仕事での成長につながるのだろう。

 研修プログラムの最後は、アクションプランの作成だった。これまでのフォロー研修でたびたび言及されてきた「なって良かった自分」になるためのプランをつくっていく。

 そうして、研修を終えるにあたって感じていることを一人ずつ軽く話す「チェックアウト」を経て、第3回のフォロー研修はすべて終了となった。

 改めて、内山講師に研修を振り返ってもらった。

 「最初はとても静かでしたが、新入社員同士で話し始めたら、コミュニケーションの機会を待ち望んでいたかのように、自然に対話が弾んでいきました。私は、話す材料を渡しただけで、特に何も仕向けていません。個人で取り組むワークの集中力も高かったですね。みんなの学習意欲が高く、研修をかなり好意的に受け止めていると感じました」(内山講師)

 解散後も、多くの受講者たちはその場に残り、名刺交換をしたりしながら言葉を交わしていた。内山講師はその光景を見て、「1年間の経験を踏まえて、異業種の人と語り合いたい、刺激を受けたいという気持ちがあるのでしょう。経験してきたからこそ話すことがあって、対話の中で自分の考えがさらにまとまり、仕事に対して前向きになっていくはずです」と語った。

 「日々の仕事の中では、理不尽なことやコントロールできないこともあります。その中で、自分がコントロールできることを焦点化し、『なって良かった自分』を目指してほしいです」(内山講師)

 フォロー研修を通して、多くの学びを得た新入社員たちは、それぞれの職場で2年目を迎え、力を増していくことだろう。彼ら彼女たちの背中を見送りながら、私はそう思った。

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最終更新:4/18(木) 6:02

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