いよいよ金利上昇、日本の財政は崩壊するのか、「マイナンバー銀行口座紐づけ」の真の目的は?

4/18 5:02 配信

マネー現代

日本の財政には「持続可能性」が乏しい

(文 大原 浩) 2年半ほど前、2021年10月公開「日本は外国に借金していないからデフォルトしないというのは本当か?」を執筆した頃には、MMT論者を中心に「政府(中央銀行)はいくらでもお札を刷って構わない」という詭弁がまかり通っていた。

 だが、昨年12月15日公開「いよいよ金利上昇が本格化! 変動金利の日本で住宅ローン、不動産はこうなる」で述べたように、過去の「超金融緩和」の時代が終わり、いわゆる「金利のある世界」がやってくるのは明白だ。

 過去、日本の財政問題がそれほど騒がれなかったのは、「超金融緩和」によって国債などの利払いの金額が低く抑えられてきたからである。

 だが、その低い国債金利を維持することはもうできない。日本経済新聞 4月5日「国債利払い、上振れ8.7兆円 金利1%上昇なら」と伝えられる。副題「財務省、33年度試算 防衛費を上回る規模」と巨額だ。

 だが、今後の金利上昇が「たったの1%」で終わるはずがないだろう。4月17日公開「大統領選が終わるまで日本は『利上げ』を本格的に出来ない!」で述べたように、金利が低下するときが極めてゆるやかであるのに対して、金利が上昇するときには爆速・強烈であるのが歴史の示すところである。

 もちろん、2022年1月27日公開「金利上昇は待ってはくれない、そしていつかバラマキへの審判が下る」冒頭「家計にも国家にも大打撃」で述べたように、「大原浩の逆説チャンネル<第14回>不動産価格はどうなる。『高層マンション』の絶望的な末路、変動金利は恐ろしい」のような「(変動金利ローンを借りている)個人・家計への打撃」は大きい。

 しかし、日本の借金を1200兆円(前記記事執筆以降さらに増加し、日本経済新聞 昨年5月10日「国の借金1270兆円、過去最大を更新 コロナ対策で」)とすれば、金利が1%上がるだけで単純計算で12兆円、5%なら60兆円の利払いが増える。

 2022年3月からの米FRBの利上げのスピードを考えても、「5%の金利上昇」というものは1~2年で十分起こりえる。

 実際にはもっと厳しい状況になるかもしれないが、5%程度の金利上昇であっても、年間おおよそ60兆円もの利払いが増える。日本の税収が70兆円程度であることを考えれば、日本の財政の「持続可能性」は風前の灯だと言える。

 しかも、2022年11月21日公開「健康保険と『国営ねずみ講』の年金を『第2税金化』で維持に必死の日本政府」の副題「金利が上昇すればどうせ破綻する」のとおりである。健康保険も年金も、実のところ保険料だけでは運営不能であり、血税から多額の補填を受けてやっと生きながらえている。

 その補填を行っている財政に持続可能性が見いだせないのであるから、年金・健康保険も「道連れ」にならざるを得ない。

 しかも、高齢化で年金支払い、医療費共にこれから増加することが明らかなのだ。

たぶん国債の(実質的)日銀引き受けを行うであろう

 それでは、日本政府はこのような危機にどのように対応するであろうか。

 結局「日銀に(売れない)国債を引き受けさせる」可能性が高い。

 だが、1932年に始まった国債の日銀引き受けは、当時、現在のMMT論者のような人々から高い評価を受けたものの、戦後(ハイパーインフレによって)国債が紙屑になるという結果をもたらした。

 その反省の結果が財政法第5条である。日本銀行は政府の発行する国債を直接受け入れる、いわゆる「国債直接引き受け」を原則禁じられているのだ。

 建前上、 現在日本銀行が取得する長期国債は、銀行から入札方式で買い入れているもの(国債買いオペ)であり、直接引き受けではないとされる。

 確かに形式上はその通りだが、「実質的」にはどうであろうか。現在のところ、日銀の国債買いオペは一定の節度が保たれている。しかし、財政が危機的状況になった場合、日銀がなりふり構わず国債買いオペを行えば、「実質的な国債の日銀引き受け」になるのではないだろうか。

 このシナリオが、政府にとって最も安易な解決方法である。ただし、そうなればハイパーインフレの到来は避けられず、国民は大いに苦しむことになるのだ。

ハイパーインフレのまま時を待つのか?

 終戦直後の預金封鎖・財産税のような「国民の財産権を侵害するような『暴挙』」は、基本的に「日本国憲法」の施行以前に行われている。必ずしも「大日本帝国憲法」に照らし合わして「違憲」とは言えなかった。

 しかし、日本国憲法第29条の第1項で「『財産権』はこれを犯してはならない」と規定されているにも関わらず、「預金封鎖・財産税」の可能性がいまだに語られる。それは、第2項「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」という条文が曲解され、政府の横暴によって「財産権」が骨抜きになる可能性があるからだ。

 特に、前記のように「(実質的)日銀国債引き受け」によって終戦後のようなハイパーインフレが起これば、「日本政府が『違憲』など考慮せず」に、「預金封鎖・財産税と『同じような行為』」に及ぶ可能性は否定できないと考える。

 問題は財政赤字だけではない。朝日新聞 4月5日「NY原油、5カ月半ぶり高値 日米で株大幅下落 中東情勢悪化の懸念」と伝えられる。この原油価格上昇は、昨年10月13日公開「世界は21世紀の『オイルショック』に向かっている~バレル500ドルもあり得るか」という動きの単なる「序章」にしか過ぎないと見ている。

 世界的に「インフレは終わった」とのムードが漂い、米国では「利下げ」が論じられるがとんでもない考え違いである。

 エネルギーだけではなく、食料問題も含めて、2023年9月9日公開「再び猛威を振るうインフレの『第2波』、世界のアンカー=錨、日銀が利上げに踏み切るとき」、1月29日公開「『第3次オイルショック』の足音、そして、『インフレ第2波』が確実にやってくる」で述べた「インフレ第2波」はすでにやってきているといえよう。

 そして2022年1月31日公開「今度のインフレはものすごく強烈で悲惨なものになるかもしれない」との見込みが、現実のものになる可能性がさらに高まっている。

 前記記事副題「デフレが世界の生産能力を破壊したから」で述べたように、世界的に長く続いた「デフレ経済」で、社会構造そのものが「デフレ対応型」に変化してしまった状態でやってくるインフレが「破壊的」になることは想像に難くない。

現在は戦後の特殊な状況ではないが

 すでに述べたように、戦後「預金封鎖・財産税」という暴挙が行われた際には「大日本帝国憲法」がまだ有効であった。また、日本は敗戦によってGHQに占領(要するに一種の植民地化)されていた。

 だから、「日本国民の財産権」も容易に侵害できた。だが、現在我々は日本国憲法によって守られている(ただし、それでも盤石ではないことはすでに述べた通りだ)。

 にもかかわらず、私が「何らかの形で国民の財産権が侵害される可能性がある」と考えるのは

 1. これまで述べてきた年金・保険を含む「財政の危機的状況」
2. 政府が必死になって「マイナンバーと預金の紐づけ」を推進している

 ことが理由である。

 1についてはすでに解説したが、2については、終戦後の「預金封鎖・財産税」がどのような手順で実行されたのかを振り返るとよくわかる。

 まず、新円切替は、1946年2月16日夕刻に、幣原内閣が発表した。翌17日には預金封鎖が行われたから、日本国民は政府の「暴挙」に対抗するための時間が全くなかったのだ。この点が重要である。

 政府の「暴挙」に対して国民が抵抗した結果、「預金・資金が流出」して政府がその動きを把握できなくなれば、「財産税」による「国民の財産権への侵害」も事実上の「未遂」に終わってしまうからだ。

 この点については、ソブリンパートナーズ「預金封鎖は起きません!!」が参考になる。

 すなわち、現在の日本国憲法を「適正に解釈」すれば、国民の財産権を侵害する行為はできない。また、前記憲法第29条第2項を曲解し何らかの大義名分を掲げたとしても、(効力を停止している法律を再開する場合でも)「国会の議決」は最低限必要である。

 したがって、その間に国民が「預金封鎖・財産税」の施行の可能性を知ることとなり「抵抗運動」で大混乱となるから、実行がむずかしいということである。

 もちろん、憲法を修正することは不可能ではないが、その時点で国民は政府の意図を知ることとなる。

マイナンバー封鎖

 つまり、戦後行ったのと同じ方法では「預金封鎖・財産税」の実行は困難だ。しかし、私が非常に警戒しているのが「マイナンバーと銀行口座の紐づけ」である。

 これは、実質的に「預金封鎖」と同じ効果をもたらす。例えば、国会の議決で「財産税の賦課」が決まったとしよう。審議の過程で多くの国民が「抵抗運動」を起こし資金が流出することが予想される。しかし、「マイナンバーと銀行口座の紐づけ」が完了していれば政府はそのようなことを意に介する必要が無い。

 紐づけられた銀行口座の資金移動の履歴をマイナンバーによって簡単に把握できるから、いつでも課税できる。我々国民は逃げようがないということである。言ってみれば「マイナンバー封鎖」だ。

 注意しなければならないのは、「マイナンバーの銀行口座紐づけ」と「マイナンバーカードの普及」とは目的が違うことである。

 前者は財務省を中心とした「場合によっては『憲法違反』の『国民の財産権の侵害』さえ意に介さない」であろう人々の「最終目標」である。

 後者は、共産主義中国並みの「監視社会」を目指す政治勢力が躍起になって広めようとしている。

 この問題については、昨年7月7日公開「マイナカードで大混乱のデジタル庁は生産性、品質管理で『遅れている』IT業界よりさらに四半世紀遅れている!?」。昨年6月17日公開「マイナンバーカードは新たな『税金』徴収に都合が良い、これが政府がこだわる理由」、2022年11月9日公開「マイナンバーカードは、いつか来た道『財産税』取り立てが目的か?」、2018年11月30日公開「政府主導のキャッシュレス社会は『デジタルファシズム』の前触れだ」などを参照いただきたい・

 「銀行口座との紐づけ」=「国民の財産の捕捉」である。現在勅令による預金封鎖はできないが、マイナンバーそのものは合法であり、紐づけも同様だ。この準備さえできれば、一気に「違憲」である「国民の財産権の侵害」を行うことなど簡単だ。

 すでに、朝日新聞 2月10日「マイナンバーと口座情報の自動ひもづけ まずは年金受給者から」のように、「拒否しなければ、マイナンバーと預金の紐づけを『勝手に行う』」動きが出ている。

 いよいよ「Xデー」が近づいてきて政府が必死なため、このような「無茶なこと」が行われるのであろう。

 「老後のためにコツコツとためてきた資産」などに対する『財産権の侵害』を受ける側の国民は、政府の動きを注視しなければならない。

マネー現代

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最終更新:4/18(木) 9:26

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