IDでもっと便利に新規取得

ログイン

三菱電機の株主総会で漆間社長が薄氷の再任「賛成率58%」が示す品質不正の傷痕

7/7 5:01 配信

東洋経済オンライン

 まさに「薄氷の再任」だった。

 全国の事業所で品質検査の不正が見つかっている三菱電機。その定時株主総会が6月29日に開かれた。今回は不正発覚後初の総会となっただけでなく、不正問題を機に経営トップとなった漆間啓社長の信任が問われる場でもあった。

 その審判は厳しいものだった。漆間社長は取締役に再任されたが、賛成率は58.46%。専務執行役だった2021年から約38ポイントも急落した。

 取締役として選ばれるには、総会で株主の過半数の賛成を得ないといけない。賛成率が6割を切るのは当落線上、いわばギリギリの数字だ。

■上場企業の社長の中で2番目の低さ

 東洋経済では毎年、全上場企業の取締役の総会賛成率を随時集計している。7月4日時点のデータでみると、各社長の中で漆間社長の賛成率58.46%は、IT関連企業・ガイアックスの上田祐司社長(54.40%)に次ぐワースト2位。時価総額が1兆円を超す大手の中でワースト1位となる。

 直近1年で何らかの不正を起こした企業に絞っても、漆間社長の賛成率は低い。エンジンの検査不正が発覚した日野自動車の小木曽聡社長は66.59%、樹脂製品の第三者認証取得で不正のあった東レの日覺昭廣社長も63.67%となっている。

 この結果を三菱電機はどう受けとめているのか。

 賛成率が低いことについて、「品質不適切行為について責任があるという認識のもとに、議決権の反対行使がなされたケースがあると認識している」(三菱電機・広報部)。

 漆間社長は、不正の起きたFAシステム事業本部や社会システム事業本部で2015年以降に担当執行役を務めている。三菱電機は他社で起きた品質不正問題を機に2016年度から3回、一斉点検を行った。にもかかわらず問題の発見を怠り見逃した責任が当時の執行役にあるというわけだ。

 そのうえで、品質風土や組織風土などの諸改革を「漆間のリーダーシップにより強く推進している」(広報)と理解を求めた。

 3時間に及んだ三菱電機の株主総会が終了した直後、都内ホテルの会場から出てきた年配の男性株主は、心配げな顔でこう口にした。

 「きちんと説明しようという経営陣の姿勢はみられた。でも、株価の回復と違って、失った信頼や信用を早期に取り戻すことは難しいのでは」

 漆間社長の賛成率が低かった理由は、この株主の感想に集約されている。とくに株主からすると、一度裏切られているとの思いが強い。

 一連の不正発覚の発端となったのは、長崎製作所の鉄道車両向け機器での検査不正だが、それを発表したのは2021年6月30日だった。前日の定時総会では何ら言及がなかった。株主を驚かせた不意討ちのような昨年の発表について、今年の総会では出席株主から指摘があった。

■「危機管理意識が希薄だ」

 「当時は安全性を含め事案の全容を把握し、まずはお客さまに説明・ご理解いただいたうえで社会の皆さまに説明するのが適切と考えた。結果として、情報開示姿勢に不信感を招くことになった」。CFOである増田邦昭常務執行役はそう釈明した。だが納得できない株主からは、「危機管理意識が希薄。会社の信頼をものすごく毀損した」との声があがった。

 総会前に出された事前質問への回答に不満を述べた株主の発言からも、失われた信用の大きさが見てとれた。

 「(株主からの質問に対し)『この程度の回答でいい』と取締役会で判断していたのであれば問題ではないか。不正問題はお客さんがこれくらいの検査やってくださいと決めていたのに、コストがかかる、安全性には問題ないからと判断して起きた。同じような意識が取締役会にもはびこっているのであれば、(不正問題を受けて)真摯に対応していくと言っているのも嘘になる」

 今回の総会のやりとりも含めて、三菱電機の対応からそこはかとなく感じるのが「甘さ」だ。株主はその甘さを指弾しているのではないか。

 2021年7月、不正問題の実態解明を目的に、西村あさひ法律事務所の木目田裕弁護士を委員長とする調査委員会が設置された。調査委は2022年5月に3回目となる中間報告を公表。不正件数は累計で148件となっている。

 このうち意図的に行ったものは66件だが、不正の多くは「自分たちの製造ラインの採算を維持・向上させるためという人たちが圧倒的多数」(木目田委員長)。そうした理由から、木目田委員長は「悪質性」という言葉を使うことには否定的だ。

■ステークホルダーを納得させられるか

 漆間社長も同様のスタンスで、中間報告を受けて開いた会見では悪質性についての言及を避けた。確かに、報告書を読む限りにおいて不正を行った従業員らに悪意はない。ただ件数は少ないものの、悪質といっていい事案が散見された。

 例えば三田製作所(兵庫県)の不正だ。試験プログラムでつねに「合格」と表示されるモードが存在し、顧客の監査時に使用されていた。不合格が出ると追加対応を求められたり、顧客側でも仕様の再検証が必要になることから、そうした問題を回避するために作ったという。つねに合格と表示されるモードは、製品の量産時は使用しないので品質に問題ないと担当者は正当化していた。

 調査委員会は2022年秋までに調査を終える予定だ。ガバナンス体制全般の検証を行っている「ガバナンスレビュー委員会」(委員長は山口利昭弁護士)も報告を出す。不正がはびこる体質を改め、株主や社会をどこまで納得させられるか。「50%台の賛成率」を前に漆間社長は問われている。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:7/7(木) 7:04

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング