IDでもっと便利に新規取得

ログイン

沖縄で初めて行われる「野球・冬リーグ」の可能性、ジャパンウィンターリーグが選手の未来を拓く

7/2 8:31 配信

東洋経済オンライン

 6月14日、沖縄県那覇市のリゾートホテルで「ジャパンウィンターリーグ」設立の記者会見が行われた。

 このリーグは11月25日から12月24日までの約1か月をかけて、6チーム最大120人の選手がリーグ戦を行うというものだ。選手たちは参加費を支払って参加し、沖縄県内の4つの球場での各22試合を戦う。

 これは日本で初めて行われる本格的な野球のウィンターリーグだと言ってよい。

 野球のオフシーズンに温暖な地に選手が集結し、期間限定のチームを編成してリーグ戦を戦うウィンターリーグは世界各地で行われている。

■世界各地では本格的なウィンターリーグが行われている

 もっとも大規模なものが12月から翌年1月にかけて、ドミニカ共和国、キューバ、ベネズエラ、メキシコ、パナマ、プエルトリコの6か国で行われる「カリビアンシリーズ」だ。MLBの後援で行われるこの大会は、6か国でリーグ戦を行い、その勝者がラテンアメリカの王座をかけて争う。現役のメジャーリーガーやFA選手も集結。多数の観客が集まる。

 またスカウトも視察にやってきて、入団が決まることも多い。日本からはDeNA時代の筒香嘉智などが球団の許可を得て参加した。アメリカでは他にも様々なレベルのウィンターリーグが行われている。

 アジアではコロナ禍前の2019年まで台湾プロ野球(CPBL)が主催して、「アジアウィンターリーグ」が行われていた。日本からはNPBが「イースタン」「ウェスタン」の2チームを編成、社会人野球(JABA)のチームも参加。台湾プロ野球(CPBL)、韓国プロ野球(KBO)も参加して台中、斗六などの球場で1か月にわたってリーグ戦が行われた。若手中心ではあったが、台湾では試合の模様が詳細に報道された。

 オリックスの吉田正尚、ヤクルトの村上宗隆など、このリーグでの活躍がきっかけとなって翌年以降台頭したケースもあった。

 またオーストラリアにはMLBが出資しているオーストラリアン・ベースボールリーグがあるが、これもウィンターリーグの一つだ。2023年11月には日本選手を主体としたチームの編成に動いている。

 ジャパンウィンターリーグは先行するウィンターリーグとは参加選手、目的がやや異なっている。

 参加資格はアマチュア選手に限定される。NPBや独立リーグに所属したプロ選手は参加できない。高校、大学、社会人の野球選手、元選手。学校在籍中の場合、「退部届」を出し、学校側が承認していることが前提となる。社会人在籍中はチーム、会社側の承認が必要だ。選手は海外からも募集する。ただし海外の場合はプロ野球チームに在籍していた元プロ選手も参加が可能だ。参加費は以下の3プランだ。

プラン①
日程: 11/24~12/25 (全日程)
価格: 35万円+税
※一次申し込み 8/31 まで 30万円 税抜き
※沖縄在住(沖縄県に在住していることが証明できる人のみ) 20万円+税
プラン②
日程: 11/24~12/8 (前半日程)
価格: 20万円+税
※沖縄在住10万円+税
プラン③
日程: 12/9~12/25 (後半日程)
価格: 20万円+税
※沖縄在住10万円+税
 球場は宜野湾市のアトムホームスタジアム宜野湾、沖縄市のコザしんきんスタジアム、浦添市のANA BALL PARK浦添、読谷村のオキハム平和の森球場を使用。いずれもNPB球団が春季キャンプで使用する一級の球場だ。

 ホテルは宜野湾市のラグナガーデンホテルの予定。目の前には試合で使うアトムホームスタジアム宜野湾が広がっている。ただし1室を数人で使用する。

■NPB球団に入ることはできないが・・・

 リーグ事務局は、NPBや独立リーグの各球団のスカウトに声をかけている。また海外のリーグや球団にも呼び掛けている。試合はネットでの配信を予定している。さらに選手の評価を定量化(スタッツ、トラッキングシステムでの数値データ、動画解析)し、各球団に提供するので、視察ができなくてもリモートでスカウティングが可能だ。

 ただ12月は、NPBのドラフトが終了している。日本の高校、大学で野球をした選手はドラフト以外でNPB球団に入ることはできない。つまりこのウィンターリーグで活躍しても、翌年10月のドラフトで指名される以外にプロ入りする可能性はない。ただし外国人選手は契約に結び付く可能性がある。

 独立リーグは10月以降、各地でトライアウトを行っているが、ジャパンウィンターリーグで活躍すれば提携する独立リーグ球団への「進路」は十分に拓けるだろう。さらにJABA(日本野球連盟)とも連携して、社会人野球選手になる道も整備するという。

 一般的なトライアウトは、1日限りであり、投手は数人の打者に投げるだけ、打者も3~5打席程度打席に立つだけだ。スカウトはその結果と選手の「実績」をもとに査定して採用の可否を判断する。

 ジャパンウィンターリーグの場合、参加費を支払う選手は出場機会が保証されている。打者の場合、少なくとも50打席、投手も20イニング程度か。最初は調子が上がらない選手でも、期間のどこかでいいところを見せることは可能だ。そういう意味ではアピールの機会は格段に増えるはずだ。

 しかしながらトライアウトはプロ、アマ、あらゆるレベルで極めて「狭き門」だ。NPBの12球団合同トライアウトの合格率は概ね5%、独立リーグでも数%だ。いろいろな団体のスカウティングがあるとしても、120人のうち直接進路に結び付くのは1割程度だろうか。しかも日本人選手の場合、NPBに直接結びつくことはない。最大35万円を支払う「対価」としてはやや厳しいのではないか? と言う疑問もわく。

 ジャパンウィンターリーグの発案者であり主催者である株式会社ジャパンリーグの鷲崎一誠代表は30歳。

 佐賀西高校で野球をして慶應義塾大学に進むが、4年間1試合も出場することができなかった。4年秋シーズンを終えて悶々としていたが、アメリカでのウィンターリーグに参加した。今回と同様リーグ戦形式のトライアウトだった。

 鷲崎氏は記者会見で「ここでアメリカ人の剛速球のピッチャーから逆方向にホームランを打つなど、活躍することができ、すごい自信になり活路が見いだせました。私のような境遇の人は、日本、世界にたくさんいると思います。そういう選手にチャンスを与えたい」と企画意図を語った。

■参加することに価値のあるウィンターリーグ

 夢を諦めきれない選手たちに「野球を思い切りする」場を提供するというのだ。つまりこのトライアウトリーグ参加すること自体に「価値」があるということだ。

 このリーグのアンバサダーに就任した、元ダイエー・ソフトバンクの沢村賞投手、斉藤和巳氏は「僕は、プロ野球でケガで苦しみ、大変な時間を過ごしてきたという思いがあるので、この先の野球人生、そして野球を辞めた後の人生を模索し、何かを感じてもらえるような時間であってほしいと思う」と述べた。

 ジャパンウィンターリーグのもう一つの大きな意義は「地元振興」だ。沖縄は日本有数の観光地ではあるが、日本の他地域で野球をやらない12月に、1か月に及ぶ「野球イベント」という新たな盛り上がりを作ろうとしている。地元の期待感は大きく、会見には宜野湾市市長、議長、読谷村関係者、地元企業の関係者なども出席、全面的な支援を表明した。

 沖縄県の主要な球場は2月のプロ野球春季キャンプに向けてグラウンドを整備する。12月になれば芝の養生のために、プロ野球選手の自主トレ以外には球場を使用させないことが多いのだが、鷲崎一誠代表は地元関係者と共に球場を所有する自治体を説得し、使用許可を得た。そしてこのリーグのGMには、沖縄水産時代、甲子園の優勝投手で元巨人、ダイエーの大野倫氏が就任した。

 「最近、沖縄のスポーツ界はバスケットボール、サッカー、ハンドボール、卓球など非常に盛り上がっている。野球界もこれに続きたい。可能性しか感じない、全力で協力したい」と語った。大野氏は記者団の質問に答える形で「NPBのファームが1チームを編成して参加してもよい」と個人的な意見を述べた。

■30歳リーダーの行動力

 この会見は、元フジテレビアナウンサーの田中大貴氏が司会進行をする豪華版だった。田中氏は鷲崎代表の慶應義塾大野球部の先輩にあたる。

 「今年2月の沖縄春季キャンプで鷲崎君を紹介されました。構想を聞いて大きな話だな、と思いましたが、私の立場では、選手たちにウィンターリーグに行きたいって思ってもらうためにはどうするか?  行った後何が起きるんだ?  ということをしっかりと伝えていくことが大事かな、と思っています」と語った。

 筆者は今年になって数多くのプロ、アマの野球関係者に会ったが、多くの人の口から「鷲崎君がこんな話を持ってきたよ」と聞いた。年齢は関係ないのかもしれないが、30歳の若きリーダーの行動力は恐るべきものだ。

 改革の機運こそあれ、アメリカに比べて遅々として変化が進まない日本野球界にあって「野球のダイバーシティー」はこんな若者が実現するのかもしれない。今後も追いかけたい。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:7/2(土) 8:31

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング