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ウクライナ戦争で日本の「鶏肉」が高くなるカラクリ、食肉価格の上昇に対して日本が今できることは?

7/1 7:01 配信

東洋経済オンライン

 ロシアがウクライナに侵攻して4カ月以上が経ちます。遠い国の争いと思っていたら、今回はかなり日本の食、食肉業界に大きな打撃をもたらしていて、「格之進」でも価格の見直しを迫られています。

 昨年末から今年にかけ、輸入鶏肉の価格が高騰しています。その背景には、鶏肉の餌であるトウモロコシを中国が大量に輸入することになったことがあります。中国は、従来ロシアやウクライナからトウモロコシを輸入していましたが、今回の紛争でどちらの国からもトウモロコシを入手することが困難となり、輸入先をブラジルに変更したのです。

■ブラジル産の鶏肉出荷量が激減

 ブラジルは、過去の食料危機の経験から、自国の餌で鶏を肥育しており、日本にも多くの鶏肉を輸出していました。が、ブラジル産のトウモロコシが中国に大量に輸出されてしまったため、自国の鶏の餌となるトウモロコシが足りなくなってしまったのです。

 そのため、ブラジル産の鶏肉の出荷量が激減し、価格が高騰。日本に輸出する鶏肉が減ってしまい、日本でも輸入鶏肉の価格が高騰! という世界を巻き込んでの大問題となっているのです。

 また、日本はコンビニなど大手企業がタイから鶏肉を多く輸入していて、新型コロナウイルスによる減産でタイ産の鶏肉の輸入量も急激に縮小。このWパンチで今、輸入鶏肉の価格が上がっているだけでなく、飲食店などへの出荷制限もかかり、足りていないという状況で、国産鶏肉の価格と変わらなくなってしまっています。

 財務省の貿易統計によると(5月27日公表)4月の輸入鶏肉(解体品)の価格は、前年同月より41.4%上昇しており、ブラジル産の価格が260円/kg、タイ産が385円/kgとなっています(全農チキンフーズ 鶏肉情勢より)。

 実際、都内スーパーの鶏肉売り場を覗いてみると(2022年6月下旬)、ブラジル産鶏もも肉が98円/100g、国産鶏もも肉が118円/100gとなっていて、価格差は20円。以前なら輸入鶏肉は国産鶏の半額ほどだったので、このところの円安を考えると、もう価格差はなくなってしまうと思われます。

 ウクライナの特産である小麦の高騰が話題になっていますが、鶏肉も回り回って今回の紛争の影響を大きく受けているというわけです。また、ウクライナは、ヨーロッパ、中東、アフリカへの鶏肉の供給国であったのですが、今回の紛争で黒海が封鎖され周辺国の物流も滞っており、ヨーロッパや中東の国がブラジル産の鶏肉を輸入し始めたことも、日本の輸入鶏肉の高騰につながっています。

■値上げに踏み切った「鳥貴族」

 先日、焼き鳥居酒屋を展開する鳥貴族ホールディングスの大倉忠司社長と、講演会で一緒になり今の日本の食肉について話をする機会がありました。鳥貴族の鶏肉は、すべて国産なので、今回の輸入肉の価格高騰の影響はそれほど大きくはないとのこと。しかし、生産者の実情を踏まえると、国産鶏肉も近々価格が上昇せざるを得ない状況と推測できる、と意見交換をしました。

 鳥貴族は、この4月に商品の均一価格を327円から350円に値上げしています。原材料、流通コスト、人件費などの高騰が理由です。ですが、本質的な理由は、生産者を守り、従業員を守り、関わる人たちを守るための中長期的な経営戦略です。

 生産者や流通、従業員に負荷が及ばないようにと、値上げに踏み切ったわけです。今回の値上げは、日本の食文化をアフターコロナのニューノーマルに対応するための施策と言えるでしょう。

 紛争が長引いてしまっているため、値上がりの波は鶏肉だけでなく豚肉、牛肉にも及んでいます。日本の豚肉も牛肉も、ほとんどが輸入飼料に頼っているというのが大きな問題。トウモロコシは、鶏だけでなく、豚にも牛にも飼料としても使われています。そのため今後、国産の食肉すべての価格も上がると思われます。

 和牛生産者からは、すでに昨年と比べて飼料が15~20%値上がりしているという声が聞こえてきており、まだこれからも高騰しそうです。しかし、日本の農業にはそんな予期せぬ事態に備えて積み立てている補填制度があり、それを活用することもできます。

 ただ、畜産農家への入金までには数カ月はかかるため、苦しい今の助けにはならない。また、値上がりがいつまで続くかもわからないので、補填申請もできないというのが現実なのです。子牛を買い付けて育て、1年半後に出荷するまでにかかる費用は1頭当たり120万~130万円。この餌の高騰で1頭当たりのコストは10万円以上上がると言われています。

■日本でも飼料用トウモロコシの栽培が必要

 今回のウクライナ侵攻は、日本の食料自給について改めて考えるきっかけにもなっています。これまでグローバルに食料を輸入することで豊かな食を維持してきましたが、14億人の人口を抱える中国の台頭や、新型コロナのような予期せぬ感染症の世界的な蔓延で、流通の停滞や大きな混乱も今後もありえます。そうなると、今までのように求めるだけの食料が、日本に入らなくなることも十分にあえりえるのです。

 「『鳥貴族』のような食のプラットホームとなる会社は、国産消費をもっと積極的に行うことで、サステナブルな日本の農業が実現し、ニューノーマルに対応できるようになる」と大倉社長は話します。私も「国産食材を食べることは、日本の食(農業)への投資となり、生産者と共に日本の食(農業)の豊かな未来を創るために必要なこと」と、これまでも何度も話してきました。

 今回の食肉の高騰で、本当の意味での国産食材とは、肥料や飼料も国産でまかなえることだとつくづく思い知らされました。日本は、甘い食用のトウモロコシの生産は多くしていますが、飼料用のトウモロコシの生産はほんのわずか。これまで日本の政府は、稲作農家保護のためには、補助金を多く支給しているのですが、トウモロコシ生産農家の保護は後回しになってしまっているのです。

 実の部分だけを収穫し乾燥させた飼料用のトウモロコシ=子実トウモロコシを、日本は世界一輸入しており年間約1500万トン。これを国内で賄うことができれば、国産の餌を食べて育った本当の意味での国産肉が食べられるようになるのです。

 そこで今こそ、生産効率のいい飼料用トウモロコシの生産を提案します。現在、日本各地に耕作放棄地が多くあります。これを子実トウモロコシの栽培に充てれば、土地の有効利用にもなります。また、その飼料を食べる牛や豚、鶏の排泄物を堆肥にして子実トウモロコシ栽培に利用すれば、理想的な食の循環も実現できるのです。

 子実トウモロコシの栽培は、実は手間がかからないというメリットがあり、労働時間あたりの所得を主食米の栽培と比べると20倍も効率がよい、という農水省の試算があります。1時間当たりの所得で考えると、主食米が1時間1400円ですが、子実トウモロコシは、1時間2万9200円というから、これはもう国産に切り替えるタイミングがきている!!  

 ただ、トウモロコシ生産には、大型の機械も必要なので、すぐに切り替えることは難しい。1農家だけでなく、自治体や企業単位で、大きな企画とすれば予算も確保でき実現可能です。今後、日本の宝でもある和牛を食べ続けることができるようにするためにも、国産の子実トウモロコシの生産を、国は本気で考えてほしいと思います。

■輸入ばかりに頼るのはあまりにリスクが大きい

 予測不可能な事態が起こる今のような時代を、“ブーカ(VUCA)の時代”と言うそうです。変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)――。ウクライナ紛争や新型の感染症、そして円安など、まさに変化が激しく先行き不透明なことが今起こっているのです。

 島国である日本は、安いからと輸入にばかり頼っているのではあまりにもリスクが大きい。サステナブルな農業にするためにも、飼料も国産とすることは、この国を強くすることだと思います。農水省もここ数年、子実トウモロコシのための転作の助成や推進事業を積極的に行っています。

 ウクライナ侵攻は、いまだ終わりが見えない状況で、さまざまなものが値上がりし、不安定な日々ですが、この世界的な危機を教訓とし、サステナブルな日本の食(農業)への準備をしていくことが今迫られているのです。

東洋経済オンライン

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最終更新:7/1(金) 7:01

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