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日本ハム「きつねダンス」がここまで流行る理由、野球一本足からエンタメ企業への大転換の布石

6/30 11:11 配信

東洋経済オンライン

 2022年のプロ野球前半戦について「ファンサービス特別賞」のような枠があるとして、私が審査員なら、北海道日本ハムファイターズの通称「きつねダンス」に授与したいと思う。

 プロ野球ファン以外の方には、いまだ、あまり知られていないかもしれない。ファイターズのホームゲームのイニング間に、ファイターズガールが踊るこのダンスが、やたらと盛り上がっているのだ。

 新庄剛志を監督、いや「ビッグボス」として招聘し、ご存じのようにオフシーズンの話題をかっさらったものの、ペナントレースに入ると、大方の予想通り、チームは最下位に低迷。

 しかし、松本剛、野村佑希、万波中正ら、高校卒のヤングファイターズがめきめき頭角を現してきたこと(このあたりはビッグボスの好影響か)に加えて、「きつねダンス」が、球団としての明るい話題となっている。

 と、東洋経済オンラインらしく、理路整然と前置きすることはできるのだが、肝心のダンス自体は、映像からもわかるように、実に他愛のないものだ。

■きつねダンスを踊る観客も多く話題に

 しかし、これが盛り上がっている。ファイターズガールと一緒に、このダンスを踊る観客も多く、またSNSでは広く話題が拡散。「松本剛を知らずとも『きつねダンス』は知っている」という層も多いはずだ。

 というわけで今回は、この「きつねダンス」を取り上げたい。ただ、ダンス単体ではなく、後述する来季からの新本拠地の凄みと併せて見ることで、これからのファイターズ、ひいてはこれからのプロ野球の未来を考えてみたいと思うのだ。

 先に「他愛のない」と書いたが、言い換えると、ふらふらと手や身体を動かす奇妙でコミカルなダンスであり、結果、緩くて間口が広い。だから観客が踊りやすい。

 札幌ドームという球場には、何度も足を運んだが、他のNPB本拠地球場、例えば東京ドームの巨人戦などと比べて、観客が老若男女に広がっている印象を受ける。言い換えれば、プロ野球のコア層である中年男性以外、つまり子供と(老若)女性の比率が高い。

 逆に「他愛のないダンス」の対義語(=他愛のある? )は、この20年ほどの間に、他の球場で一般化した、強いビートの利いた一糸乱れぬダンスだ。これも言い換えれば、洗練されたアメリカンでマッチョなダンス。

 しかし、そんなダンスよりも、札幌ドームの老若男女に広がる観客構成には「きつねダンス」がフィットした。そして、ファイターズガールと観客が一体となって、ふらふら・ゆらゆらと踊るさまが導火線となって、全国に広がったと私は考える。

■老若男女が踊れるダンス

 サイト『Full-Count』の6月7日の記事では、「ブームの“火付け役”」であるファイターズスポーツ&エンターテインメントの尾暮沙織さんがこう語っている――「さらに初見でもマネしやすく、スタンドにいるお客さまが座りながらでも踊れるようにアレンジしました。小さいお子さまからおじいちゃんおばあちゃん世代まで、誰が見てもパっとできるというのはポイントにしましたね」

 「小さいお子さまからおじいちゃんおばあちゃん世代まで」――つまり「老若男女」。この言葉、この漢字4文字は、実は、ファイターズの、ひいては日本プロ野球全体の未来を考えるキーワードなのだ。

 「きつねダンス」の取材も兼ねて、6月17・18日のファイターズ対マリーンズ戦に足を運んだ。18日の午前中に時間が空くので、建設中の新球場を見に行こうと思い立った。

 札幌市内に宿泊したのだが、市内の繁華街=すすきのに掲示されたこの広告看板に、野球ファンとしては、いきなり気分が高揚する。

 JR札幌駅から快速で16分、北広島駅に降り立つ。典型的な地方都市の郊外駅だ。ここがタクシーに乗って10分足らずのところに、新球場=ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド)の建設現場があった。

 建築中のその巨大な姿に、野球ファンとして心が震えた。建設中の建物に心が震えるのは、正直生まれて初めての経験かもしれない。

 心が震えるのは、巨大だから、だけではない。フォルム全体が、何というか木造家屋のような形をしているため、大空や周囲の緑と見事に調和して、「バブリー」な感じがまったくしない。ゼネコンではなく、ドラマ『北の国から』の黒板五郎(田中邦衛)が手作りしたような、と言えば言い過ぎか。まるで金属製の要塞のような札幌ドームとは対照的である。

■球場の本領はFヴィレッジにある

 しかし、この球場の本領は、エスコンフィールドを囲む広大なエリアに建設される「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE」(Fヴィレッジ)にあると思う。公式サイトより、その陣容。

・ ES CON FIELD HOKKAIDO(サウナ/温泉付き)
・ キッズエリア
・ FIGHTERS LEGENDS SQUARE
・ 農園エリア
・ 認定こども園
・ THE LODGE(商空間)

・ プライベートヴィラ(宿泊施設)
・ シニアレジデンス・メディカルモール(2024年開業予定)
・ アクティブシニア向け賃貸レジデンス
・ マンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」
 これは球場/ボールパークというより、もうテーマパークだ。それも老若男女のすべて・すみずみに向けた――。

 約600億円と言われる建設費用を巨額投資して、ファイターズが目論む戦略は何か。多く報道されたのは、消極的理由としての、札幌ドームの使用料の高さや、ドーム内での物販や広告収入の分配についての問題だが、もちろん、それだけではなかろう。

 野球を核としながらも野球だけにとどまらない、つまりは「スポーツ事業」から「エンターテインメント事業」への発展的戦略を企図したうえで、その戦略に向けた大勝負が、エスコンフィールド/Fヴィレッジの建設だと、私は捉えるのだ。

 プロ野球の市場規模は読みにくいが、2019年12月24日号『エコノミスト』誌は「1995年には日米ともにほぼ同じ2000億円弱だったプロ野球の市場規模が、現在では米大リーグが8000億円規模に飛躍させたのに対して日本は従来の規模にとどまり、4倍の差を付けられてしまった」と看破する。そして観客動員(こちらはNPBが詳細に発表している)は、コロナ前=2019年で2654万人(両リーグ計)。

 対して、経済産業省による「特定サービス産業動態統計調査」の分類=「遊園地・テーマパーク」について、2019年の市場規模は6412億円で、入場者数合計は7161万人。市場の大きさ、つまりは狙うべき的(まと)が約3倍大きい。

 年間約70試合(ホームのみ)しか行われない野球の試合、それも成績の浮き沈みによって左右される観客動員/売上規模を考えれば、野球事業だけに依った一本足打法(野球だけに)的な経営ではなく、より大きな「エンタテインメント事業」に踏み出す必然性は十分にあるだろう。それも、北海道という地に寄り添い、かつ差別性も高い「老若男女」というキーワードを軸にした――。

 と考えると、このような大勝負を前にして「老若男女に向けたエンターテインメント・ブランディングのシンボル」としての新庄ビッグボス招聘にも納得し得る。目先の采配というよりも、宣伝効果を含む今後に向けた大きな還元価値をも踏まえて、ファイターズは人選をしたはずだ。

■きつねは、どう鳴いているの? 

 先の『Full-Count』の記事によれば、「きつねダンス」について、「実はこの演出を実行すると決まったのは、開幕の1週間前」とのことなので、ここまで述べたファイターズの戦略方針との直接的な関係は薄そうだ。それでも結果的に「老若男女に向けたエンターテインメント・ブランディング」という一直線上に付置される。だから、はやり続けることに必然性がある

 「きつねダンス」のBGMは、ノルウェーのコメディデュオ=Ylvisが歌う『The Fox(What Does the Fox Say? )』。曲中に何度も出てくるのは、このサブタイトル=「What Does the Fox Say?」(きつねはどう鳴いてるの? )。

 ――北の大地のエンタメきつねは、どう鳴いてるの? 

 ――「ロー」「ニャク」「ナン」「ニョー」と鳴いてるよ。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/30(木) 11:11

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