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大幅下落でアメリカ株の底入れ時期がようやく見えてきた

6/26 6:31 配信

東洋経済オンライン

 FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は従来の路線を大きく変更、6月15日のFOMC(連邦公開市場委員会)では0.75%の大幅利上げに踏み出した。株価は20~24日の週では反発したとはいえ、「インフレ、金利上昇がどこまで続くかわからない」との不信感の強まりが、一時は主要株価指数が軒並み年初来安値を記録した主たる要因だろう。

5月中旬にFRBの緩和転換への期待から株価がいったん反発した局面などでも、前回のコラム「米国の株価が本格上昇に転じたと見るのは早計だ」(6月2日配信)で懐疑的な立場を示すなど、2022年初から半年にわたって慎重な見方を維持してきた。

 ただ、最近の下落によって、S&P500種株価指数の年初の高値から下落率は、直近で最も下落した16日時点では約24%まで拡大、2021年初近くの水準まで調整した。ここまで下落すると、アメリカ株に慎重だった筆者にとっても、割高感は相応に薄れつつあるようにみえる。

■なぜFRBが株安に配慮する可能性は低いのか

 FOMCの直前に利上げ幅拡大を決めたとみられるFRBは、インフレへの警戒姿勢をさらに強めたが、「インフレ抑制のために程よく経済を減速させる」難しい政策判断を迫られている。こうした中で、株式市場がいわゆるベアマーケットに入ったが、株安に配慮する可能性は低い。

 むしろ、多くのFOMCメンバーは、株高が経済成長を押し上げ、人々のインフレ期待が高まることを防ぎたいと考えているだろう。金融市場参加者にとって痛みが大きいさらなる株安であっても、彼らの積極的な利上げ姿勢は変わらない。

 また、大幅な利上げを行ったことで、引き締め効果でアメリカ経済が2023年に減速が始まるタイミングが前倒しとなり、軽微ではあるが景気後退に至る可能性は高まったと筆者は考えている。

 一方で、この利上げによって、アメリカ経済がどの程度落ち込むかは、足元で起きている「インフレの深刻度合い」に依存するだろう。経済活動のさらなる減速などで、インフレが今後早期に落ち着けば、FRBの現在のインフレ警戒姿勢も和らぐ。それが、株式市場が反転するきっかけになりうるだろうが、それはいつ期待できるだろうか。

 アメリカの経済指標を見ると、景況感を示す各種調査はやや低下しており、また住宅部門がはっきり調整しているなど、経済全体では巡航速度付近にすでに減速しているとみられる。労働市場などで昨年までのブーム的な成長の余熱が残っているが、2022年後半には経済成長率は2%を下回るまでに減速するとみられる。

 一方、「スピード違反」となっているインフレ指標に関しては、逼迫していた世界的な財市場における需給バランスには改善する兆候がみられる。地政学リスクが影響する商品市況については不確実性が残るが、それ以外の財市場全般の価格上昇圧力は峠を越えているのではないか。

 また、アメリカ国内においても、2021年までのまれにみる経済刺激策がもたらしたブーム的な成長は終わり、上振れた賃金にも頭打ちの兆しがある。今後予想される成長減速が、インフレの抑制要因になるだろう。

 FRBの政策転換をもたらしたのは、中古車価格が再び上昇に転じたことが一因になり、インフレ率が予想外に上振れたことである。ただ、アメリカにおいては、懸念された中国発の供給制約が影響する兆しは見られない。極めて低い水準にある在庫の復元が今後進めば、自動車の価格上昇も止まる可能性が出てくる。

 このため、高インフレが和らぐ兆候は、早ければ秋口から増えるとみられる。こうなれば、FRBが現在想定しているとおりに、利上げ幅は年末にかけてペースダウンする。FRBの政策への不信感が和らぎ、利上げとインフレが止まらないとの懸念も薄れていくとみられる。

■株は4~6月期決算発表後に再度下落の可能性も

 この筆者の見立てが正しければ、2022年末までにはアメリカ株市場の下落基調に歯止めがかかると予想される。ただ、その時期を意識すべき局面ではあるが、すぐに焦って投資する必要はないとみている。

 というのも、投資タイミングを考える1つの材料に、企業アナリストによる利益予想がある。依然、企業アナリストらによる企業業績予想の下方修正はかなり限定的である。これまでのアメリカ株下落のほとんどは、長期金利上昇によるバリュエーション調整(株価収益率を物差しにした企業価値の低下)で説明できるだろう。

 アメリカで7月中旬から予定されている4~6月期の決算発表を受けて、企業業績の下方修正が株価の後追いで起きて、これが一段の株安をもたらす局面が想定される。ただ、楽観的にみえる企業業績予想が後追いとして下方修正されることは、2022年末にかけてアメリカ株が底入れする条件の1つになると思われる。

 景気後退を半ば織り込んだアメリカ株市場の下落によって、筆者のアメリカ株への慎重な見方は若干和らいだ。インフレや経済動向について不確実性は残っているが、それでも高インフレを抑制するFRBの政策対応は効果が現れると筆者は考えている。FRBの大幅利上げに迫られる経済環境が落ち着いていくことを見据えながら、年末までの時間軸でアメリカ株市場は底入れを迎えるのではないか。

 ところで、過去20年間弱(2003年以降)、S&P500が最高値から10%以上下落した局面は今回で9回目となる。9回の下落率の平均はマイナス21.4%であり、今回は6月16日時点ではマイナス23.5%とほぼ平均である。

 2003年からのアメリカ株の下落局面の多くは、世界的なリスク資産の下落局面に重なる。過去20年のアメリカ株の下落局面では、外国為替市場では円高ドル安となるケースが多く、平均的なドル円相場の「円高率」は4.4%である。株安と円高のダブルパンチで、本邦投資家は大きなダメージを受け、いわゆる「リスクオフの円高」なる現象が起きていたわけである。

 だが、今回の株安局面は様相がまったく異なっている。アメリカ株など多くの株価が下落した2022年前半は、ドル円相場は15%以上の円安となっており、過去20年では事実上初めてのケースである。

■黒田日銀が金融緩和徹底を継続する理由

 ドル高円安の最大の理由は、インフレに起因するFRBの利上げである。もう1つは、大幅利上げに積極的なFRBとは対照的に、日本銀行が金融緩和の徹底を続けて、金融政策の姿勢の差が明確になっていることである。

 2010年代前半までは、アメリカを中心に世界的な株安が起きると、日本銀行が「金融緩和競争」に負けて、デフレと円高のスパイラルに陥る悪循環に陥り、株安と円高で結果的に資産価格が下落して日本の金融市場は大きく冷え込んだ。

 だが足元では、メディアなどからの根拠が薄弱な「円安批判」を受けながらも、黒田東彦総裁率いる日本銀行は2%インフレ実現のために、金融緩和を徹底し続けている。これまで頻繁にみられた、株安と通貨高の負のスパイラルを防いでいる。日本銀行の金融緩和政策は、金融資産価値の目減りを和らげるという経路で、日本経済の成長を下支えしているわけである。

 日本経済の正常化を後押しする黒田日銀の政策が、岸田文雄政権にも信頼されていることは、数少ない日本経済や株式市場のポジティブな要因と位置づけられるだろう。

 (本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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最終更新:6/26(日) 9:21

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