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「愛情不足のまま成長した人」過去を語る時の特徴、親との記憶を振り返る際に見られる3つの顕著な傾向とは?

6/23 14:01 配信

東洋経済オンライン

今、世界の教育界で最も注目されている「愛着」。子どもの自己肯定感を育むには、親からの揺るぎない愛着が必要だというものだ。本稿では、『自己肯定感を高める子育て』の著者で、UCLA医科大学精神科教授ダニエル・J・シーゲルと全米で人気の心理セラピスト、ティナ・ペイン・ブライソンの新著『生き抜く力をはぐくむ愛着の子育て』より、子供時代に親から確かな愛着を受けなかった人が過去を振り返るときのパターンと、自ら愛着を取り戻す方法を解説する。

■親から確かな愛着を与えられず大人になると

 愛着の研究者がたびたび行う研究では、子どもの心を敏感に感じ取って対応する親は感情面で健全な、立ち直る力のある子を育てていることが多く、成長して精神的に安定した幸せな大人になり、実りある人間関係を築いていける、という結果が出ている。

 しかし、あなた自身が、親から確かな愛着を与えられることなく育ったとしたら? 

 幼いころの愛着の経験は重要で「変えようがないもの」と考える人は多いが、愛着の科学は、〝絶対にそんなことはない〟と言っている。自分の子どもに、確かな愛着を差し出すことはできる。つまり、確かな愛着は「学んで獲得できる」のだ。

 
ここで登場するのが、「獲得安定型愛着」だ。大人になってからでも、安定した人間関係を築く方法を学び、身に着ければ、安定型愛着を獲得できる。

 どう育てられたかは、世界をどう見るか、自分の子どもをどう育てるかに大きな影響を与える。しかし、それよりもっと大切なのは、自分の幼少期の経験をどう理解したか――現在の自分がどんな人間かをきちんと知るために、心が記憶をどう整理したか――だ。

 過去を変えることはできないが、それをどう理解するかを変えることはできる。

 自分の「人生の物語」、特に両親についてじっくり考え、なぜ彼らがあのようにふるまったのかを理解できれば、幼少期の経験が自分の発達にどう影響したのかに気づいて、自分の子どもの育てかたを始めとする現在の人間関係を改善していける。そうやって、安定型愛着を学べばいい。

 ところで、人生の物語を理解するとは、具体的にどういう意味だろうか? 

 カギは愛着の研究者の言う「筋の通った物語」を見つけることだ。自分の生い立ちをじっくり振り返ってみれば、家庭での経験にはプラス面とマイナス面の両方があったことと、自分がそれをどう感じているかに気づく。すると、その経験が自分の脳と人間関係の基本にどう影響しているのかがわかってくる。

たとえば、「筋の通った物語」の一部は、こんなふうになるかもしれない。

■子どもをつい甘やかしてしまう女性の過去

 「わたしの母はいつも怒っていました。わたしたちを愛してくれていたことにはなんの疑いもありません。けれど、母の両親は、ひどく母を傷つけていました。母の父親は働いてばかりで、母親は隠れたアルコール依存症でした。

 わたしの母は6人きょうだいの一番上だったので、いつも完璧でいなくてはいけないと考えていました。でも、もちろん、そんなのは無理でした。だから、何もかもためこんで、しっかり自制を保とうとしてはいましたが、何か1つでもうまくいかなくなると、感情を爆発させました。妹たちとわたしはたいていその怒りをまともに受けて、ときには手を上げられることもありました。

 わたし自身はときどき、子どもたちを好き勝手にさせすぎているのではないかと心配になります。つい甘やかしてしまうのは、子どもたちにいつも完璧でいなくてはならないというプレッシャーを感じさせたくないからでもあると思います」。

 多くの人と同じように、この女性は理想的とはいえない幼少期を過ごした。しかし、そのことをきちんと整理して人に話し、母親に思いやりさえ示して、自分自身と子どもたちにとってそれが何を意味しているかを、じっくり丁寧に考えている。そして自分の経験を具体的に語り、記憶から理解へと昇華している。

 過去を拒絶してもいなければ、過去にとらわれてもいない。これが、「筋の通った物語」だ。この女性のように、安定型愛着を努力して〝獲得〟しなくてはならなかった人もいる。

 たとえ親が、安定型愛着を身につけられるような幼少期を与えてくれなくても、自分の体験を理解して、障害を乗り越えたということだ。その理解のプロセスは、自分の心を見つめ直し、人に話し、人とつながることで実現するのだ。

 しかし、安定型愛着を獲得することができない人は、わかりやすく明快な身の上話をするのに困難を覚える。

■具体的なエピソードをあげられない

 その人の話はたいていちぐはぐで、人間関係や感情や過去の重要さを「拒絶」していることが多い。そういう人はどれほど弁が立っても、家族や幼少期の経験を振り返る段になると、自分の子ども時代を理解するための「筋の通った物語」をうまく話せないことに気づく。

 幼いころの家庭生活について聞かれると、具体的な思い出、特に感情面や社交面の詳しい経験を思い出したがらなかったり、思い出せなかったりする。

 「拒絶型」パターンの特徴

 たとえば、母親のことを「とても愛情深い人でした」と言い張るのに、それを裏づける具体的なエピソードは何も挙げられない。彼らの幼少時代の物語はさびしげで、感情面と社交面の豊かさが不足した環境で成長したことをうかがわせるが、本人は「だけど、それでかまわない。大げさなドラマは嫌いだから」と言い張る。

 自伝的記憶や過去の考察に近づこうとしないのは、神経系の適応とも関係があるのかもしれない。右脳の自伝的記憶と体からの信号の感覚がうまく発達しなかったせいで、「拒絶」が起こるのだ。「拒絶型」パターンと言われている。

 「とらわれ型」パターンの特徴

 また一方で、過去の細かい部分に注意を向けすぎて、すっかり迷子になってしまう人もいる。そういう人は、過去のできごとと、大人になってからの現在のできごとが混在した、まぎらわしい物語をする。

 これは、「とらわれ型」と呼ばれるタイプで、物語が人間関係や感情や過去のできごとにとらわれたものになるからだ。

 右脳の自伝的記憶が過剰にあふれ、体からの信号で感情的になりすぎていると言ってもいい。とらわれ型パターンを持つ人はすぐに話を脱線させ、記憶にのみこまれやすく、物語を断片的でわかりづらいものにしてしまう。

 「未解決型」パターンの特徴

 3つ目のパターンは、「未解決型」といわれ、子どもには解決できない恐怖を経験した可能性がある。幼少期にこういうトラウマを経験すると、成長後、自分の過去についてわかりやすく明快な物語ができなくなることも多い。

 特に脅威や恐怖、死、あるいはその人のトラウマに関連する何かについて尋ねられたとき、話に一貫性がなくなる。細部があいまいになり、話をするにつれ、意識の解離やトランス状態に陥って、根本的にばらばらな物語になってしまうこともあるのだ。

 「拒絶型」、「とらわれ型」、「未解決型」のうち、どのパターンを持つ人も、それぞれに特有の矛盾のパターンがあり、過去について一貫した話ができない。そして一貫した物語がなければ、自分がこれまでどんな状況にあったのか、成長してどんな人間になったのかを理解するのが難しくなる。

 そういう人が親になると、子どもを育てるうちに、自分の保護者と同じ間違いを繰り返してしまう可能性が高くなる。親と同じ人間関係のパターンを受け継ぎ、それを次世代に伝えてしまうのだ。

 けれど、安心してほしい。冒頭にも触れたが、勇気を出して過去を見つめ、じっくり考える能力を養ってから、過去から逃げることも過去にとらわれることもなく、自分の物語をすれば、過去の傷を徐々に癒していける。

 両親が幼少期に寄り添ってくれなかったのは自分のせいではないこと、そして与えられた過去から自由になる力があることに気づくのは、解放感あふれるすばらしい体験になるだろう。その解放感を得たあと、あなたは今後の行動に責任を負い始めるだろう。わたしたち臨床医が「行為主体性」と呼ぶものだ。

 ある人はこう表現した。「わたしの身に起こったことは、わたしのせいではありません。でも、今の自分がすることには責任があります」。

 実のところ、人が今の自分になり、今の行動パターンを発達させたのは、それが特定の状況に適応するための戦略でもあったからだ。人は生き残るための戦略を見つけ、最善を尽くす。言い換えれば、生きていくうえで人は環境に適応し、特に子どものうちは、家族のなかで生き延びるために必要な生き残り戦略のパターンを身につけてきた。

 しかし、大人の自分には、それが自分を閉じこめる牢獄になっているのかもしれない。

■自分の愛着のパターンを変えた90代の男性

 あなたはその場にとどまっている必要はない。自分の経験でつくられた牢獄から自由になっていい。人間関係は変えられるし、愛着パターンも変えられるし、実際に変わっていく。

 研究によると、子育てに取り組むとき、自分の人生を理解すれば、心が解放され、なりたい親になることができる。

 筆者は以前、90代の男性と面談したことがある。男性は自分の人間関係の戦略、大人になってからの愛着パターンを変化させて、もっと惜しみなく愛情を注ぎ、配偶者や家族全員の心に寄り添えるようにした。その変化は、彼の妻が筆者に、「あなたは夫に〝脳移植〟をしたのですか?」と尋ねたほどだった。

 実際、研究によると、大人になってから安定型愛着を獲得した親でも、恵まれた幼少期を過ごして〝継続安定型愛着〟を身につけた人と同じくらい効果的な子育てができるという結果が出ているのだ。

 筆者は長年にわたって、過去に立ち向かうのに役立つ比喩を使ってきた。トラウマが、犬に噛まれるようなものだとすれば、自然な衝動として身を引くのは理解できる。しかし、犬に噛まれた手を引こうとすると、犬はもっと強く歯を食いこませる。

 けれども、手を引くかわりに犬の喉に突っこめば、犬は喉を詰まらせてあなたの手を離すので、傷は最小限ですみ、治りやすくなる。トラウマもまったく同じだ。人は当然ながら、苦痛に満ちた記憶がよみがえるのを嫌って、トラウマから遠ざかろうとする。

 「過去のことなんだし、変えようのないことについて今さら考えこんでなんになるの?」。

■難題は成長のためのチャンス

 しかし、これは違う。実際には、物語としての考察を組み合わせて記憶を呼び起こせば、記憶を調整できるかもしれない。自分の人生を理解する過程で未解決のトラウマを癒し、「筋の通った物語」を見つけることで、いっそう強くなれるかもしれない。それを〝トラウマ後の成長〟と呼ぶ人もいる。

 勇気と、自分の心と親しい人間関係や専門家の力を使って、そのトラウマにまっすぐ向き合うことが、自分自身への贈り物になるだろう。

 「あらゆることを人生の師にしよう」。この心強い教えが、どうしても避けられない難題にぶつかったときに役立つ。難題は、成長のためのチャンスでもあるのだから。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/23(木) 16:16

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