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東大生に超人気の講義「AI経営」を学ぶべき理由

5/24 6:31 配信

東洋経済オンライン

AI(人工知能)などのデジタルテクノロジーを活用し、競争優位性を中長期的に確立するビジネス変革をどのように実現すればよいのか。
「AI経営」のレベルにおいて、欧米の先進企業の後塵を拝している日本企業の多くは、何を手がかりにキャッチアップを図ればよいのか。
『東大生も学ぶ「AI経営」の教科書』を上梓した著者が、東大で超人気となっている講義のエッセンスを紹介する。

■AIを日常的に活用する時代

 これからの経営に不可欠なもの、それはスピード感である。依然として日本企業に大きく欠けている視点だ。この課題が解決されない限り、グローバルにおける競争のスタートラインにすら立てない。

 その解決策として注目されているのがAIであり、「AI経営」である。

 アメリカのテックジャイアント企業は、AIを使って毎日の業務を行っている。そこでは、企業自体のスピード感も社員の体験も、日本企業とはまったく異なる。

 過去の流れを見ると、日本は欧米から何年か遅れてテクノロジーが輸入され、普及している。遅れているとはいえ、日本にもここ2、3年で経営においてAIを日常的に活用する時代がやってくるのは間違いない。

 グローバル企業に対するキャッチアップ、日本企業間の差別化を図るうえでも、AI経営を先取りすることには大きな意義がある。

 では、日本企業はどのくらいAIを活用できているのか、活用する準備ができているのか。

 日本経済団体連合会(経団連)は、「AI-Ready化ガイドライン」として5段階のレベル分けを提示している。

レベル1:AI-Ready化着手前
~製造、物流、販売など基本業務のためのシステム運用とデータマネジメントは行っているが、SIer(=System Integrator)だのみでAI×データを使った事業の運営、刷新、創造については着手していない~

レベル2:AI-Ready化の初期段階
~外部の専門家の力を借りてAI×データの利活用に着手しているが、取り組みは既存の人間の仕事(業務)を機械に置き換えることが大半~
レベル3:AI-Ready化を進行
~既存の業務の機械化にはメドがつき、今後の成長と事業刷新のための重要なレバーとしてAI×データの利活用を開始。これに向け、まとまったリソースの再配分が行われている~
レベル4:AI-Ready化からAI-Powered化へ展開

~AI×データの力を解き放つことで、コア事業においてこれまで不可能だった夢や課題解決を実現している。未来を信じ、Al-Readyになるまでリソースを一過性でなく投下し続けている~
レベル5:AI-Powered企業として確立、影響力発揮
~すべての事業、機能がAI×データ化し、業界そのものの本質的な刷新(disruption)を常時仕掛け、変容を引き起こしている。国内外の競合に対抗し得るレベルでAI-Ready化に向けリソースを投下できている。新しい試みがあらゆるところから雨後の筍のように日々生まれており、常に世界の最先端をリードし注目されている~

 欧米の先進企業がレベル5を実現している一方、日本企業の多くはレベル1、レベル2にとどまっている。

■DX化、AI化を目指すのは経営の判断

 2021年、PwCコンサルティングではさまざまなサーベイを実施した。そこで浮き彫りになったのは、日本だけでなくアメリカでもAIの二極化が進んでいることである。

 アメリカ企業はハイレベルとローレベルに真っ二つに割れている印象である。もちろん、無理をしてDX化、AI化をしなくてもよい企業もある。そういう企業は、最低限のデジタル化に取り組みさえすればよい。

 ただ、例えば農業がDX化、AI化し、衛星データを活用した天候予測から作物の育成方法、スマート化など大きなパラダイムシフトに踏み込んでいく。自給自足であればそこまで踏み込む必要はないが、産業としてスケールするには、DX化、AI化を取り入れなければスピード感や事業規模において絶対に勝てない。そこを目指すかどうかは、大きな経営の判断になる。もちろん、これはほかの産業、ほかの企業にとってもまったく同じである。

 アメリカには「AI脅威論」が根深く、AIが人間に取って代わるという恐怖が染みついている。しかし、日本にはその感覚がほとんどない。それは、労働人口の減少が深刻な問題となっているからだ。

 とくに、長年の勘で素晴らしい仕事をする建築現場のベテランが急激にいなくなり始めている。その知見がなくなることに対する危機感は、相当なものがある。例えば、建築業界のある大手企業がレベル4に位置づけられるほどDX化、AI化を進めているのは、その危機感の表れである。

■AIとデータの力を最大化できるか

 日本企業は、もう逃げられない。

 レベル1、レベル2にとどまっている多くの企業は、すぐにでもAI経営に軸足を移していかなければ、競争に勝てず生き残れなくなる。

 私は、前職でテックジャイアントと呼ばれる企業に役員として在籍して、どれだけAIを使い倒しているのかを目の当たりにしてきた。その危機感から、PwCにおけるAI経営のプロジェクトを始めた。AI/テクノロジーの活用こそが、彼らのエクスポネンシャル(指数関数的)な成長を支えているのだ。

 AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、ビッグデータ、5Gなどのデジタルテクノロジーを活用し、競争優位性を中長期的に確立するビジネス変革をどのように実現すればよいのか。

 企業がこのようなデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するにあたっては、データ活用の巧拙がその結果を左右する。AIとデータの力を最大化し、戦略的に経営の中枢に活用できる企業が勝ち残っていく。

 保有しているデータ、これから入手するデータは、種類も量も加速度的に増えていく。AIの活用によって、これらのデータを迅速な経営判断につなげ、ビジネス価値を生み出していくことが、企業にとっての重要な経営課題となる。

 私たちは、経営判断のさまざまな側面でAIを活用し、ビジョンの策定からビジネス変革、イノベーション創出に結びつける方法論を「AI経営」として、クライアント企業への助言、支援を行っている。

 具体的には、「AI経営」を実践する方法論を以下の6つのステップに整理している。

ステップ1:エリアを決め、ビジョンを描く
ステップ2:ロードマップを策定する
ステップ3:プロトタイプを作成する
ステップ4:データ基盤を構築する

ステップ5:AI・デジタルシステムを実装する
ステップ6:組織に定着させ持続的なDXを実現する

■経営人材を育てる「AI経営寄付講座」

 また、PwC Japanグループは、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科が開講する「東京大学 AI経営寄付講座」にAI経営のナレッジを提供している。講義とワークショップにより、AIの基礎と、企業や特定の業界におけるテクノロジーの活用について、実務的な情報も踏まえて学べるカリキュラムとなっている。

 東京大学工学部が培ってきたAIの社会実装へのインサイトに加えて、BXT(Business、eXperience、Technology)の考え方に基づき、業界・ソリューション別のビジネス動向と、AIが社会・ビジネスに与えるインパクトについて、さまざまな切り口から講義、議論している。

 グローバルの世界では、AIとテクノロジーを武器に世界を席巻するデジタル企業が生まれているが、日本では教育分野における文系・理系間の壁が高く、理系学生の割合が世界的に見てもきわめて低くなっている。そのため、多くの学生はテクノロジーという武器を使いこなせるようになる前に社会に出ているのが現状だ。この講座は、AI・デジタルの力をビジネスに活かし、世界で戦える経営人材の輩出を目的としている。

 アメリカでは、複数の大学でAI×経営の講義が始まっていて、すでに非常に人気の高い講座となっているが、「AI経営寄付講座」を受講する東京大学の学生たちと接していると、テクノロジーの吸収に非常に柔軟なことに驚かされる。

 Q&Aやディスカッションでは、登壇したPwCのパートナーたちがたじろぐほど質の高い質問や、センスのよいアイデアが出てくる。AIと経営を結びつけていくことを、自分ごと化して考える。こういう人たちがこれから日本企業の経営に関わっていくと思うと、非常に頼もしい。

 今、日本の経営、ビジネスに関わっている我々は、自分の知識を大きくアップデートして、これからも続くこの戦いに備えていきたい。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/24(火) 10:18

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