しつけや教育、受験などのノウハウや体験談が書かれたいわゆる「子育て本」が今人気です。ただ、膨大にある本の中からわが家に合った本はどう選べばいいのか悩む方も多いのではないしょうか? 子育て情報誌『AERA with Kids』の編集を12年経験した同誌元編集長の江口祐子さんは、新刊『子育て本ベストセラー100冊の「これスゴイ」を1冊にまとめた本』で、今人気の子育て本100冊をピックアップし、そこに書かれているエッセンスを紹介しています。本稿では同書より一部抜粋し再構成のうえ子育て本の情報を上手に取り入れるためのコツをお届けします。
■700人以上取材してわかったこと
『AERA with Kids』の編集者時代、700人以上の教育者、起業家、著名人の親御さんたちを取材し、多くの子育て・教育本を読んできました。
昨年編集長を辞めたとき、周りから
「いろいろ取材してきた中で印象に残っていることって何?」
「どんなことがいちばん役に立った?」
と聞かれました。結局、みんなが知りたいのはそこなのだな、と強く思いました。
書店に行けばたくさんの子育て本がありますが、
「たくさんの本の中でどれを選んでいいのかわからない」
「わが子の問題を解決してくれる本はどれなのか選べない」
という悩みは多いと思います。
また、意外にも
「子育て本を読むと自分ができていないことが浮き彫りになって自信をなくしてしまう」
という親御さんたちの声もよく聞きました。
確かに書店で並ぶたくさんの子育て本は有益な情報がある一方、読み方を間違えると他人と自分の子育てを比べてしまい、自信をなくしてしまうこともあります。
とくに優秀な子どもを育てた親の体験記などを読むと「うちは到底無理」「私の子育てではダメなのか」と落ち込んでしまうこともあるのかもしれません。
そこで、子育て本に書いてある情報を「わが家に合った役立つ知識」として取り入れるためのコツを紹介していきたいと思います。
では、まずは間違えやすい読み方とは何なのかを考えていきます。
1、ノウハウをそのままわが子に当てはめようとする
私は過去に料理や語学の本、ダイエット本などいわゆる「実用本」もたくさん作ってきましたが、これらのジャンルの本は、本に書かれてあるとおりに実践すればかなり再現性高く結果が出ます。
同じ実用書でも、子育て本はこれが当てはまりません。特に、ノウハウには注意しないといけません。「親のこういう働きかけが子どものやる気を高めるのに有効でした」「○○をやったら学習習慣がつきました」と書いてあっても、それは万人に共通するものではありません。あくまで著者自身が体験したケースであったり、著者自身の調査から得た結果であったりするので、自分の子どもには当てはまるとは限りません。
たとえ同じ年齢であっても子どもは多様です。同じように成長する子はひとりもいないのです。自分の子どもに有効かどうかはさておき、あくまで例の1つとして読む、という姿勢が必要です。
■本に書いてあること全部はできない
2、本に書いてあることすべてをやってみようとする
子育て本1冊の中には多くの情報が載っています。せっかく買ったのだからとあれもこれも試したくなりますが、その考えは初めから捨てたほうがいいでしょう。編集者の立場から言うと、著者が訴えたいメインとなる情報だけでは1冊の本として成り立たないので、それに関連した情報も載せて1冊の本として成り立たせることも多いもの。
「本に紹介したものを全部試してほしい」というよりも、「この中から1つでも実際にやってもらえればいいな」というイメージです。わが子に合うものが1つでも見つかったらもうけもの、後の情報は捨ててもいい、という気持ちで読むことが大切です。
もちろん、子どもの成長によって変化も出てくるので、同じ本を時間を置いて時々読み返してみるのもおすすめです。
3、効率重視、結果重視
とくに働くお母さんが陥りやすい思考がこれです。仕事においてはとにかく無駄と効率の悪さは敵ですが、子育ては真逆です。たくさんの無駄な経験を通して親子共々成長していきます。
例えば、今人気の「声かけ本」。「この声かけをしたら子どもが自分で動くようになる」などの記述があったので、やってみた。しかしわが子にはまったく効果がなかった、というようなことはよくあります。
そんなとき、時間の無駄だった、と思ってしまいがち。たとえ一度やってダメでも、シチュエーションを変えてやってみたらどうだろう? 言い方を変えてみたらどうかな? など試行錯誤する時間と心の余裕を持ちたいもの。それでも思ったような結果にならなくても、誰が悪いわけでもないのです。いろいろトライしてみた自分を褒めましょう。
では、子育て本を読むときはどのようなことに気をつけて読めばいいのでしょうか? 改めてまとめてみます。
1、本に書いてあるやり方をアレンジしてOK
子育て本の場合、書いてあるノウハウをわが子に合わせてアレンジするのはまったく問題ないと思っています。例えば、「1時間やってみましょう」と書いてあっても無理なら30分でもよしとする。自然の中で遊ぶことが推奨されていても、都会に住んでいるのであればマンションの前の小さな公園でもちろんOK。
書かれていることがそのままできなくても引け目を感じる必要はまったくありません。むしろ、ノウハウどおりやろうとすると、逆に子育てが苦しくなります。わが家に合わせたアレンジ力が必要です。
■「すごい親」ほどたくさんの試行錯誤と無駄を体験
2、無駄も寛容に認める
子どものためにせっかく買ってきた本をまったく読まない、本をみながら作った特製のスケジュール表がまったく実行できない。そんなとき、そこにかけた手間や時間、費用を「無駄だった」と思ってしまいがち。ですが、多くの子育て本を読むと、いわゆる「すごい親」ほどたくさんの試行錯誤と無駄を体験しています。
しかし、そのことで子どもを責めたりしないのが「すごい親」ならでは。以前取材したあるファイナンシャルプランナーが、「教育は投資だと思うと間違える。つまり、過度なリターンを期待してしまう。消費だと思ったほうが気が楽になります」と言っていましたが、深く共感してしまいました。「いろいろやったけど、うちの子には合わなかったみたい」と笑い話にできるぐらいの心の余裕を持ちたいもの。
3、期待しすぎない
最終的にはこちら。本を読んでやったことがすぐに効果や結果が出ることを期待しない。親自身の心の余裕を保つ最強の考え方です。いったん期待値をグッと下げることはイライラを減らすことにもつながります。
どんな人でも最初は子育ての初心者です。子どもはどうやって育てていけばいいのか、しかもこの変化の激しい時代を生き抜くためにどんな能力をつけてあげればいいのか、迷うもの。まずは枝葉の情報でなく、子育てに大切な根本の部分は何か、「子育ての軸」を決めておくことが大切です。できればそのことについて夫婦で話し合いたいもの。そのときの参考になるのが、数々の子育て本です。
もし、お気に入りの本が見つかったら、その著者のSNSをフォローしてみたり、セミナーに参加してみるのもおすすめです。子育てに対しての視野がグッと広まります。
東洋経済オンライン
最終更新:5/23(月) 17:01
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