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年功序列はもう限界、ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか

5/22 6:01 配信

マネー現代

(文 野口 悠紀雄) 「年功序列と終身雇用」という日本型雇用形態から脱却しようとする「ジョブ型雇用」が広がっている。従来の日本型雇用は、日本経済を衰退させた大きな原因だ。ジョブ型雇用がこれを打破することが期待される。

 ただし、その導入は簡単なことではない。

ジョブ型雇用の導入企業が広がる

 「ジョブ型雇用」は、期待する貢献や責任範囲を従業員ごとに明記した「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を作成し、報酬を職責に応じて決める仕組みだ。従業員は自ら応募して、より高い職責に挑戦する。

 日立製作所や富士通などの大手電機メーカーが導入している。富士通は4月21日、ジョブ型雇用の対象を全従業員の約9割に拡大すると発表した。日立製作所は、7月にも「ジョブ型雇用」を本体の全社員に広げる計画だ。

 経団連が2020年夏に行なった調査では、419社のうち約100社が、検討中も含めてジョブ型に着手していた。

年功序列的な給与体系が日本を衰退させた

 日本では、年齢が上がるほど、自動的に給与が上がる年功序列的な給与体系を採用している企業が多い。

 それに対して、「ジョブ型雇用」では、職務ごとに異なる給与体系になる。技能が認められれば、年齢が若くても高い給料を得られる。逆に、年齢があがっても、自動的に給与があがるわけではない。

 また一定期間の雇用が自動的に保障されるわけでもない。職務を要求通りに遂行できなかったり、職務そのものがなくなったりすれば、解雇されることもある。

 ジョブ型は、外国ではごく普通の雇用体系だ。むしろ、日本型雇用のほうが、世界的に見れば特異だ。

 現在の日本経済の停滞は、日本の雇用・給与体制が硬直的であり、技術や社会の大きな変化に適応できないことが大きな原因になっている。

 ジョブ型雇用がこれを変える可能性がある。変化の大きい時代には、企業も労働者も、新しい働き方を切り拓く必要がある。

エンジニアやIT専門家だけではない

 エンジニアやIT専門家のように専門技能で仕事を進める職務にとっては、もともとジョブ型の雇用形態のほうが望ましい。

 それだけではない。一般には事務系と考えられる仕事についても、この形態が必要とされる場合が多い。

 例えば、金融の仕事がそうだ。日本の金融機関では、定型的な事務作業をする場合が多く、とりわけ専門的な知識が必要とされることが少なかった。

 しかし、先端的な金融業務は極めて専門性の高いものであり、ジョブ型雇用にあったものだ。

経営者も本来はジョブ型であるべきだ

 それだけではない。実は、経営者も本来は専門的な職業だ。したがって専門的な訓練を受け、それを活用して、1つの組織に固定されることなく、様々な企業の経営を経験することができる。

 アメリカでは、経営者は経営の専門家として様々な企業を渡り歩くのがむしろ普通になっている。

 これは、雇用統計にも反映されている。アメリカの雇用統計には、製造業や流通業などと並んで、「経営者」という産業分類がある。「経営」は、どの産業にも必要とされる、独立した産業なのである。

 それに対して、日本の経営者(オーナー経営者を除く大企業の経営者)は、その組織に長年いる人のことだ。そして、組織の出世の階段を上り、トップに上り詰めた人だ。

 出世の階段を上るためには、特定の職務の専門家になるのではなく、ジェネラリストになることが必要と考えられていた。

 このような人たちが、激変する世界の中で、新しいビジネスモデルを開拓できるかどうかは、大きな疑問だと言わざる得ない。

 日本の電機メーカーが衰退したのは、2000年頃にビジネスモデルを選択を誤ったからだ。

日本の雇用体制は戦時中に確立された1940年体制

 日本の雇用形態は、昔から終身雇用・年功序列型であったと考えられている。確かに、戦後の日本では、この形態が一般的だった。

 しかし、第2次世界大戦以前の日本においては、そうではなかった。とくに技能者は、企業間を転々と動くのがむしろ普通だった。

 ところが重化学工業の発展に伴い、労働者を1つの企業に定着させ、企業内訓練によって技術を高める必要が生じた。

 このために、終身雇用・年功序列型の仕組みを導入し、労働者の企業定着を図ったのである。労働組合も、職業別ではなく、企業別に形成された。

 私は、こうした経済体制を「1940年体制」と呼んでいる。

 第2次世界大戦後の高度成長期には、この仕組みがうまく機能した。それは、日本が先進国へのキャッチアップ過程にあったからだ。先進国のモデルがあったので、どのようなビジネスモデルを採択したら良いかは、明らかだった。

 それに向かって、企業の従業員は、あたかも家族のように一致団結するという体制が必要だった。

 しかし、1990年代頃から世界が大きく変わり、状況の大きな変化に対応することが必要になった。その局面で、日本型雇用体制は、大きな障害になってきたのである。

さまざまな制度改革が必要

 ジョブ型雇用はこれまでの雇用体制とは大きく違うので、簡単に導入できるものではない。

 とくに重要なのは、一部の企業だけがジョブ型雇用を導入しても、うまく機能しないことだ。なぜなら、ジョブ型は、労働者が一つの企業にとどまらず、別の企業に移ることが前提になっているからだ。したがって、多くの企業がこのようなこの体制を導入しないと、機能しない。

 企業間の労働力の流動性を進めていくためには、様々な制度の整備が必要だ。とくに重要なのは、退職金制度である。

 日本の場合には、一定の勤務年数にならないと満額を得られない場合が多い。これが、企業間流動性の大きな障害になっていると思われる。

 確定拠出型年金がこれを解決するが、まだ十分に普及しているとは言えない。

目的は「もらいすぎ中高年」対策?

 ジョブ型雇用の導入には、制度を変える必要があるだけでなく、人々の考え方をも変える必要がある。実際には、年功序列的賃金と終身雇用に頼りたいと考える人が多いかもしれない。

 事実、この制度には、さまざまな批判がある。企業がこれを導入するのは、労働コストの高い中高年従業員(いわゆる「もらいすぎ中高年」)の賃金を抑えたいからだという見方もある。

 ただし、いまの日本の雇用は、「終身雇用的」とはいっても、文字どおり生涯の雇用を保障しているわけではない。50代の後半になれば、次の職場を探さなければならない。そして、転職できても、元の企業に残れても、賃金が大幅に下がる。

 平均寿命が伸びて人生100年時代になってくると、むしろジョブ型のほうが長期間の所得稼得を可能にする可能性がある。

 企業別労働組合である日本の労働組合が、これに対してどのような評価をするかが注目される。

マネー現代

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最終更新:5/22(日) 6:01

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