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制度を知らずに手続きをすると大損することも!定年前の会社員が確定拠出年金で絶対にすべきこと

5/21 5:21 配信

東洋経済オンライン

 定年が近づくといろいろと考えなければならないことが増えてきます。59歳のAさんは、最近お疲れ気味。妻との会話はもっぱら老後のお金のことばかりで、これまでの疲れがどっとでてきたような気がします。Aさんは冗談交じりに「このままだと少ないお小遣いで死ぬまで働かされそうなのでなんとかなりませんか」と、ファイナンシャルプランナーである筆者の元に相談に来られました。

■60歳の定年後もiDeCoへの再加入が可能に

 最も気になるのは、会社の確定拠出年金をどうするかです。Aさんの会社では「企業型」確定拠出年金を退職金の一部として導入しており、これまでは会社が掛け金を拠出してくれていましたが、定年と同時に加入資格を失うので、その後のことを自分で考えなければなりません。

 これまで企業型確定拠出年金は、定年時に資金を一括で引き出して終了する方が大半でした。しかし法律が改正され、2022年からは定年後も確定拠出年金に延長加入ができるようになりました。

 実は「企業型」確定拠出年金は、法律上65歳まで加入可能なのですが、対象とする加入者の年齢は会社の規約によるので、Aさんには定年後に会社の企業型へ継続加入する選択肢はありません(この5月からは企業型確定拠出年金の加入可能年齢は70歳までに引き上げられましたが、実際の対象年齢は会社の規約により定められます)。

 するとAさんの検討事項は個人型をどうするのかということになります。「個人型」確定拠出年金はiDeCoというニックネームで親しまれていますからご存じの方も多いでしょう。企業型と異なり、加入者自身が掛け金を拠出するのですが、この掛け金は全額所得控除になるので、その分税金が得になると、近年人気が高まっています。

 今年になってiDeCoの加入可能年齢は60歳から65歳までに引き上げられました。例えばAさんが定年後も会社員として継続して働くのであれば、企業型を終了後、iDeCoに再加入することが可能です。

 「定年後も会社員として働くのであれば」と申し上げましたが、加入可能年齢の引き上げはすべての人が該当するわけではありません。iDeCoは「国民年金の被保険者」であることが加入条件なので、60歳以降の身の振り方によってiDeCoが継続加入できるかどうかが分かれるのです。

 国民年金と聞くと、自営業の方が加入する制度と思われがちですが、Aさんのような会社員は、国民年金に加入し、さらに厚生年金に加入しています。したがって、60歳以降会社員として働き続けると、国民年金の被保険者となります。

 Aさんは、継続雇用での給与を35万円程度と見込んでいます。もし仮にiDeCoの掛け金上限額である月2万3000円を積み立てると、所得税と住民税合わせ年間5万5200円の税制メリットが享受できそうです。

 ではiDeCoに継続加入できない人はどういうケースでしょうか?  例えば5歳年下の扶養の奥様は、Aさんが会社員でいる限り、これまでどおり第3号被保険者のままでいられます。しかし、第3号被保険者は59歳までなので60歳以降は国民年金被保険者ではなくなります。

 これは第1号被保険者、例えば自営業の方も同じです。国民年金の加入義務は59歳まで、60歳以降は「任意加入」となります。任意加入は過去の未払い保険料等を後払いするための制度ですから、20歳から60歳までの40年間、しっかり保険料を払った方は国民年金被保険者にはならず、したがってiDeCoへの加入もできません。

■iDeCoを継続する場合の「2つの選択肢」とは? 

 さて、Aさんの確定拠出年金の話にもどりましょう。少しでも老後のゆとりを増やすためにiDeCoは継続したいAさんですが、その場合2つの選択肢があります。①会社の企業型確定拠出年金の資金をいったん受け取ってしまってiDeCoに改めて新規で加入する。②これまで積み立てた企業型確定拠出年金の資金をiDeCoに移し、そのうえで積み立てを継続する方法です。

 Aさんの確定拠出年金の状況を拝見すると、「なんとなくよさそうだから」と選んだバランスファンドが好調で結構な利益がでています。筆者は、定年時に退職金と確定拠出年金の資金を一緒に受け取るケースと、確定拠出年金の資金を65歳以降に退職金とは別に受け取るケースの税金の違いをご説明しました。

 前者の場合、退職金と確定拠出年金が合算され、会社の勤続年数によって計算された退職所得控除を差し引きます。37年間勤めあげて退職するAさんの退職所得控除は1990万円です。Aさんに伺うと、その合算額はちょうどこの控除の枠内におさまりそうなので、課税されることなく受け取れそうだとわかりました。

 一方で、企業型の資金をiDeCoに移し、65歳まで積み立てを継続した後で資金を受け取ると、使える退職所得控除は60歳以降の加入期間、すなわち5年分のみとなります(わかりやすいように細かい条件は省きます)。

 なぜなら、60歳時点で退職金を受け取った際に使った退職所得控除の枠は使用済みとなっているからです。試算するとAさんの場合、企業型の資金をiDeCoに合算すると、5年分の退職所得控除200万円を上回り課税されてしまうことがわかりました。税金のことを考えると、企業型の資金は「老齢給付」として定年時に退職金と一緒に受け取ってしまったほうがよさそうです。

 実は「老齢給付」を受け取ってからiDeCoに再加入することが認められるのは、Aさんのように企業型を終了した方の特権です。もしAさんが定年まで加入していた確定拠出年金が企業型ではなく、iDeCoでその老齢給付を受け取ると60歳以降iDeCoへ加入ができなくなるという決まりがあります。しかし企業型とiDeCoは別物なので、いったん企業型を終了しても新しいiDeCoに再加入するのは問題がないのです。

 逆に、定年後に企業型確定拠出年金制度がある会社に再就職する場合、いったん企業型確定拠出年金から老齢給付を受け取ってしまうと企業型への再加入ができないので注意が必要です。

■「受け取り」か「資金移換」の実行前に運用見直しを

 さて、Aさんが老齢給付としていったん資金を受け取るにしろ、iDeCoに資金移換をするにしろ、今から取り組むべきことがあります。それは運用商品の見直しです。

 老齢給付の受け取りもiDeCoへの移換も、現在の企業型確定拠出年金の箱からお金を取り出すという行為になります。このとき、運用商品はすべて売却され現金化するという決まりがあります。つまり、なにも対策を講じずそのままにしていると、金融機関の手続きのタイミングで事務的に商品が売却、現金化されてしまうため、思わぬ損失を被ることもありうるのです。

 確定拠出年金は資金を企業型から企業型、企業型から個人型へ持ち運びができる「ポータビリティー」があることが特徴として挙げられますが、この際の「現金化」処理については、あまり知られていません。

 機械的に運用商品が売却されることで、想定外の損失を被るリスクを回避するためには、自分の意思で運用商品を定期預金など値動きのない商品に預け替えしていく必要があります。例えばAさんが保有しているバランスファンドは株式への投資比率が高いので、少しずつ投資信託を売却して、元本確保型にスイッチングしていけば、仮に老齢給付受取直前に株式市場が大暴落といった場合であっても、資金が目減りすることなく予定どおりの金額を受け取ることができます。

 ここまでをおさらいをすると、Aさんの企業型確定拠出年金は、定年時に「老齢給付金」として一括で受取り、その後iDeCoに再加入するというのが良さそうということになりました。もちろん、これからの生活設計には今後の働き方や退職金や老齢年金、その他貯蓄等も含め考えていく必要がありますので、それらは次回、改めてお話しすることにします。

 「確定拠出年金はメリットばかりをイメージしていましたが、意外と注意点もありますね」とおっしゃるAさん。特に今回の法改正で選択肢が増えた分、さらに複雑になった感はあります。やはり必要に応じて、専門家に相談されたほうがいいと考えます。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/21(土) 5:21

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