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スタートアップ企業が続々と参入、電動バイクの行方。航続距離や充電時間の長さをどう解決するのか?

5/20 7:11 配信

東洋経済オンライン

 カーボンニュートラルに向けた電動化の潮流は、バイクのジャンルにも徐々に波及しているが、まだまだ4輪車のように各メーカーがさまざまな新型車を市場投入するまでには至っていない。とくに車体が比較的小さなバイクでは、大容量バッテリーの搭載がむずかしく、充電時間のわりに航続距離が短く、出先などで充電する効率的なシステム作りやインフラ整備など、実用化への課題は山積みだ。だが、ZEV(ゼロエミッションビークル)に対する世界的なニーズは、バイクも例外ではない。電動車など、排出ガスを出さないモデルが求められていることは4輪車と同様で、将来的にはガソリン車からの切り替えニーズが高まることが予想されている。

 そんな時代の変化をビジネスチャンスと捉え、いわゆるスタートアップ企業が電動バイクのメーカーを立ち上げたり、海外製モデルの輸入販売を手がけたりする事例も増えてきた。バイク関連の一大イベント「第49回 東京モーターサイクルショー(2022年3月25~27日・東京ビッグサイト)」にも、「アイデア(aidea)」と「ジーム(XEAM)」という2つの新興ブランドが出展していた。アイデアは業務用のオリジナルモデル、ジームは一般乗用向けに海外製の電動バイクを輸入販売するといった違いはある。だが、いずれも国内4メーカー(ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキ)やBMWなどの輸入車メーカーといったメジャーどころではなく、インデペントで電動バイクを扱っている点では同じだ。

 ここでは、そうした2社が扱う製品や取り組みを紹介することで、バイク業界における新たなトレンドを紹介する。

■主に企業向けに電動バイクを販売する「アイデア」

 アイデアは、宅配など業務用の電動3輪スクーター「AAカーゴ」を製造販売するメーカーおよびブランドだ。東京都港区に本社を構える同社の設立は2019年、AAカーゴの発売は2020年というから、まさにコロナ禍の真っ直中に事業を開始。国からの自粛要請などの影響もあり、自宅での飲食が増え、フード関連のデリバリー需要が増加したこともあり、近年注目を集めている企業のひとつだ。

 AAカーゴの主な特徴は、一般的な宅配用バイクのようにルーフを備えていることだ。雨天時にも運転者があまり濡れることなく、荷物などの運搬ができる。安定性が高いフロント1輪、リア2輪の3輪構造を採用したほか、リアサスペンションには、4輪車のダブルウィッシュボーンを発展させた左右独立懸架式を装備。悪路や段差でもスムーズで安定した走行が可能だ。前後ディスクブレーキや13インチ大径ホイールなどの装備により、初心者からベテランライダーまで対応する高い安全性も確保する。

 車体後部には、長さ575mm×幅570mmの大型でフラットな荷台も備えることで、多様なタイプの荷物収納用ボックスにも対応する。なお、デザインはイタリア、生産は神奈川県相模原市にある自社工場で行っている。

■ラインナップが全4タイプ

 ラインナップには、原付一種(50ccバイク相当)の「α」と、原付二種(125ccバイク相当)の「β」があり、共通の車体に搭載するバッテリー容量を変えた各2タイプ、計4タイプを用意する。例えば、最もバッテリー容量が小さいモデルは原付一種の「AAカーゴ α4」。搭載するバッテリーの容量は3.85kWhで、1充電あたりの走行距離は89km(30km/h定地走行テスト時の値)。一方、最もバッテリーが大きい原付二種の「AAカーゴ β8」では、容量7.7kWhのバッテリーを装備し、1充電あたりの走行距離は89km(60km/h定地走行テスト時の値)から149km(30km/h定地走行テスト時の値)。バッテリーは車体固定タイプで、充電は標準装備の充電ケーブルにより200Vコンセントから行う。

 また、オプションの100V用充電ケーブルを使えば、家庭用100Vコンセント(アース付き)からも充電ができる(いずれも普通充電)。充電時間は、200V普通充電の場合、α4が約3時間で、β8が約6時間。100V普通充電の場合は、α4が約6時間、β8では約12時間だ。なお、価格(税込み)は87万7800円~109万7800円だ。

 AAカーゴの販売先は主に企業だ。実際にショーでは、「DHLジャパン」が荷物集配用、「ドミノ・ピザ ジャパン」が宅配用に導入した車両を展示。また、福岡の「イワタダイナース」が運営する地場の宅配ピザ店「ピザクック」の業務車両も並べられた。いずれも荷物収納用ボックスには、導入企業のロゴやイメージキャラクターなどが入れられており、荷物などの運搬だけでなく、走る広告塔としての役割も果たす。

 AAカーゴの航続距離や充電時間を考慮すると、走行可能な距離の一定ルートを走る配送業や、店舗から顧客の自宅など近距離を走行する宅配業などが主になるのは当然だろう。とくにコロナ禍以後は、eコマース普及も影響し、小口の貨物運搬への需要が増えたが、業者が対応するためには、4輪車よりも小型な3輪スクーターのほうが機動性も高い。DHLジャパンの導入例がそれに当たる。また、ドミノ・ピザ ジャパンやイワタダイナースのように、ピザなどの食品配達も同様で、店舗から顧客の自宅など近距離の宅配であれば、小まわりが利く3輪スクーターほうが使いやすい。しかも、導入企業にとっては、電動バイクのほうが環境負荷の軽減や騒音の削減といった社会課題に対する取り組みをアピールしやすい。

 ちなみにAAカーゴは、ほかにも日本マクドナルドが2020年10月より、同社「マックデリバリー」の宅配車として導入したことでも話題となった。有名企業が次々と導入していることも、同社のAAカーゴが近年注目を浴びている大きな要因だ。

 同社の電動バイクは、今のところ主にBtoB向けであるが、将来的には一般ユーザー向けモデルも視野に入れている。今回のショーで展示したコンセプトモデル「AA-1」がそれで、こちらもルーフ付きの電動3輪スクーターながら、AAカーゴと違いフロント2輪、リア1輪を採用。独自の車体構造を採用することで、2輪車の楽しさや手軽さと4輪車の安定性などを両立する次世代モビリティとして開発しているという。また、ルーフは開閉式にすることで晴天時の開放感も演出するなど、一般ユーザーが走りを楽しむための機能を採用する。ほかにもフロントスクリーンにはワイパー、車体後部には大型リアボックスを装備することで、ツーリングなどでの高い実用性も備える。スペック、発売時期、価格は未定だが、同社では、こうした一般ユーザー向けモデルも手掛けることで、新たな市場開拓を目指す方針だ。

■多種多様な電動バイクを取り揃える「ジーム」

 一方のジームは、福岡県福岡市を拠点とする「MSソリューションズ」が2017年に立ち上げた電動バイクブランドだ。主に中国やアメリカ、オーストラリアなど新興メーカー製の電動バイクを輸入販売している。取り扱いモデルは、50ccバイク相当の原付一種から、125cc相当の原付二種、350cc相当の小型二輪、1000cc相当の大型二輪まで幅広い。ジャンルもスクーターからロードスポーツ、オフロードタイプまでさまざまで、20機種以上もの電動バイクをそろえる(2022年3月末現在)。

 同社の製品でとくに注目したいのが、近年需要が伸びている原付二種モデルだ。例えば、オーストラリアのブランド「スーパーソコ(SUPER SOCO)」が製造するネイキッドスポーツ「TSストリートハンター」や、カフェレーサースタイルの「TC(ティーシー)」などは、ここ数年、東京都内でもたまに見かけるようになった。ちなみに、筆者が付き合いのある東京都世田谷区のバイク店「モトショップ功和」も認定正規販売店として最近取り扱いをはじめ、ユーザーは徐々に増えているという。

 TSストリートハンターやTCは、いずれもシート下に最大2個のバッテリーを収納できる。バッテリーは取り外し可能で、自宅の室内に運んで100Vの家庭用コンセントで充電可能だ。また、バッテリー1個のみ使用する場合は、シート手前のバッテリー収納部が小物を入れられるスペースにもなる。

 バッテリーの充電時間は1個あたり約8時間で、航続距離はTSストリートハンターがバッテリー1個で70km、2個だと140km。TCはバッテリー1個で55~60km、2個で110~120km。なお、最高速度はTSストリートハンターが75km/h、TCは60km/hとなる。価格(税込み)は、バッテリーの個数で価格が変わり、TSストリートハンターで39万9800円~49万9800円。TCが29万9800円~39万9800円だ。

■中国ブランドの電動バイクも販売

 ほかにも中国ブランドの「トロモックス(TOROMOX)」が製造する「ウッコ エス(UKKO S)」なども、ジームが手がける原付二種の電動バイクだ。こちらは、スーパーソコ製より車体が小型で、脱着式バッテリー1個を搭載。最高速度は90km/hで、航続距離は90km。バッテリーは自宅で100Vの家庭用コンセントを使い充電可能なことも同様で、充電時間は約11時間だ。なお、価格(税込み)は64万9800円だ。

 コロナ禍以降、バイクは密を避ける移動手段として見直され、市場は拡大傾向だ。とくに50ccを超え125ccまでの原付二種は、50cc以下の原付一種と比べ、速度制限がない一般道路での最高速度が60km/まで(原付一種は30km/hまで)、2段階右折も不要(原付一種は3車線以上ある道路で必要)など、使い勝手がいいことで人気が高い。ちなみに、原付二種も高速道路は走行できないが、最近は比較的近い郊外をツーリングするなど、レジャー用途で使うユーザーも多い。

 ジームの担当者によれば、同社が扱う原付二種の電動バイクは、やはり「コロナ禍以降に需要が伸びている」という。電動バイクは、ガソリン車と比べると航続距離は短いが、ユーザーの多くが「通勤・通学や買い物などの普段の足として購入する」そうだ。また、ガソリン車に乗ったことがないバイク初心者も多く、排出ガスが出ないエコな乗り物として購入するのだという。さらにユーザーの多くは、最初「電動バイクは価格が高い」というイメージを持っているが、前述のスーパーソコなどは20万円台から買えるモデルもある。「意外に安い」ということも、ユーザーの購入動機に繫がっているそうだ。

 ジームが扱う電動バイクは、2021年11月時点で、累計出荷台数が2400台を突破した。とくに一般乗用向けの電動バイクは、まだ需要が少なく、存在自体もあまり知られていないが、同社のモデルが徐々にではあるが、存在感を増してきていることだけは確かだ。

 ジームの担当者によれば、「企業への商用モデル販売」も課題のひとつだという。企業への導入が決まれば、ある程度まとまった台数の販売が可能となる。そのため、同社では、最近、スーパーソコも手がけるメーカー「ブイモトグループ(Vmoto Group)」社の原付二種スクーター「ブイモト・ブイエスワン(Vmoto・VS1)」の取り扱いも開始した。約150kgの耐荷重性能を持ち、主に荷物運搬などに使えるモデルだ。

 主な特徴は、車体前後にキャリアを標準装備するほか、オプションには70Lの大容量フロントバスケットも用意し、高い積載性を確保していること。バッテリーはシート下に2個収納でき、家庭用100Vコンセントのほか、アダプターを使えば200Vの普通充電にも対応する。最高速度は80km/h、航続距離は140km、バッテリーの充電時間は1個あたり10~11時間。価格(税込み)は64万9000円だ。従来のBtoCに加え、新たにBtoBの戦略を行うことで、同ブランドの知名度や市場における存在感などが、今後どのように変化していくのか興味深い。

■電動バイクの課題や混沌

 国内における電動バイクについては、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキの2輪車4メーカーが2019年4月に「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」を発足し、交換式バッテリーの共用化を進めている。各メーカーの電動モデルに搭載するバッテリーを共通の交換式にすれば、残量がなくなった際に交換ステーションなどに設置したフル充電バッテリーと交換するだけで、航続距離が短いことや充電時間が長いなどの課題を解決できるからだ。

 加えて、2022年4月1日には、上記の国内4メーカーとENEOSホールディングスの5社は、共通仕様バッテリーを搭載する電動バイクを使ったシェアリングサービス提供や、インフラ整備などを行う新会社「ガチャコ(Gachaco)」を設立。2022年秋をメドに、ホンダの交換式バッテリー「モバイルパワーパックe:」を利用したシェアリングサービスを東京などの大都市圏から開始することを発表している。

 また、この取り組みでは、ホンダのバッテリー交換ステーション「モバイルパワーパックエクスチェンジャーe:」を駅前など利便性が高い場所や、ENEOSのサービスステーションなどへ設置することも検討。これらにより、電動バイクの将来的な商用利用などに関する検証を行うという。

■バッテリー問題の課題解決が今後のキーワード

 こうしたメーカー側の取り組みは、まだ始まったばかりだが、仮にバッテリーが共通化され、交換ステーションなどインフラも整備されれば、ユーザー側の利便性が高まり、電動バイクの普及もかなり進むことが予想される。

 だが一方で、ここで紹介したジームの輸入車や、アイデアが手がけるオリジナルモデルについても、バッテリーの対応が問題となる。メーカーが使う共通バッテリーの規格などがもし一般的になれば、とくに企業向けの商用モデルでは、コスト面から見ても同様の仕様にしない限り、インデペンデント系モデルのニーズは減少するだろう。そう考えると、電動バイクを取り巻く環境は、4輪車のEVとは違うレンジも含め、まだまだ混沌としているのが実状だ。時代の変化を契機と捉えてチャンレジンするスタートアップ企業たちが、今後、バイクの電動化普及にどう貢献するのかも含め、動向を注視したい。

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最終更新:5/20(金) 7:11

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