東京国税局で国税職員として勤めた後、NSC(吉本総合芸能学院)に入学し、芸人の道へ。Twitterで税やお金に関する情報を投稿したことが話題になり、執筆や講演、メディアへの出演など各方面で活躍する、さんきゅう倉田氏。
コミュニケーション力、トーク力を活かした「お金」や「税」の話が「わかりやすい」と評判で、税理士会、法人会、医師会、各種学校、中小企業などで5000人以上に講演をするなど、人気を呼んでいる。
自他共に認める「6000人の吉本芸人の中で一番お金に詳しい芸人」の、さんきゅう倉田氏が、このたび、『お金持ち 貧困芸人 両方見たから正解がわかる! 世界一やさしいお金の貯め方増やし方 たった22の黄金ルール』を上梓した。「節約」「節税」「貯金」「保険」など、お金の基本的なことを初心者にもわかりやすく解説しつつ、お金持ち、お金がない貧困芸人両方の「実際に目撃したエピソード」が満載の1冊で、発売たちまち4刷を突破するなど話題を呼んでいる。
さんきゅう倉田氏が、「保険との正しい付き合い方」について解説する。
■「不要な保険」はお金を減らすだけ
社会人になったり、結婚や出産をしたり、年齢を重ねて健康が気になり始めたり、さまざまな事情で、「そろそろ保険に入ったほうがいいかな?」と考えることもあるかと思います。
そこで、「どうやって選べばいいの?」「そもそも保険に加入する必要があるの?」という疑問が出てきますが、「保険」に関することは案外、話題にしにくいトピックではないでしょうか?
「お金」が関係する問題であるゆえ、友人や知人に聞きにくい、個々人の考え方やライフステージとも深く関わってくるので、参考にできそうな意見が得られない、などの理由があるかもしれません。
専門家による「保険の無料セミナー」といったイベントも多くありますが、「とりあえず相談だけでも大丈夫かな?」「最終的に契約しなくてはいけないのでは……」と二の足を踏んでしまう、そんな人も多いのではないでしょうか?
もちろん、保険に加入する、しないは個人の自由です。しかし、いったん加入すれば、長期にわたって保険料を支払い続けることになるのは確かです。
なので、今回は、「保険との正しい付き合い方」を考えるうえで知っておきたいトピックを紹介します。加入を考えている人、あるいは「本当に必要なのかな?」と疑問に思っている人も、ぜひ参考にしてみてください。
「保険との正しい付き合い方」を考えるうえで、まずは保険の仕組みについて知っておきましょう。
【疑問①】保険会社はどうやってお金を儲けている?
みなさんご存じのとおり、保険というのは、亡くなったり病気になったり、いざというときにお金がもらえる仕組みです。では、そのときにぼくたちが受け取るお金を、保険会社はどのように生み出しているのでしょうか?
おわかりかと思いますが、そのお金は、保険に加入しているぼくたちが支払ったお金の中から産出されます。つまりトータルで考えれば、保険会社は損をしない仕組みになっているのです。
保険会社は、綿密なデータにもとづいて保険商品をつくっています。たとえば、保険加入者が10万人いたとして、そのうち1年間に亡くなるのが何人くらいなのか、統計などから確立を割り出しています。そのデータをもとに保険料や保険金を計算すれば、保険会社が損をしない保険商品をつくることができるわけです。
■保険で買えるのは「安心」という商品
トータルで考えると、加入者側が得をすることはありません。それでも、保険は安心を買うものなので、みんなこぞって加入します。
通常、病気や死亡といったマイナスの出来事に備えることから、「不幸の宝くじ」とも呼ばれています。
【疑問②】保険には、どんな種類がある?
保険の種類はじつに多様で、保険会社によってもさまざまですが、まず代表的なものに「生命保険」があります。加入者が死亡した際に、遺族などにその損失を保障するためのものです。
次に「医療保険」、これは加入者が病気やケガなどで医療を受けた際、そのときにかかる費用を保障するものです。
そのほか、「がん保険」や「学資保険」「介護保険」など、たくさんの種類がありますが、本記事では「生命保険」と「医療保険」を中心に、さらに掘り下げて考えていきましょう。
保険のタイプには、「掛け捨て」と「貯蓄型」があります。両者のメリット・デメリットについてご存じでしょうか?
【疑問③】「掛け捨て」と「貯蓄型」の違いは?
生命保険には、とてつもなくたくさんの商品がありますが、代表的なものとして次の3つに分けられます。
①定期保険……「掛け捨て」で保障期間が決まっている
②養老保険……「貯蓄型」で保障期間が決まっている
③終身保険……「掛け捨て」あるいは「貯蓄型」で、保障が一生涯続く
「掛け捨て」の保険は、保障期間に何も起こらなければ、お金をもらえません。
一方、「貯蓄型」は満期になると、一定のお金を返してもらえます。そのお金は「満期返戻金」と呼ばれ、返礼率が100%以上の保険なら、支払った以上の金額が戻ってくることになります。
保険会社がより儲かるのは「掛け捨て」の保険です。多くの人は「万が一」に備えて保険に入りますが、実際に「万が一」が起こることは少ないためです。
保険会社にとって「掛け捨て」の保険は「収益率」が高いので、保険外交員さんのインセンティブ(報奨金)も一般的に高くなります。それを理由に保険外交員さんが「掛け捨て」のタイプをすすめてくる可能性もあるという側面も、視野に入れておきましょう。
■お金が戻る「貯蓄型」は得なのか?
そう考えると、「『貯蓄型』のほうがいいのかな?」とも思えてきますが、「貯蓄型」は「掛け捨て」に比べて保険料が高いため、家計の負担が大きくなります。
また、満期返戻金が、これまでに払い込んだ保険料よりも大幅に増えることはほとんどありません。減ることもあります。もし、ちょっぴり増えたとしても、インフレなどで「長期的にお金の価値が下がった」場合、額面どおり増えたとはいえません。
保険は「若いうちに入ったほうが、掛金が安い」という人もいますし、事実そういう商品もありますが、でも生涯で支払うお金をトータルで考えると、若いうちから入ったほうが普通は多くなります。
買い物と同じで、「なぜ入るのか」「費用対効果はあるのか」を、よく考えてから決めるようにしてください。
では、じっさいのところ、生命保険や医療保険には、必ず加入したほうがいいのでしょうか?
【疑問④】生命保険には絶対に入るべき?
生命保険(死亡保険)は、「自分が死んだとき、残された家族のため」に入るものです。だから独身者には多くの場合不要ですし、配偶者がいても夫婦ともに経済力があれば不要といえます。
また、国の社会保障制度にも、家族が亡くなったときの経済的支援があり、家計を支えていた人が亡くなった場合の遺族年金、ひとり親のための児童扶助手当などが、それぞれ一定の条件のもとで支給されます。
ただ、ぼくがこれまで会ったなかで子どものいる人は、自分がいなくなった場合に備えて、なんらかの保険に加入しているようでした。
【疑問⑤】医療保険に入っていないと、どうなる?
医療保険に加入していなければ、病気やケガをした際に、多額の出費が必要になるのでしょうか。
じっさいは、「高額療養費」という国の制度により、かかった医療費の自己負担が高額になった場合、一定以上の金額が払い戻されます。
たとえば、ひと月に100万円の医療費がかかったとしても、支払う金額は9万円弱で済みます(年収が約370万~約770万円の場合)。なので、医療保険に入っていない人が、もし大病を患っても、自己負担額は膨大にはなりません。
ただし、預貯金が少なく、頼る家族がいなければ、検討する価値はあると思います。その場合は「3カ月は歯医者も含め、病院に行かないようにしてください。加入できなかったり、保険料が上がったりする場合もあるので」という外交員さんの話も参考にしてみてください。
■加入するなら「費用対効果」を考えて
保険は安心をお金で買う「金融商品」です。いったん加入すれば、長期にわたって安くない保険料を支払い続けることになるので、お金のことを専門にするぼくとしては、「不要な保険」でお金を減らしてしまっては、本末転倒だと思います。
そうならないためには、保険や国の制度についての「正しい知識」が必要です。「みんなが入るから」「いざというとき安心だから」という理由だけで加入せず、「自分に本当に必要なものかどうか」よく検討し、自分の資産形成に有利な方法を選択するのが、お金が貯まる人への近道です。
ぜひ「お金にまつわる正しい知識」を身につけつつ、自分にとって「保険との正しい付き合い方」を心がけてみてくださいね。
東洋経済オンライン
最終更新:5/19(木) 5:11
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