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ウクライナ危機は深刻でも、日本株を覆う「3つの霧」は徐々に晴れてきている

5/18 19:01 配信

東洋経済オンライン

 日経平均株価は年初の1月5日に2万9332円(終値、以下断りのない限りは同ベース)をピークに3月9日には2万4717円まで急落した。ここで一番底を打ち、その後は一気に3月29日に2万8252円にまで大幅に上昇した後再び下落、ジグザグしながら2万6000円台で推移している。

これは、前回寄稿したコラム「日経平均『年内3万円超』の可能性は十分にある」(4月22日配信)で予想したイメージどおりの展開になっている。前回のコラムでは「5月上~中旬までは絶好の押し目買いの好機になる可能性が高い」と予想。今後の日経平均メインシナリオは「3月を今年の大底として、年末にかけて(年後半)上昇するイメージ」としつつ、「5月上旬までに押し目を狙いたい」とした。

 私は、日経平均は5月12日に終値2万5748円で二番底を打ち、すでに上昇に転じた可能性が高いとみている。なぜなら、4~5月に晴れるとみていた「ウクライナ危機(5月9日がメド)」「アメリカのFOMC(5月4日以降)」「企業決算(4月中旬~5月中旬)の「3つの霧」のうち、「ウクライナ危機」以外の2つの霧が晴れてきたからだ。

■「FOMCの霧」は5月12日に晴れた? 

 まずはFOMCの霧だ。実は、今年初からの日経平均は、これまでFOMCの前後で繰り返し底を繰り返しつけてきた。1回目は1月26日のFOMC(3月利上げ示唆)の翌日1月27日。年初来安値となって短期底打ちをした。次は3月16日のFOMC(0.25%利上げ開始)の1週間前だ。このときは3月9日に年初来安値をつけ底打ちした。

 そして直近は5月4日のFOMC(0.50%利上げ、QT=量的引き締め開始決定)の「約1週間後」である5月12日だ。どうやら、日経平均はこの日に二番底を打った可能性が高いとみている。その理由は、楽観的すぎた株式市場参加者が、今後の利上げとQT開始(6月~、月950億ドル上限、3年間)という当面の悪材料をやっと織り込んだとみているからだ。

 二番底がFOMC直後ではなく12日までずれ込んだのは、ウクライナ危機の長期化と中国のロックダウン(都市封鎖)の影響とみている。これについてはのちほど解説しよう。

 その前に、改めて今年のFOMCの流れを整理してみよう。そもそも、ジェローム・パウエルFRB議長は2021年夏にインフレ圧力は「一時的」だと強調していた。だが、2022年1月26日のFOMCで「マクロ環境に応じて謙虚かつ機敏に政策変更する」と方針転換を示し、3月利上げを示唆。そしてそのとおり、3月16日のFOMCで0.25%利上げを開始した。

 4月5日にはラエル・ブレイナードFRB理事(当時)から「念入りに利上げを進める」「5月にも早いペースでQTを始める」「インフレが数値で正当化されれば、より強い行動をとる用意がある」など、利上げとQTを積極的に進めると受け取れるタカ派的発言があった。

 その翌日の4月6日には3月FOMC議事要旨が公表された。ここではQTは前回(2017年開始)の2倍以上のペースで進めることも示され、ブレイナード理事だけでなく、FRB全体がタカ派だと確認された。また、その後は5月のFOMC会合からQTを開始(月950億ドル上限、3年間)することが明確になった(実際には6月から開始)。

 これらが決め手となって、10年国債利回りは急上昇。株式マーケットには急落に拍車がかかり、4月12日の日経平均株価は2万6334円まで下落した。だが、4月13・14日の2日間で日経平均株価は急騰しており、FOMCでの利上げやQTの霧は、短期的には晴れた。その後、5月4日のFOMC(連邦公開市場委員会)では通常の2倍となる0.5%の利上げと、国債などの保有資産を減らすQTの6月開始を決めた。

 パウエルFRB議長は記者会見でアメリカ国民向けにインフレ抑止に強い決意を示した。具体的には、今後数回(少なくとも2回)の0.5%利上げを予告。景気を加速させたり、冷やしたりしない金利水準(中立金利)を上回る利上げを示唆した。今後のソフトランディングの実現性を注視したい。

■「企業決算の霧」も5月中旬までに晴れてきた? 

 「企業決算の霧」も大分晴れてきた。5月も中下旬にさしかかり、国内上場企業(3月期本決算企業)の決算発表や説明会も最終盤だ。円安や資源価格上昇の恩恵を受けた企業を中心に、前2022年3月期の上場企業の決算は全体でも大幅増益となった。

 もちろん注目は新年度の会社計画だ。為替やコストアップ要因などを厳しく見積もり、当初のアナリストのコンセンサス予想から下方修正され、短期的には株価が下落する企業も多くなっている。だが、それが保守的な会社計画によるものなら、結局は悪材料出尽くしとなりそうだ(逆に、期待できないのは算出が困難などの理由で「非開示」とした企業だ)。

 特に期待できるのは、前年のハードルが高い企業だ。第1四半期(4~6月)に続き、上期(4~9月)いっぱいまでは前年同期比マイナスで推移していても、下期以降は、原燃料高の落ち着き、価格転嫁、半導体不足をはじめとするサプライチェーンの混乱収束などが見込める企業についてはかなりの業績回復が期待できそうだ。

 では、3つめの霧であるウクライナ危機はどうだろうか。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、5月9日の「ロシアにおける第2次世界大戦の対独戦勝記念日」に一方的な勝利宣言をしなかった。逆に、マーケットから危惧されていた核兵器の使用などにも言及はなかったが、事実上の停戦とはならなかった。

 このことから、現状のウクライナ危機は、深刻化こそ避けられたものの、問題の段階的縮小(停戦合意による危機緩和)までには至らなかった。逆に対立激化(消耗戦長期化)の可能性が高まったとみている。ただ、予断は許さないものの、極度の緊張状態はいったん落ち着いてきているようにもみえる。

 周知のとおり、ロシアはウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と名づけている。国際法での「戦争」表現を使わないことで事実上、攻撃を正当化している。今後、もし、ロシアが「戦争」と表現すれば、核兵器や生物兵器など超法規的な措置をとる危険性も高まる。今は言ってみれば、土砂降りの雨が降っているが、最低限の視界が開けてきたような状態だろうか。

■ロシアの「着地点」はどこなのか? 

 だだし、中期的には、ロシアの「着地点」を見極める必要がある。それにあたっては以下の4つのポイントを見極める必要がある。

 すなわち、①ロシアが侵攻しているウクライナの東部地方と南部海岸地域はどのような決着になるのか? ②NATO加盟を申請しているスウェーデンとフィンランドに対しロシアは侵攻するのか? ③ロシアは欧米諸国(NATO加盟国)まで侵攻するのか? ④強力なパートナーシップ宣言をした中国はロシアに対して慎重姿勢をとっているが、今後どのような方向性をとるのか? である。

 一方、この間、新たな霧も発生している。「中国のゼロコロナ政策」の行き詰まりだ。株式マーケットは、3月28日から始まった上海のロックダウン(都市封鎖)を受け、中国経済が致命的な打撃を受ける可能性を心配している。

 すでに習近平国家主席は、5月5日に共産党最高指導部の会議で演説し、「わが国の防疫政策を疑い、否定するあらゆる言動と断固戦う」と宣言している。それを受け、上海市でも急遽、市・区で「大上海防衛戦必勝動員会」を開き、一段と厳しい姿勢でゼロコロナに臨む決意を表明したようだ。

 どうやら、中国は感染を抑え込み「上海市民の勝利」を皆でたたえ合う未来しかゴールを描いていないようだ。だが、習近平主席にとっては「必要な犠牲」であり、決して敗北ではないだろう。

 なぜなら、同氏にとってゼロコロナ政策は、新型コロナウイルスを抑え込み、北京五輪を成功させた大きな看板政策であり、面子(メンツ)がある。しかも「欧米に比べ、中国製のワクチンは効かない」との報道もあり、そう簡単にこの政策を止めるわけにはいかないようだ。

 この背景にはもちろん、今年秋(10~11月)に開催予定の「中国共産党大会」がある。ここで習近平主席は「党総書記」のまま5年延長(3期目続投)か、「党主席制」を導入する予定なのだ。

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が「持続可能ではない」と事実上の方向転換を促しても、「中国は世界でコロナ対策で最も成功している国家のひとつ」(外務省)という見解を変えるつもりはない。

 中国のコロナ収束がいつになるかは今のところ特定できない。だが、上海市が「6月中に市民生活や企業活動の正常化を目指す」などと表明しているとおり、早ければ6~7月、遅くとも10~11月の「中国共産党大会」にはコロナが収まるとみている。この霧は今が最悪であり、やはり徐々に晴れてくると見る。

■日本から新たな光? 「インベスト・イン・キシダ」

 最後に、「インベスト・イン・キシダ」に触れたい。5月5日に岸田文雄首相は、英国の金融街シティーで「日本はこれからも力強く成長を続ける。安心して投資をしてほしい。インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」と日本への積極投資を呼びかけた。安倍晋三元首相がアメリカのNY証券取引所で呼びかけた「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは買い)」を彷彿とさせる演説をした。

 この「新しい資本主義」の中身は7月10日に予定されている参議院選挙の前までにハッキリするだろう。「改革」(リフォーム)は日本株マーケットに新たな光となるはずだ。これは、海外投資家が大好きなキーワードだからだ。暑い夏になることを期待したい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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最終更新:5/18(水) 19:01

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