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苦境の「プロジェクター」が工場用で見出す光明

12/27 9:01 配信

東洋経済オンライン

 部品にみたてた小石やレゴブロックの上にプロジェクターが映像を投影すると、ロボットが正確に物体を取り上げ、素早く仕分けしていく。

 こうしたピッキングロボットが物体を認識するのに一役買っているのが小型プロジェクターだ。カメラの物体認識をプロジェクターの投影映像で手助けし、大きさ、形状がさまざまなものを正確に把握できる。従来は決められた位置に部品を置き、ロボットの認識を手助けする必要があったが、そうした手間と時間を省くことができる。

 プロジェクターといえば、オフィスでの会議で資料を投影するのが主流だ。一方でカシオ計算機では、工場など製造現場での活用に力を入れている。

 ピッキングロボット以外でも、人が作業する際に、作業台にガイドの映像を投影するなどの用途も広がっている。こうした用途の小型プロジェクターは19万円程度と、会議室向けなどのプロジェクターに比べ高価ではある。だが、A5サイズで重さも1キロ程度と設置場所に制約がないことがうけ、東京エレクトロンデバイスや沖電気工業などがスマート工場向けに採用している。

■生き残りをかけた事業転換

 プロジェクター市場は2014年の700万台超をピークに年々縮小を続けており、生き残りは厳しい。カシオも2020年11月、赤字が続いていた中型プロジェクター事業からの撤退を決めた。

 市場縮小の原因は液晶をはじめとしたフラットパネルディスプレイ(FPD)の台頭だ。会議室などで使うビジネス向けがプロジェクター需要の大多数を占めるが、こうした需要は大型化と価格低下が急速に進むFPDにとって代わられつつある。

 JBMIA(一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会)によるとデータプロジェクターの世界出荷台数は2019年に約600万台だったが、2020年には460万台に、2021年も500万台弱の出荷にとどまる見込みだ。台湾のBenQ(ベンキュー)などが低価格かつ高性能な製品を投入しはじめたことにより価格競争も激化している。

 衰退市場に見切りをつけ、カシオが代わりに打ち出したのが小型プロジェクターへの特化だ。2021年2月に持ち運びに優れたビジネス向けの製品を、9月には製造ロボットなどに組み込んで使う製品を投入した。

 また、従来の市場に成長はないなかで目をつけたのが、プロジェクションAR(拡張現実)を活用する市場だ。現実空間に映像を重ね合わせるプロジェクションARは、複数人で同時に見られるなどの利点がある。スマートファクトリーに加え、ビル内で道案内を投影するスマートビルディングなど多くの市場で成長が期待されている。

 小型プロジェクターで磨きをかけたのが、防塵性能や光源といった独自技術だ。

 特に防塵性能は重要な性能の1つ。工場や屋外での使用には、冷却ファンを通じた埃などの異物侵入がつきものだ。カシオの小型プロジェクターは光源と投影方式を工夫することで、光源周辺を密閉しながら冷却を行うことができる。

 もう1つの肝は光源だ。プロジェクターの光源は、水銀ランプ光源やレーザーなどの半導体光源の2種類。カシオは半導体光源のなかでもレーザーとLED光源を組み合わせることで、明るく、小型、消費電力が低いプロジェクターを生み出すことができた。カシオの小型プロジェクターの明るさは2000lm(ルーメン)とサイズに比較して明るいのが特徴だ。他社の製品では手のひらサイズのプロジェクターもあるが、800lmほどと明るさが物足りないとの声もある。

 カシオの古川亮一開発本部イメージング統括部長は「他社が同様の小ささ、明るさ、加えて防塵性能を備えたプロジェクターを開発するは難しい」と胸を張る。今後も対応温度や耐水性など環境性能を向上させることで屋外での活用の幅を広げる方針だ。

■成長市場を切り開けるか

 小型プロジェクター事業について「できれば3~5年後を目安に年100億円の売り上げを目指したい」と古川氏は語る。だが、あるプロジェクター大手幹部は「台湾など海外企業は低価格なだけでなく、日に日に技術が向上している」と語る。

 実際に海外メーカーのプロジェクターには小型で明るく、低価格な製品が増加しており、カシオの独自技術がいつまで優位性を保てるかはわからない。特に成長が期待されるスマートファクトリー市場をいち早く切り開き、市場のスタンダードとなれるかが勝負の分かれ目になる。

 製品の販売だけでなく、2022年以降はソリューション提供にも取り組む。カシオはかつてデジタルカメラも手がけていたことから、画像認識関連の技術には一日の長がある。プロジェクションによる出力だけでなく入力技術も組み合わせて付加価値を加える。小型プロジェクターでの成功を足がかりに医療用カメラなど既存の独自技術を生かした新規事業の創出を加速したいところだ。

 働き手が減少するなか、製造効率をDX(デジタルトランスフォーメーション)で向上させるニーズは高い。カシオの推計によると全世界で製造DX化などスマートファクトリー分野は2024年までに約250兆円まで成長する見込みだ。こうした流れをつかみ、課題事業を成長事業に変えることができるか。真価が問われている。

東洋経済オンライン

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最終更新:12/27(月) 9:01

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