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話をちゃんと聞かない人が頼られるはずもない訳

12/9 14:01 配信

東洋経済オンライン

3坪のたこ焼きの行商から、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店を作り、ユニークな人材育成法をこれまで延べ45万人に伝えてきた永松茂久氏。その永松氏がコミュニケーションの秘訣を明かし、2021年最も売れた会話の本『人は話し方が9割』の続編『人は聞き方が9割』より、「聞くことの重要性」について解説します。

■「ねえ、聞いてる?」問題

 「ねえ、あなた、ちゃんと聞いてる?」

 「うん、聞いてるよ」

 「聞いてない!  あなたはいつも私の話をちゃんと聞いてくれないじゃない」

 「ちゃんと聞いてるだろ!  何が不満なんだよ?」

 このやり取りは古今東西、日本全国至るところで繰り広げられている、誰もが一度や二度は目にした、もしくは体験した光景でしょう。

 時代が変わり、男性がソファに座って新聞を読んでいた姿が、スマートフォンやパソコンに変わっただけの違いで、この心理戦はずっと繰り広げられています。

■「聞く」ということに対するすれ違い

 この会話例の男性のように「話を聞いてる」と言う人の多くは、本当に話を聞いています。

 ただし、「聞く」ということの解釈に違いがあるのです。

 「話を聞いてる」と言う人の多くは「言葉」を聞いています。つまり内容はしっかりと把握できているのです。

 しかし、「話を聞いてほしい」と言う人の多くは、その話の奥にある「感情」を聞いてほしいのです。

 片方は言葉を理解するために聞く。そしてもう片方は感情を受け止めてほしくて話す。この2つの目的の違いがすれ違いを起こしてしまうのです。

 そしてこれは男女だけでなく、上司と部下、友人関係、親子、すべてのコミュニケーショントラブルの元となる違いなのです。

 このすれ違いがゆえに人間関係がうまくいかなくなるケースは山のようにあります。

 さて、ではここで、これまでの経験を振り返って、「この人の話は面白かったなあ」「あの人は話し上手だったなあ」とあなたが思う人のことを、思い出してみてください。

 テレビの人気芸人、飲み会の場でみんなを笑わせる人、職場のプレゼンテーションで周りの人を1人残らず納得させる人、思わず時間を忘れて話に聞き入った人。

 こうした人は印象に残りやすいので、過去を遡ると、誰もが数多くの人を思い出すことができるのではないでしょうか? 

 さて、では次に、「この人は聞き上手だったなあ」と思える人を思い出してみてください。

 「この人に聞いてもらうと、つい話しすぎちゃった」

 「この人は自分の話をしっかりと聞いてくれた」

 と思える人です。

 さて、いかがでしょうか。

 話し上手な人は簡単に思い出すことができても、聞き上手な人はかなり記憶を掘り起こしてみないと思い出すことができなかったのではないでしょうか? 

 そうです。

 それくらい聞き上手な人というのは数が少ないのです。

■安心感からすべてが始まる

 2020年の初頭に始まった新型コロナウイルスの大パニック。間違いなく歴史の教科書に載るであろうこの一大事は、私たちの想像をはるかに超える長期戦になり、世の中に大きなダメージを与えました。

 こうした背景も含め、私たちの生きる世の中、そして思考の中に大きくはびこった感情があります。

 それは「不安」。

 ここから先、自分たちの生活はどうなるのか? 

 仕事は?  世の中はどう変わっていくのか? 

 いつまでこのパニックは続くのか? 

 こうした数多くの不安が私たちの頭の中に居座ってしまいました。

 もともと日本人はどちらかというと、老後の不安、職場の悩み、仕事の先行きなど、ただでさえ安全第一の不安体質な民族です。これに加え、コロナ禍がその気質をさらに強固にしました。

 不安になれば、当然ですが、人が求めるものはその逆のものになります。

 不安の逆にある、今、人が求めているもの、それは

 「安心感」

 です。

 そしてこの安心感こそが、社会に対してだけでなく、ふだんの生活において私たちを取り巻く人間関係全般において、いちばんの基礎になるものなのです。

 人にはいろんな感情があります。プラスの感情だけを見ても、興奮、高揚、喜び、幸福、達成感など、他にもたくさんあります。

 しかしその中でいちばん初めの基礎となるものであり、人がいちばん求めているもの、それは安心感なのです。

 マズローという歴史的に有名な心理学者が人間の欲求を5段階に分けて表現したのですが、(生命の維持に最低限必要な「生理的欲求」をのぞいて)いちばん基礎になる欲求のベースを「安全の欲求」と表現しています。

 このことからも、安心感という感情が私たちにとっての基礎になるということが証明されています。

 つまり、人は安心感なくして他の感情を満たすことはできないのです。

■人はみな話したい生き物

 人はなぜそこまで安心感を求めるのか? 

 この疑問を持っていた私にある人がこんなことを教えてくれました。

 「永松さん、人が生まれていちばん初めに体験する感情ってなんだかわかりますか?」

 「うーん、なんですかね?」

 「それは『排出』の感情なんです」

 「排出?」

 「そう、排出。まず生まれていちばん初めにすることってなんですかね?」

 その方の答えはこうでした。

 私たちが生まれていちばん初めにすること、それは「オギャー」と泣くことです。

 そして文字通り排出、つまりおしっこやうんちをすることで、赤ん坊は無意識のうちに「気持ちいいー」という感情を体験するということでした。

 学びの場合はインプットから始まるのですが、本能的な視点で見ると、人間の感情はまずアウトプットから始まるのですね。

 さて、では最初にアウトプットすることが快感である私たち人間にとって、気持ちいいことってなんでしょうか?  答えは簡単。

 それは自分の思いを口にすること、つまり「話す」ということです。

 人によって口数が多い、少ないという差はあるにせよ、人は話すということによって心理的な快感を得ているのです。

 自分自身を振り返ってみるとすぐわかると思いますが、苦しい時や行き詰まった時、涙を流したり、思いを口にしたりすることで楽になることはたくさんあります。

 脳科学的な研究からも、人は聞いている時より、話している時のほうが心理的快感を得ているということは、数々の臨床データで証明されています。

 本来、生まれ持って人は話したい生き物なのです。

■コミュニケーションの達人だけが知る人間の3大心理

 2019年の9月に発刊された拙著『人は話し方が9割』に、人間の3大心理を書きました。この3大心理をあらためて紹介すると、

 「人は誰もが自分のことがいちばん大切であり、自分にいちばん興味がある生き物である」

 「本来、誰もが自分のことを認めてほしいし、自分のことをわかってほしいと熱望している」

 「人は自分のことをわかってくれる人のことを好きになる」

 というものです。

 つまり、人はみな、自分の話に共感してくれる人を求めていると言い換えることができます。

 人は誰もが自分の話を聞いてほしいという欲求を生まれながらに持っているということは、端的に言うと、「聞く人」は、この日本に住む1億2500万人の人から求められる存在になるということです。

 それだけ聞く人の存在には希少価値があり、今、その価値はさらに大きく上がっているのです。

東洋経済オンライン

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最終更新:12/9(木) 14:01

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