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「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた

12/6 7:31 配信

東洋経済オンライン

前回11月22日配信のコラム「2022年に株価を下げる『6頭の熊たち』に注意せよ」では、「年内にもう少しだけ日米などの株価が上がり、その後来年に落ちるという展望だ」と述べ、2022年に襲いかかってきそうな「6頭の熊たち」(株価下落要因)について触れた。

 一方で、同コラムでは「年内の上昇は確実なものではないし、当面の株価上昇幅もそれほど大きなものではなかろう。とすると、目先の株価上昇をあまり欲張らず、あくまでもいったんの下落相場に向けての『心構え』を、そろそろすべき局面に差し掛かっているのだろう」とも述べた。はたして、読者の皆さんはどうだったであろうか。

■予想できなかった株価急落

 とはいっても、11月26日以降の世界的な株価急落は、筆者にとって事前にまったく予想することができなかった。ごく最近の日経平均株価の戻り高値は11月16日の2万9808円であったが、12月2日の終値は2万7753円(いずれも終値ベース)と、その間は2055円幅の下落となっている。

 この市場の波乱は、世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まったことによるものだ。主要国の株価は下振れし、欧米の長期金利は低下、VIX指数(恐怖指数)など市場の変動を示す数値は急上昇した。為替市場では「リスク回避のための円高」が進行。国際商品市場では多くの商品価格が下落した。

 金が買われてもいい局面のはずだが、金価格に動意は乏しい。これは、投資家が価格変動リスクをあまりにも恐れるあまり、「金ですら買いたくない」という事態に陥ったためだろう(リーマンショック時にも、同様の現象は生じた)。

 このような世界株価の波乱は、次の2つの異なった流れが同時進行したことによって引き起こされたと考えている。

 それは、(1)新型コロナウイルスの変異株流行という悪材料からリスク資産が短期的に売られすぎた、(2)来年本格的に生じると見込んでいた中期的な株価下落基調が想定以上に早く始まった、という2つの流れである。

 (1)からは、株価は目先反発すると考えられる。しかし(2)からは、すでに来年の下落へ向かっていると解釈できる。その2つを合わせて検討すれば、代表的な指標である日経平均は目先戻りがありうるが、その戻りはますます小さなものになったということなのだろう。3万円台の再回復については、悲観的にならざるをえない。

■短期的には「売られすぎ」の状態

 その2つの同時進行している動きのうち、まず短期的に売られすぎだという点を述べよう。

 世界株安のきっかけとなったのは、日本時間11月26日朝に伝えられた、南アフリカで新型コロナウイルス変異株(オミクロン株)の感染が広がっている、との報道だ。オミクロン株には「従来の新型コロナウイルスに比べて多くの変異箇所がある」と明らかにされたため、市場での不安感が膨らんだ。

 しかし、変異が多いことが具体的に脅威になるかはわからない。「感染力が高まっている」との観測が唱えられており、実際にアフリカ以外の諸国でも市中感染の例が報告されている。

 これに関して、南アフリカ医師会は「オミクロン株の感染者は軽症で、医療資源を圧迫していない」と述べている。またWHO(世界保健機関)は、今のところオミクロン株への感染で死者の報告はない、と公表した。

 つまり、最近の市場では「オミクロン株の登場が大変なことなのかそうでないのかはまったくわからないが、不安だからとりあえず株式は売っておこう」という反応が大勢だったと推察される。

 また、株価急落が始まった時期は、アメリカなどで11月25日の感謝祭による株式取引などの休場があり、売買高が薄くなりがちなタイミングであった。そこに売り物が出て、大きく株価が下振れし、それがさらなる売りを招いた、といった面もあっただろう。予断は禁物だが、先週の後半にはやや株価下げ止まりの様相も表れてきたようにも思われる。

 ただ、熊(株価下落要因)が早めに現れ、それによって株価下落基調がすでに始まっているという面もあると考える。どうやら、6つの熊のうち、1番目と3番目の熊の登場がどうも早いようだ。

■2つの「供給サイドの問題」が深刻に

 1番目の熊とは、アメリカでのテーパリング(量的緩和縮小)が、大幅な金融緩和を前提としてきた企業や投資家の行動を逆回転させる、というものだ。

 テーパリングそのものは、11月2~3日のFOMC(連邦公開市場委員会)で決定し、開始されている。だがジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、11月30日の議会上院での証言で「資産購入を数カ月早く終了することを検討するのが適切だ」と語り、次回のFOMC(12月14~15日)でテーパリング加速を議論する意向を示した。

 加速の背景として、議長は「より持続的なインフレのリスクが高まっている」ことを挙げた。加えて「インフレに関して見落としていたのは供給サイドの問題の予測の難しさだ」とも指摘している。

 供給サイドの問題として注目されているものは、主として2つある。1つはアメリカで景気回復に伴う求人が急増しているが、労働者が集まらないという、人手不足の問題だ。

 労働市場に復帰しない人が多いという背景には、コロナ感染を恐れて、通勤時や勤務時の感染リスクを避けたいため、リモートワーク中心の仕事への転職を考えているものの、なかなか希望に見合った仕事が見つからない、などの要因が挙げられている。

 人手不足のため賃金が上昇して、それが物価を押し上げるという懸念があるうえ、物流(トラックの運転や港湾の荷揚げなど)面では小売り段階での物不足を引き起こすという不安も強い。

 もう1つは、欧州諸国などが「脱炭素」と声高に叫び続けるため、原油などのエネルギー生産業者が将来を悲観視して、開発投資を抑制し、リグ(油井の掘削装置)の稼働も大きく増やさないため、エネルギー供給が通常より抑えられてしまっているという現象だ。

 ただ、そうしたインフレにFRBが対応するといっても、労働者を増やすことも原油や天然ガスを生産することもできない。FRBができることは、金融緩和縮小により景気を抑制し、需要を減退させて、物価を抑えることだけだ。これは経済や株価にとって好ましくはない。

 また、前回のコラムで、金融緩和を前提とした投資家の行動が逆回転する例として、「リスクの高い社債の購入も手控えられる」だろうし、「アメリカの企業は社債などで借り入れた資金を自己株買いに充ててきたため、やはり株価を圧迫する」とも書いた。

 実際、11月末にジャンク債(格付けがBBプラス以下の債券)の価格指数が急落した、との報道も目にする。アメリカの金融市場のきしみが始まっているようだ。

 さてもう1つ、3番目の熊として挙げたのは「中国に関する多数のリスク」だ。そのなかでは、「『共同富裕』を掲げての突然の産業規制が、世界の投資家の中国からの資金逃避を増加させる」と指摘した。

 庶民の「儲けすぎ」との怨嗟はIT起業家などに向かっていたため、中国政府はアリババグループに対し、同グループ傘下のアントグループの上場を中止させるなどの規制を強めていた。こうした中国政府の姿勢が、同国IT企業がアメリカで新規上場することを禁止する、あるいは上場を廃止させる、との思惑を呼んでいた。

 加えて、米中間の対立が深刻化する中、アメリカのSEC(証券取引委員会)が12月2日、同国に上場する外国企業向けの新規制を公表した。これにより、中国企業が当局の検査に応じない場合、上場廃止になる可能性が生じた。そこへ3日に、滴滴出行(ディディ)がアメリカでの上場を廃止すると決定したため、中国銘柄の株価が総崩れした。

 「儲けすぎ」との中国庶民の不満は、不動産業にも向かっている。すでに中国恒大集団の資金繰りの苦境は騒がれ始めて日が経つが、4日の報道では「当局の指導と監督の下で、同社が外貨建て債務の再編交渉に入る」と伝えられている。

■「国内優先」の身勝手な姿勢が中国からの資金逃避に

 ここでいう債権保有者は中国以外の投資家などだと推察され、当局が事態収拾に向けて一歩踏み込んだとも考えられるが、要は「外国向けの債務の利払いや元本返済を一部踏み倒して、国内の債権者を守ろう」といった虫のよい話だ。このため、海外の債権者は不満を唱えているもようだ。ますます「世界の投資家の中国からの資金逃避」が膨れ上がるだろう。

 こうした動きは、中国株や中国企業の社債、さらにはそれらを組み入れているファンドなどへの投資家に打撃を与え、他国市場にもその悪影響が現れうる。

 英国のフィナンシャル・タイムズ紙の4日付けの記事 “Stonk market update” (英語で stonk という言葉は本来存在せず、株式(stock)について皮肉めいた意図がある際に使われる)では、一時は米中のIT関連企業などに積極的に投資して時代の寵児になった、アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏の写真を、わざと逆さまに掲げている。そのこと自体は悪趣味だと感じるが、これも1つの潮目の変化を示しているのかもしれない。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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最終更新:12/6(月) 7:31

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