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「1日3食」食べる人に密かに迫る老化のリスク

12/6 15:01 配信

東洋経済オンライン

老化の研究や理解はまだ黎明期とはいえ、ひと昔前と比較すると劇的な進歩をとげている。マウスでの実験ではあるが、一回のリセットで眼球や網膜の再プログラム化ができ、視力を回復することができるというから、革命の一歩手前と言っても過言ではない。
30年前から老化研究に心血を注いできたデビッド・シンクレア氏は、「老化の多くは遺伝子ではなく、いかに生きるかである」という。いかに生きるかが、遺伝子のスイッチのオン・オフに影響を与えるので、彼自身は最も健康的な生活を実行しているという。本稿ではシンクレア氏など世界の科学者8人のインタビューをまとめた『人類が進化する未来 世界の科学者が考えていること』より、シンクレア氏が考える「老化を抑える方法」を紹介する。

■一日3食も必要ない

 ─―老化について熟知しているあなたは、実際にどのような生活を送っているのですか。

 最近は健康にますます注意を払うようになっています。20代のころは、食事の量を抑える「沖縄ダイエット」をしたことがあります。当時は若かったこともあり、続きませんでしたが(笑)。いまは一日2食で、朝食はとりません。最近はランチをとらないことも多く、食べるとしても低カロリーのものだけです。

 ─―日本では一日3食が健康の基本だと教わります。あまり食事をしないほうが健康にいいということですか。

 すべての人が実践できるアドバイスがあるとすれば、食べる回数を減らすことです。一日3食も必要ありません。サーチュイン遺伝子という長寿遺伝子は、空腹でやせていないと活性化されない。エクササイズはその遺伝子のスイッチをオンにします。身体を「complacency(現状満足状態)」から脱出させないといけません。医学用語では「hormesis(ホルメシス:毒物が毒にならない程度の濃度で刺激効果を示すこと)」と言いますが、身体は殺さない程度に刺激すると強くなります。

 階段を歩いて上ったり、デスクの前で立って仕事をしたり、食事を抑えたりすることで、身体はサバイバルに対する脅威を覚えます。それと戦う要素が、老化や病気から私たちを守ってくれるのです。

 ―─日本は男女の平均寿命が84.4歳(WHO調査、2019年)と、世界一の長寿大国です。ただ、長生きすればいいというものではなく、健康に生きたいものです。

 老化を減速させれば、心臓病、がん、糖尿病、アルツハイマー病など、あらゆる疾病の進行を遅らせることができます。われわれのアプローチの目的は、健康寿命を延ばし、その後、病気になったとしても数週間で死んでいく、そんな人生です。

 現代医学の矛盾は、もぐらたたきゲームのように、病気の治療がその場しのぎになっていることです。1つの病気にかかれば薬を投与し、違う病気になれば、また別の薬で治療する。その繰り返しは、われわれを死の淵に追いやるわけです。もちろんその淵に防護柵を作る必要がありますが、その前に、根源的な老化についてもっと取り組まなければなりません。

■脳を興奮させると、老化が加速する

 ─―高齢になってもボケないために、脳を活性化させるベストな方法は何でしょうか。

 心を落ち着かせて、ストレスをためないことです。脳をひどく興奮させると、老化を加速させます。瞑想をして精神を整えることや、記憶力を鍛えることも、老化防止につながります。

 われわれはいま、エクササイズをしないでそれと同様の効果を与える薬を開発しています。私の安静時における1分間の心拍数は40台の中間で、マラソン選手並みです。これはおそらく、私がその薬を飲むことで、エクササイズが健康に影響を与える遺伝子のスイッチをオンにしているからでしょう。同じことを高齢のマウスに実施すれば、疲れることなく、通常の倍の距離を走ることができます。

 ─―老化を遅らせる最も重要な要素は何でしょうか。

 私が実践しているように、肥満にならないようにエクササイズをすることです。やりすぎは関節を痛めるので、マラソンのような激しい運動をする必要はありません。毎日10分程度は階段を使うとか、座り続けずに時折立って作業をするとか、忙しくてもできることはあります。

 ―─身体以外に精神面の健康においても、長生きするコツはありますか。

 複数のキャリアをもつことです。50歳で訓練を受けてキャリアを変えたり、新しい言語を学んだりするのも良いでしょう。私の父親は80歳になってから、シドニーの大学で新たな仕事を始めました。彼は非常に生産的な人生を送っていて、以前よりも幸せにみえます。自分が社会のために役立っていると感じることが重要です。

■不老不死の時代は来るのか? 

 ─―とはいえ、年を重ねて体力がなくなってくると、新しいことを始めるやる気が落ちてきますね。

 われわれが開発する薬によって体力を取り戻し、精神的にもよい効果をもたらして、好循環を生みだせれば嬉しいですね。

 日本でも老化学の研究は進んでいます。NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)は抗老化効果があるとされる成分で、日本で開発されました。マウスに投与すると、いろいろな臓器に存在するNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)が増大し、この分子が長寿に関係する「サーチュイン遺伝子」を活性化することがわかっています。

 ─―医療の進歩はとどまるところを知らない。いつか不老不死が可能になる時代がくるかもしれません。

 人間の老化と健康は、われわれのコントロール下にあります。いまの生活を変えることで将来の老化の進行が決まる、と言っても過言ではない。あなた次第なのです。

 現在の医療のように、病気になってから治療を施すのでは遅すぎます。高齢になって病気になり、誰かの世話が必要になってくると、社会が機能しなくなってしまう。健康寿命を延ばすことで、高齢者がコミュニティに貢献し、若い世代に知恵を伝授することが大切です。

 国民の多くが健康になれば、国全体が裕福になる。そのためには、研究費の増加や法整備の充実といった政府の後押しも不可欠です。老化を防止することは、人類が月に行くことよりも重要だと思います。

東洋経済オンライン

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最終更新:12/6(月) 16:51

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