IDでもっと便利に新規取得

ログイン

街づくり「できるだけ小さく」始めるのがいい理由

12/4 19:01 配信

東洋経済オンライン

「まちづくり」や「まちおこし」というと、莫大なお金と労力がかかるものだと思いがち。ですが、全国の地方でまちづくりを手がける経営コンサルタントの小林大輔さんは、お金も、人脈も、知名度もなく、大きな「ハコモノ」を造るのが難しい地域であってもまちづくりははじめられると言います。
小さな団体や個人からでもできる、“小さくはじめて大きく育てる”まちづくりの方法を小林さんに聞きました。
※本稿は『まちづくり戦略3.0 カネなし、人脈なし、知名度なしでも成功する「弱者の戦い方」』より一部抜粋・再構成してお届けします。

■都市計画を立ててからはじめるから失敗する

 まちづくりに必要なコンセプトやそこにひも付く建築物、さらにはまちの風景などを先に描いて、そこからまちの全体像をつくっていく都市計画は、建築を中心としたまちづくりの基本ではあります。ただ一方で、地域を活性化させたいのであれば、いきなり都市計画を用意しても、うまくいくとは限りません。

 とくに、ヒト・モノ・カネもだいぶ限られたところでは……。

 むしろ、用意したマスタープランに固執してしまいがちになり、そこにヒト・モノ・カネの多大な支出を伴うため、取り返しのつかない失敗となってしまうケースもあります。これからのまちづくりでは、そうした事態を避けなければなりません。

 そこでまずは、「まちづくり」に対する発想から変えていきましょう。つまり、まちづくりに対する「大きなものをつくらなければ」という考え方を、根本から見直していくのです。たとえば、まちの大きさの定義についてです。

 「まち」といえば、複数の商業施設があり、住宅街があり、病院や公共施設、そして整備された道路や街路樹などが立ち並ぶといった風景を思い浮かべるかもしれません。

 ですが、最初から複数の建物、たくさんの人、公共施設などを見越して計画を立てるのではなく、小さくはじめて大きく育てていくこと。それこそ、まずは「人が集まる場所」を、ファーストステップにしてみましょう。

 その土台となるのは、「10以上のアクティビティー(活動)がそろうプレイス(場所)」です。

 アクティビティーの種類としては、買い物や食事、読書、スポーツ、エンターテインメントまで、さまざまなものがあり、その中から、各地域や場所に合うアクティビティーを選ぶことが、最初の行動になります。

 こうしたアクティビティーを用意するだけで、まちづくりの第一歩を踏み出すことが可能です。「それだけでいいの?」と思った方もいるかもしれませんが、このくらいハードルを下げてこそ、大きな失敗を避けながらまちづくりをスタートできます。

 まちづくりはプチ起業、という発想をすれば、スタートを切りやすくなります。原則は「スモールスタート&スローディベロップメント」。まちづくりの最小単位をアクティビティーとし、その最もミニマムな単位からはじめていくのがファーストステップとなります。

 具体的にアクティビティーの最小単位を考えてみると、「空いているスペースにベンチを置く」というのも1つの方法です。たとえば、海が見える空きスペースにベンチを置き、そこに座って自然や景観を満喫するというアクティビティーをしてもらう。それだけでもいいのです。

 自然や景観が満喫できるベンチがあるだけで、そこに人が集まる可能性があります。こうした最小単位のアクティビティーから人の行き来が生まれ、そこからまちづくりがスタートしていくことになるのです。

 たとえば「景色がきれいな海辺に置かれたベンチ」というだけでも、人の心は動きます。「そこに行こう!」と思ってもらえれば行動が生まれ、行った先で得られた体験から、食事や宿泊といった次のアクティビティーへの広がりが検討できます。

■「ベンチを置く」の次の展開

 具体的には、ベンチに座っている人が次のようなことを考えるかもしれません。

■ おいしいお酒と料理を飲み食いしながら、この景色を堪能したいな
■ 思い出として写真に残したいな
■ ベンチでコーヒーでも飲みながら、読書するのもいいな
■ ハンモックも用意して、眠くなったらそこで寝るのもいいな
■ 音楽を流しながら、まったりしたいな
■ たくさんの友人を呼んでバーベキューがしたいな
■ 今日は夕焼けを見たけれど、もっとゆっくりできる日はここで夜空でも眺めたいな

 このような希望が膨らんでいくと、それを実現するためのアクティビティーに需要があることがわかります。「ベンチを置く」という最小単位のアクティビティーからはじまったこのまちづくりに、次の展開が期待されるというわけです。

 屋台やキッチンカーをはじめとする飲食店を設置するのはもちろん、ベンチだけでなくバーベキューやキャンプができる設備、ハンモックやテント、さらには写真サービスや宿泊施設まで、アクティビティーを実現するものとしては、さまざまな広がりが生まれます。

 それらのアクティビティーを単独ではなく、有機的につなげていくことによって、地域としての価値がより高くなっていきます。もちろんそこには、人の希望が反映されており、経済活動に結びつくようなポテンシャルがあるわけです。

 まちづくりにおけるソリューションとは、その地域ならではの強みを生かした価値提供を、ターゲットに応じたニーズ・欲求に合わせて行うことです。すでにその地域に存在している強みや価値との兼ね合いも含めて、その場所ならではの人を集められる要素をピックアップしておきましょう。

■ターゲットの設定方法

 ターゲットの設定には「5W1H」を使います。5W1Hとは、ビジネスシーンでもよく使われるものですが、「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」というように、必要な要素をそれぞれ検討していく方法です。

 たとえば、「海が見える広場にベンチを置く」というシーンで考えてみましょう。ベンチの活用方法はさまざまですが、あえてターゲットやアクティビティーを“限定”していくと、次のように考えることができます。

■ いつ:夕日が見える時間帯
■ どこで:海が一望できる広場の中心
■ 誰が:若いカップル(インスタ映えを狙うため)
■ 何を:夕日に映える海を眺める
■ なぜ:ロマンチックな非日常体験を提供するために
■ どのように:おしゃれなベンチを設置する
 このように5W1Hで考えていけば、おのずとターゲットが具体化されていきます。不特定多数をターゲットにするのではなく、あえて絞り込んでいくことによりかなり具体性を帯びるので、次の打つ手(ソリューション)も具体的に見やすくなります(軽食やお酒の提供、音楽の演奏など)。

 5W1Hを活用すると、もともとその場所に合ったニーズや欲求、つまり課題がより明確化されます。課題は価値を提供するために設定されるものとなるのです。

 ニーズや欲求を土台にした課題の抽出と、そこから見いだされるソリューション、さらにはターゲットの具体的な設定は、アクティビティーファーストを進めていくにあたり大いに役立ちます。そうした作業から、小さな一歩を踏み出しましょう。

 そこでまずやるべきことは、「自分はどうしたいのか?」。これを考えてみることが大切です。自分がどのエリアでどんなまちづくりをしたいのかを掘り下げるべく、これから実践するまちづくりのコンセプトを検討してみるのです。

 この作業はコンセプトづくりといってもいいかもしれません。いずれにしても、自分が主導的に行動し、後に関係者を巻き込んでいく必要がある以上、メッセージ性と共感性をともに含んだテーマないしコンセプトを考え、言葉にしておくべきです。

■静岡県沼津市の例

 コンセプト設定とその一貫性ということでいえば、静岡県沼津市の元市長・大沼明穂さんが行ったまちづくりは、非常によい事例だと思います。
もともとIT企業の経営者であった大沼元市長は、2016年に「沼津を変える」をスローガンとして掲げ、市長選に初出馬。現職に2万票近い大差をつけて初当選を果たしています。選挙戦では「IT企業を誘致して若者が働く場をつくる」を公約としていました。

 そんな大沼元市長が行ったのが、静岡県沼津市を舞台とするスクールアイドルアニメ『ラブライブ! サンシャイン‼』によるまちおこしです。彼は沼津をラブライブのまちとして大々的にPRし、ラッピングバスの活用や作品に登場する声優のグループをPR大使に任命するなど、数々のタイアップ企画を展開しました。コアなファンの中には「何度も通うより住んだほうが安い」と、移住した人もいたほど。

 公約にもあるように、もともと大沼元市長は若者に寄り添う姿勢をもっていました。つまり、沼津というまちを活性化させるために若者を呼び込むという、明確な「何をしたいのか」「なぜしたいのか」があったため、強力なコンセプトを打ち出せたのです。

 残念ながら大沼元市長は2018年3月に小脳出血で亡くなられたのですが、直前まで公務の準備をしていたなど、沼津に対する思いはとても強かったようです。そしてその「自分はどうしたいのか」という気持ちが、まちづくりを成功に導いています。

 この“小さくはじめて大きく育てる”ノウハウは、まちづくりだけでなく、ビジネスマンや中小企業、個人事業主にとっても大きく役立ちます。ぜひ、活用してみてください。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:12/4(土) 19:01

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング