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「育休中の妻が家の事をするのは当然」の落し穴

12/1 10:01 配信

東洋経済オンライン

妻が育休期間のとき、妻が家事や育児のほとんどを行い、夫は仕事に全力投球していないでしょうか。妻側は「今は会社で働いていないし、夫に少しでも楽をさせてあげたい」と思いがちですが、一度家事・育児の分担を固定化してしまうと、育休明けにそれを変えるのは容易ではありません。
『3000以上の家計を診断した人気FPが教える お金・仕事・家事の不安がなくなる 共働き夫婦 最強の教科書』を上梓したファイナンシャル・プランナーの内藤眞弓氏のもとには、育休中のご夫婦がよく相談に訪れるそうで、「育休中は予行演習期間なので、妻がすべて引き受けてはいけない」というアドバイスでうまくいくご夫婦も少なくないといいます。「予行演習」とは、いったいどういうことでしょうか? 

■育休期間に妻が家事・育児をやりすぎてはいけない

 共働きのAさん夫婦は、子どもが生まれるまで、ほぼ平等に家事を担っていました。夫も育休を取ろうとはしたのですが、上司の理解が得られず、断念しました。また、育休期間中は収入がダウンするため、妻が育休を取得するほうがよいだろうとの判断もありました。

 しかし、妻が長期の育休を取ったことで、家庭内のことはすっかり妻の任務となってしまいました。育休明けが近づくにつれ、このままじゃいけないと思い、夫にもやってもらおうとするのですが、どうも自分事ではないと思っている節があります。こんな状態で仕事に復帰したらどうなるのか、考え始めると不安とイライラがピークに達しそうです。

 Aさん夫婦のように、ともに家事を担っていた家庭でさえ、妻の育休期間中にそのバランスが崩れてしまうケースは多いようです。育休の過ごし方は、その後の暮らしに大きく影響を与えます。この期間に妻が何もかも引き受けてしまうと、育休が終了したからといって、夫が家事や育児をやるかといえば、まず無理だと言わざるをえません。

 夫にしてみたら、「妻は家で休んでいるんだし」「赤ちゃんってどう扱っていいかわからない」などと腰が引け、妻は妻で「仕事をしていない私がやるのは当たり前」と考えてしまうのかもしれません。男であろうと女であろうと、未経験のことに足を踏み出すには勇気がいります。すっかり子どもの世話が板についた(ように見える)妻に代わって、不慣れな夫が引き受けるのは、ずいぶんとハードルが高いのではないでしょうか。

 2020年度の民間企業に勤める男性の育児休業取得率は過去最高の12.7%を示しました。増加傾向にあるとはいえ、圧倒的に女性に偏っていることに変わりはありません。しかも、3割弱が5日未満の取得にとどまっているのが現状です(※1)。

 20代、30代の既婚男性への調査(※2)によると、「育休を取得しない」と答えた割合が42.2%で最も多く、希望する人でも1週間以内と答えた人が17.1%、1カ月以上は8.4%です。1カ月以上の育休を取得しない理由として最も多いのが「職場に迷惑をかけたくないため」で42.3%、続いて「収入が減少してしまうため」が34.0%です。

 まさにAさんの夫が育休取得を断念した理由と被ります。ただし、収入ダウンに関しては、育児休業給付金は非課税で社会保険料が免除になりますので、手取りでは休業前の給与とさほど変わらない可能性があります(※3)。育休取得計画を策定する際には、手取りベースでのキャッシュフローを前提にすることをお勧めします。

■育休期間は両立生活のインフラ作りにあてる

 育休期間中に絶対にやってはいけないことは、母子の世界で完結をして、夫を置いてきぼりにすることです。それがめぐりめぐって妻を追い込む結果になってしまいます。できれば、育休期間が明ける前に、夫と妻がそれぞれ同じくらいの期間、ひとりで家事と育児を担う経験をすることが望ましいと思います。

 育休制度には、男女ともに仕事と育児を両立できるようにという意味合いがあります。お休みではなく、子育てしながら、共働き生活をスムーズに行うためのインフラ作りと、子どもとの関係性を構築する期間と位置付けてください。

 そのためには、夫婦で育休終了後の生活をシミュレーションし、仕事と家事、育児を回していくためには何が必要なのか、互いにどのような役割を担うのかといったことを話し合いましょう。保活も共働きにとっての重要課題ですから、夫婦一緒に取り組みます。

 今まで夫婦2人だった生活に、お世話が必要な存在が加わるわけですから、家事のあり方も変化します。出産前から夫婦ともに家事を担っていたのであれば、子どもがいることによってどのように変化するかをイメージします。

 あまり家事を担ってこなかったのであれば、育休期間を家事の試行期間と位置付けて、実際にやってみてコツをつかんでいきます。保育園の送迎と仕事、時間のない中での家事育児という生活に、いきなり飛び込むのは無防備すぎるので、育休期間中に慣らしておきます。

そのためにも、やみくもに始めるのではなく、前回記事(『「お掃除ロボットや家事の外注は手抜き」の落し穴』)で触れたように、どのような家事があるかを洗い出してタスク分けをし、それらを眺めながら、どうすれば効率よくこなすことができるかを話し合います。

 そして、便利家電の導入をしたら実際に使って慣れておくとか、お掃除サービスのお試し利用をしてみるのもいいかもしれません。調理が苦手ならミールキットを使って練習しておくと安心です。

 夫婦それぞれの育休期間中にいろいろと試してみて、その結果を持ち寄って軌道修整することを繰り返していくと、視点を変えたアイデアが生まれるかもしれません。

■子どもの発熱にも妻だけで対応しない

 日常生活のシミュレーションだけでなく、さまざまなアクシデントを想定しておくことも大切です。子どもが小さいうちは、「今日は絶対に休めない!」という日に限って熱を出したり(実際には何とかなるのですが)、保育園から「○○ちゃんがお熱で」とお迎えコールが来たりします。

 お迎えコールなどをきっかけに、「どちらが会社を休むか」「どちらが迎えに行くか」でバトルが勃発することも珍しくありません。そのような修羅場を回避するために、何通りかの対策を考えておきます。

 子どもが病気のときなどは、夫婦どちらかが休めるのがいちばんよいのですが、なかなかそうもいきません。住んでいる地域に病児・病後児保育サービスを提供している施設がないかを調べておくことも大切です。

 病児・病後児保育は、保育所や病院、診療所に併設されていることが多く、対象年齢や保育時間、事前登録の有無など、利用方法はまちまちなので、イザというときにスムーズに利用できるように準備しておくとよいでしょう。

 近くの病児・病後児保育施設の場所をスマホで検索できる「あずかるこちゃん」というサービスもあります。「あずかるこちゃん」と提携している施設であれば、スマホから24時間、予約やキャンセルすることができます。現場で見守るのはプロの保育士や看護師ですから安心ですし、後ろめたさも少しは薄まるのではないでしょうか。

 ベビーシッターの利用も選択肢の1つです。保育園を基本としつつ、必要に応じてピンポイントで利用できると、綱渡り生活も多少は回避できます。ベビーシッター会社によっては、事前の面談を推奨しているところも多いようです。

 育休期間中に実際に利用してみて、信頼できるところを見つけておくと安心です。子どもが熱を出したとき、自宅に来て子どもの世話をしてくれたり、病院に連れて行ってくれるサービスや、保育園にお迎えに行き、習い事に連れて行ってくれるサービスもあります。

 リーズナブルに育児支援サービスが受けられるファミリーサポートセンター事業も全国展開されています。お近くのファミリーサポートセンターをチェックしてみてはいかがでしょう。

 保育園からのファーストコンタクトを誰にするかは重要です。業務の内容などから、夫婦どちらか柔軟に動けるほうにしておくか、おじいちゃんおばあちゃんなどにお願いできる状況であれば連絡先として登録させてもらうなど、形式的にではなく、しばしば起きるという前提で決めてください。ファーストコンタクトで都合がつかない場合に備えて、第2第3の対策も用意しておきましょう。

 育休明けにいきなり全力疾走するのではなく、大人も子どもも少しずつ慣れていく必要があります。夫婦で育休を取り、それぞれが試運転をしておくと、気持ちに余裕をもってスタートさせることができます。十分に話し合いの時間を取るために、夫婦で育休が重なる期間をつくってもよいでしょう。

■「パパ休暇の特例」を知っていますか? 

 このように、育休期間をどう過ごすかは育休後の生活を大きく左右します。お互いのキャリアを尊重する形で、夫婦の育休計画を練り上げることが大切です。そのためにも制度をよく知り、利用できるものは積極的に取り入れていきましょう。

 育児休業の対象となるのは、1歳未満の子を養育する男女労働者で、子1人に対して原則1回の取得が可能です。ただし、パパとママがともに育児休業を取る場合、原則1歳2カ月に達する日まで延長される「パパ・ママ育休プラス」の特例があります。対象となるのは以下のケースです。

・子が1歳に達するまでに配偶者が育児休業を取得している
・本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前である
・本人の育児休業開始予定日は、配偶者が取得している育児休業の初日以降である
 たとえば、ママの産後休業が終了した後、そのまま育休期間に入ったとします。その後、子どもが1歳になる前にパパが育休を開始すると、パパは子どもが1歳2カ月になるまで育休を取ることができます。

 「パパ休暇」の特例もあります。前述のように、育児休業は子1人に対して原則1回ですが、子の出生後、パパが8週間以内に育児休業を取得した場合、特別な事情がなくても、再度、育児休業が取得できるというものです。特例の要件は以下のとおりです。

・子の出生後8週間以内に育児休業を取得している
・子の出生後8週間以内に育児休業が終了している
 産後6~8週間は母体が妊娠前の状態に回復するために必要な期間です。この期間にパパが育休を取って家事や子どもの世話を担うことができれば、ママは無理をすることなく体力を回復できます。そうすれば、パパはもう一度育休を取れますから、次は保育園の入園準備のために充てることもできます。

■頼りなさや不安も共有することが第一歩

 2022年10月から男性版産休ともいわれる「出生時育児休業」がスタートします。子どもが生まれて8週間以内に、育休とは別に4週間まで取得可能というものです。分割して2回取得することもできます。それに先立つ4月から、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が企業に義務付けられます。男性も女性も働きながら子育てできる制度が整ってくるにしたがって、世の中の雰囲気にも変化が現れてくるでしょう。

 子どもを産んだからといって、女性が自然体で子どもの世話ができるかといえば、そんなことはまったくありません。夫が「赤ちゃんってどう扱っていいかわからない」と考えるように、妻だって「どう扱っていいかわからない」のです。

 誰かのケアがないと生きていけない命が家族の一員として現れるわけですから、責任の重さに押しつぶされそうになり、時には赤ちゃんと一緒に大泣きしたりしながら、親も少しずつ育っていくしかありません。

 この頼りなさや不安を夫婦で共有することが、家族の歴史の大切な1コマとなります。せっかく育休という制度があるのですから、新たな家族の歴史をつくるために、有意義に活用してはいかがでしょうか。

(※1)厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」

(※2)内閣府「第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
(※3)社会保険料が免除となるのは育休終了日翌日の前月までであるため、1カ月未満の育休では免除対象とならないことがある

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最終更新:12/1(水) 10:01

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