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バス乗り継ぎ旅「市町境を越える路線」の希少価値 震災10年津波被災地をたどる・北上南三陸町編

12/1 6:31 配信

東洋経済オンライン

 宮城県沿岸部の公共交通機関を乗り継ぐ旅は、10月21日の午後、石巻市立大川小学校跡で手を合わせた後、すぐ側の新北上大橋を歩いて渡り、対岸の旧北上町に入った。

 30分ほど歩くと大須という地区があり、石巻市の北上地区住民バスの停留所にたどりつく。このあたりの北上川は生活圏、行政区画を分かつほど幅が広い。住民バスも合併前の各町が運行していたものをそのまま引き継いでおり、実態は似たようなものであるものの、旧牡鹿町や旧雄勝町は「市民バス」、旧北上町や旧河北町は「住民バス」と名称が異なる。

■南三陸町のバスと接続

 旧北上町は現在の石巻市の東北端で母恋岬が太平洋に突き出ており、国道398号が半島沿岸の漁港を結んで一周している。

 北上地区住民バスは、この日の朝方、雄勝地区市民バスに乗り込んだ道の駅・上品の郷を起点に、旧河北町の中心地である飯野川を通って、神割崎入口まで走る。

 神割崎はちょっとした観光地ではあるものの、行政区画としても、石巻市と南三陸町の境界だ。ひょっとして……と思い、南三陸乗合バス(ここも微妙に名称が異なる)の情報を調べてみると「当たり」。志津川から延びる戸倉線が神割崎まで来ており、北上地区住民バスと神割崎入口で接続している。行政区画が異なれば路線バスも途切れている例に泣かされ続けてきた身としては、ありがたいのひと言だ。

 1日3本の神割崎入口行きが来るまでは時間があるので、愛宕神社前13時44分発の上品の郷行きで飯野川までいったん戻り、小憩の後、14時57分発で改めて神割崎入口をめざす。

 飯野川は元のミヤコーバスの車庫の跡で待合室もあり、石巻市中心部との間に走るミヤコーバスと住民バスとの乗り継ぎ拠点となっている。筆者が乗った北上地区住民バスは珍しくマイクロバスに5人も利用客があり、都市部でもない限り、これまで見られなかった「盛況」。運転士は乗り込む時に行先を聞いて、運賃を受け取る。神割崎入口までは300円。

 バスは旧北上町の中枢施設と住民の移転先ともなった高台の「にっこりサンパーク」にも立ち寄る。やはり高台の団地(集落の集団移転先)もあるのだが、この線は中まで入らず、バス停は入口にある。

 飯野川から約1時間、15時55分に神割崎入口に着いた。バスの転回場があるだけの道端だが、バス停のポールが2本並んで立っている。運転士は親切に「志津川行きに乗るなら、そちらの道から上がってきますから」と教えてくれた。奇跡的に15時57分発の戸倉線がすぐ来る。

 志津川行きの南三陸乗合バス戸倉線もまた、マイクロバス。300円払って終点まで乗ったが、乗客は終始1人だった。石巻市側とは少し地形が変わって、海岸線の出入りが少なくなり、開けた感じがする。

 こちらにも「団地」がある。地域の中心地らしい大きめの戸倉団地ではバスは中に入り、団地内に限りフリー乗降区間となる。BRT気仙沼線陸前戸倉駅前まで来ると、見慣れた風景だ。BRTにも乗り継げるが、バスは三陸地方の交通軸である国道45号に入るので、そのまま海岸線沿いを進む。

■まだ仮設のBRT志津川駅

 旧志津川町の中心部を一回りし、元のJR志津川駅跡近くも通ったはずだが、薄暗くなってきてよくわからなかった。現在の南三陸乗合バスのターミナルはBRTと同じところ。復興が進む商業地域の一角にある。

 BRT志津川駅も何度か移転を繰り返してきたが、現在の待合室や窓口もまた仮設で、2022年2月には道の駅「さんさん南三陸」内に整備される交通ターミナルへ移り、ようやく落ち着く。ただ、役場を始めとする町の施設や新しい住宅地などは東側の高台の上に移っており、町の機能は分散。BRTも乗合バスも丹念にめぐるよう経路を工夫し、利便性を高める努力をしている。乗ってきたバスも16時29分着の志津川駅が終点ではなく、南三陸病院まで行く。

 この先、17時ちょうどに、やはり海岸線に沿って細浦入口まで行く乗合バス荒砥線が志津川駅から出る。途中で暗くなることは確実だが、こちらも1日3本の貴重な便だ。ワゴン車に乗り込んで、とにかく進んでみる。こちらも路線の起点は南三陸病院で、乗車した便は、志津川駅を出ると志津川中学校を経由。夏季には18時30分発に繰り下がるところを見ると、中学生の通学を考えたダイヤ、経路ではないかとも思う。

 案の定、志津川の中心部を出ないうちに日は落ち、整備された区間もまだ少ない細道を進むものの、景色は見えない。昼間なら風光明媚な路線ではないかと想像しておく。終点の細浦入口は、丘陵地にある古い集落の中。すぐ真下を元はJR気仙沼線であったBRTの専用道が通っており、すぐ気仙沼行きがトンネルから出てきた。

 この先、湾の奥に細浦漁港があるが、バスが細浦入口で終わっている事情は察せられる。清水浜駅までは歩いて15分ほどなので、交通量が多い国道を車に気をつけながら、とぼとぼ歩く。

 30分ほどBRTを待って隣の歌津へ向かい、復興事業従事者向け長期滞在型の新しいホテルに落ち着いた。快適でよかったが、三陸沿岸の宿泊客自体は大きく減っているようで、こうした宿泊施設の閉鎖のお知らせをあちこちで見る。

■郵便局は震災10年後に営業再開

 南三陸町は2005年に志津川町と歌津町が合併して成立した。東日本大震災では、死者620人、行方不明者211人を出し、志津川や、歌津の中心地・伊里前(いさとまえ)の沿岸部は壊滅した。とくにJR気仙沼線歌津駅を中心とする、伊里前の復興は遅れがちだったように思う。

 現在は駅近くに商業施設「南三陸ハマーレ歌津」と歌津郵便局が立ち、乗合バスの運行拠点にもなっている。ただ、立ち寄った郵便局には、震災から10年以上経った2021年4月16日にようやく営業を再開した旨の局長の挨拶が掲げられており、諸事情はあったにせよ復興の難しさを感じた。

 10月22日はそのハマーレ歌津10時34分発の南三陸乗合バスの韮の浜線からスタートする。1日2往復だけで、時間があるので掲示や町のサイトだけではわからなかった回数券の発売場所について、運行委託先の歌津交通に電話してみた。結論は、バスの車内でも購入できるとの由。ただ「電話しなければわからない」のも問題だ。

 南三陸町のバスマップは正縮尺の地図で時刻表も兼ねており、路線網の把握には非常に役に立ったのだが、ひと言添えておけばお互い手間もかからないはず。

 今回、乗合バスには神割崎入口から数えると計5回も乗り、そのたびに200~300円払ったから、細かい話だが100円券11枚つづり1000円の回数券が買えれば割安になったはずだった。

 韮の浜線自体は、海岸沿いの住宅地を15分ほどでワゴン車が一周するだけの路線だが、好天とも相まって、途中の寄木海岸の風景が印象に残った。BRTで直行するだけではわからない絶景だ。

■防災対策はまだまだ進行中

 次は1日4往復のうち、歌津駅11時40分発の泊浜線で馬場中山へ。こちらの風景も寄木に負けず劣らず美しい。途中下車して立ち寄る価値があると思う。歌津岬の突端に近い泊浜集会所で折り返して12時04分に着いた馬場中山は丘陵地にある集落で、待っていると3便だけの港・名足線のうち1本だけ、12時54分に馬場中山にやってきてBRT陸前港駅へ抜けられる。

 ぼんやりしているのも退屈だし、名足(なたり)の小さな漁港を一回りする。このあたりは馬場、中山、名足の頭文字を取って「ばなな漁港」とも呼ばれているらしく面白い。

 ただ、志津川や伊里前でもまだ進行中に見えた防災・復興工事は、寄木や名足のような小さな集落だと、もっと遅れているようにも見える。それこそ津々浦々にまで「安心」をもたらすには、気が遠くなるような地道な作業が必要だと痛感する。

 港・名足線のワゴン車は、13時04分に陸前浜駅前に着いた。宮城県の最北端、気仙沼市との境はすぐそこだ。海岸線に沿って乗り継いできた旅も、いよいよ宮城県卒業が近づいた。

東洋経済オンライン

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最終更新:12/28(火) 23:57

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