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COP26での「3つの成果」日本は今後どう生かすか

11/30 9:01 配信

東洋経済オンライン

 コロナ禍による1年の延期を経て、10月31日からイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)は、会期を1日延長して、11月13日に閉幕した。

 今回のCOP26では、パリ協定が採択された2015年以来の成果を挙げることができたと言っても過言ではない。すなわち、パリ協定での気温上昇に関する長期目標が事実上2度未満から1.5度に強化されたこと、そして6年越しにパリ協定の詳細なルールブック(実施指針)がすべて合意されてパリ協定が完成したこと、さらに地球温暖化の最大要因として石炭火力削減方針が初めてCOP決定に明記されたことが挙げられる。

■1.5度目標に強化されたパリ協定

 最大の成果はパリ協定の長期目標として、気温上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑えると明示されたことだ。これはパリ協定という国際条約の目標を事実上強化することに世界全体が合意したということを意味する。そのために2030年には世界全体の温室効果ガス排出量を2010年比で45%削減、そして2050年頃には実質ゼロにする必要があることまでも、合意文書に書き込まれた。

 もともと2015年にパリ協定が採択されたとき、科学の知見に沿って、いずれ世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにして気温上昇を2度未満にとどめるという困難な長期目標が合意されたこと自体、奇跡的に思えた。その際に温暖化の影響に脆弱な小島嶼国連合などの主張によって、1.5度にとどめることを目指すという努力目標も付け加えられたが、これはパリ協定合意に至る終盤の激しい交渉の末に追加された妥協の産物で、いわば付け足しのような存在であった。

 それから6年の時を経て、その1.5度の努力目標が事実上、パリ協定の長期目標に格上げされたのだ。もちろんその背景には、世界中で洪水や猛暑・森林火災などの自然災害が猛威を振るい、人々が気候危機の脅威を共有したことや、エネルギー革命で脱炭素化の実現が現実的なテーマとして視野に入ってきたことが挙げられるだろう。これで世界はパリ協定の下で1.5度目標、すなわち2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すこととなったのである。

 COP26以前には、パリ協定事務局に提出された各国の削減目標を足し上げても1.5度はおろか2度未満達成にもまったく足りなかった。会議直前の国連報告書によれば、各国の2030年削減目標を考慮しても、世界全体の排出量は2010年比で2030年に16%も増加し、世界の平均気温は2.7度も上昇してしまうと警鐘が鳴らされていた。

 そのため国連は世界各国に対して、2030年目標を大幅に引き上げてCOP26において再提出することを強く要請していた。イギリスのジョンソン首相はCOP26の第1週目に「ワールドリーダーズサミット」を主催し、世界120カ国から各国首脳が参加して削減約束や資金援助などを発表することとなった。

 先進国のほとんどはCOP26までにすでに2050年ゼロと2030年に50%前後の削減目標を公表していたために、そこでは新興国が新たに目標を見直して発表するかに注目が集まった。残念ながら中国とロシアの首脳は欠席し、世界一の排出国である中国から目標の引き上げ表明はなかったが、世界第3位の排出大国であるインドは、2030年に再生可能エネルギー比率50%を目指し、さらに2070年には排出ゼロを目指すことを公表。またタイやベトナムといった発展著しい途上国も2050年カーボンニュートラルの目標を初めて発表した。

■2度未満が視野に入った

長期目標の強化に加えて、メタンガスを2030年までに2020年比で30%削減する「グローバル・メタン・プレッジ」を欧州連合(EU)とアメリカが中心になって呼びかけ、世界100カ国以上が賛同したことも特筆される。メタンガスはCO2
の20倍の温室効果を持つガスであるため、この効果は少なくない。

 これらの結果として、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、「今後の気温上昇の予測は1.8度まで下げられた」とCOP26会場で明言した。ドイツやオーストラリアの研究機関も同様の予測を発表した。もちろんこれは「各国が2050年排出ゼロなどの長期目標を実現した場合」という前提であり、実際には各国はその具体的な実現策をまったく示せていないため、数字上の成果にすぎない。しかし、パリ協定の長期目標である2度未満が初めて視野に入ったことは、会議参加者を勇気づけるものであった。

 その一方で現状の政策や2030年の削減目標が1.5度目標に合致していないことも指摘され、各国が2030年目標をさらに引き上げる必要性が浮き彫りになった。そのためCOP26決定では、2022年末までに、2030年目標を「再度見直し、強化すること」を各国に要請することとなった。さらに閣僚級会合を開催することも同時に決められ、世界のリーダーたちに、今一度、削減目標の強化を求めていく流れとなった。すなわち継続的に2030年目標を引き上げていくプロセスが作られた。

■パリ協定のルールブックついに完成! 

 パリ協定のルールブック(実施指針)が完成した意義も大きい。

 2015年にパリ協定が採択されてから、本来は2018年には実施のために必要なすべてのルールブックが合意されるはずであったが、パリ協定第6条の市場メカニズムなどのルール決定が2回にわたって持ち越されていた。今回は議長国イギリスの強いリーダーシップもあって残ったルールのすべてが合意され、パリ協定はとうとう完成にこぎつけた。

パリ協定第6条とは、CO2
の排出枠を「クレジット」として市場で取引する仕組みが主で、2国間で取引するもの(6条2項)と、国連主導型で取引するもの(6条4項)の2つがある。日本が途上国との間で進めている2国間クレジット制度(日本と対象国の2国間で削減プロジェクトを実施し、CO2
削減量を2国間で分け合う制度)はこの6条2項に含まれることになるため、日本としてもぜひ合意を実現させたいところであった。

 中でも問題であったのは、排出削減量の二重計上(ダブルカウンティング)を防ぐことであった。6条は基本的にオフセット(相殺)の仕組みであるため、削減を進めるために最も重要なことは、削減プロジェクトを実施するホスト国と、支援するドナー国との間での二重計上が行われないようにすることにある。そうでないと地球全体で見た場合に排出量がむしろ増えてしまいかねない。そのために、削減量をそれぞれの国の間で調整する仕組み(「相当調整」と呼ばれる)が必要となる。

 2国間クレジットに関するパリ協定の6条2項には「相当調整をすること」が明記されている一方、国連主導のクレジットの規定である6条4項には明示的には「相当調整」という文言がないことを悪用して、ブラジルが6条4項では二重計上をしていいという主張を繰り広げてきた。これを許すと、6条によってむしろ世界の削減に大きな抜け穴が出来てしまうことになるので、島嶼国をはじめとした途上国や先進国は強く反対してきた。

 交渉中にはさまざまな妥協案が出された。たとえば「国別目標に含まれない部門からの削減量の場合には相当調整を適用しない」「削減プロジェクトのホスト国が認証したクレジット以外には相当調整を適用しない」などといった提案がなされた。いずれも大きな抜け穴となる可能性があり、議論は激しく紛糾した。結果としてこれらの妥協案は消えて、何とか二重計上を防ぐことを前提とする仕組みが立ち上がった。

■「ゾンビクレジット」の問題

 もう1つの大きな問題であったのが、パリ協定に先立つ京都議定書時代の、使われなかった古い削減クレジット(「ゾンビクレジット」と呼ばれていた)を、パリ協定に持ち越したい、というブラジル、インド、中国の強い要求だった。これらの国々では大量の京都議定書クレジットが残っており、それらについてパリ協定の削減目標への算入を認めてしまうと、2020年以降のパリ協定における各国の削減量が事実上減ってしまう。そのため多くの国が強く反対してきた。

最終的には2013年以降に登録されたゾンビクレジットのみ使ってよい、ということで妥協が図られた。研究報告によると2013年以降登録のクレジットはCO2
換算でおおよそ3億3000万トンにとどまるということで、望ましくはないが、1回目の国別目標達成に限り使えるという条件も付けられて、パリ協定への影響をなるべく抑える方向で妥協が図られた。

 そのほか、パリ協定6条4項でクレジット取引の利益の5%が温暖化の影響に脆弱な国々が気候変動に適応するための支援に回されることになった。これは京都議定書時代の仕組みを踏襲したものだ。当時の2%から引き上げられたことは評価できるが、途上国側が強く要求していた6条2項ではこの仕組みの導入は見送られた。

 これらのぎりぎりの妥協で何とか二重計上を防ぎ、実効力のある市場メカニズムの仕組みが立ち上がり、長引いてきたパリ協定の残されたルールもすべて合意されて、パリ協定は完成した。

 さらにCOP26の成果としては、温暖化の最大要因として石炭火力発電の削減が初めてCOP決定に明示されたことが挙げられる。議長国イギリスのジョンソン首相は、COP26の前に各国に4つの具体策、すなわち石炭火力発電の廃止計画および電気自動車の普及、発展途上国への資金支援、植林の推進を呼びかけていた。

 中でも石炭火力発電について、「先進国は2030年に廃止、途上国は2040年に廃止」を要請していた。その声に応えて、1週目に開催された「脱石炭連盟」のイベントでは、新たに28の国や地域などが石炭火力発電の廃止を約束した。加えてCOP26決定文書に石炭火力発電の削減が書き込まれた。

 実は当初のドラフトでは「石炭火力発電の段階的廃止」が盛り込まれていたが、産油国やインドなどの新興国が強く反対し、表現は「段階的削減」にとどめられた。しかしそもそも国際条約の会議では、内政干渉になりうる各国のエネルギー選択などの国内政策に触れることはほとんどない中で、COP決定文書で石炭火力発電について言及されたのは、それだけ石炭が温暖化の最大要因として世界中で認識されていることを示している。石炭火力発電への風圧は国際的に一段と高まったと言える。

■再び化石賞受賞の日本、資金支援増額がかすむ

 世界120カ国から首脳が集まったワールドリーダーズサミットに、日本の岸田文雄首相も衆議院議員選挙の直後であるにもかかわらず駆け付けた。日本も2030年度に46%削減、さらに50%の高みを目指す、そして2050年ゼロという目標を持っていることで、今回はリーダーシップを発揮する側に入ったことは確かだ。

 さらに途上国への資金支援として新たに5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意があると表明した。実はCOP26のもう1つの重要な議題は、先進国から途上国に対して年間1000億ドルの資金を振り向けることが決まっていたにもかかわらず、その額に達していない問題をどう解決するかであった。十分ではないが、その要請に応えた日本は、ジョンソン首相から繰り返し感謝の言葉をかけられた。

 一方で「太陽光などの再生可能エネルギー普及のためには火力発電が必要」であるとして、アンモニアや水素などによって火力発電のゼロエミッション化を図り、それらを国内のみならず、アジアにも展開すると演説した。これはむしろ石炭火力発電の延命策だと受け止められ、環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク」(CAN)から温暖化対策に後ろ向きである国への不名誉な賞「化石賞」を再び贈られてしまった。

「2030年に向けてのアンモニアなどは製造時にまだ化石燃料を使うことが多く、混焼してもCO2

の排出削減効果は限定的で、むしろ石炭火力の延命に手を貸す」というのがその理由だった。2030年度に50%削減の高みを目指すという削減目標や、資金支援増額などに対する評価がかすむ残念な結果となった。

 1.5度の長期目標が主流となったパリ協定時代に、日本に求められることは、2030年度の46%削減目標を確実に実施できる政策を早急に導入することである。石炭火力発電を、2030年度を越えて使い続けることを前提としたエネルギー基本計画は早急に見直すべきである。

 またパリ協定第6条のルールが決まった中、国内で排出量を取引する市場を早急に整える必要がある。パリ協定が本格始動する中で日本企業がきちんと活動できるようにするためにも、国内政策を整備することが今、最も求められている。

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最終更新:11/30(火) 9:01

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