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「EV+CVT」乗ってわかったボッシュ新技術の神髄

11/27 7:01 配信

東洋経済オンライン

 2021年後半はCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の影響もあってか、乗り物における電動化パワートレーンが注目を浴びた。とりわけ電気自動車(EV)のさらなる活用に向けたニュースが世界中から発信されている。

 今回、そのEVの走行性能の向上させる「CVT4EV」にテストコースで試乗した。CVT4EVは自動車部品メーカーであるボッシュ(ドイツ)が開発中のプロトタイプ車両だ。

 電動駆動モーターに既存のCVT(Continuously Variable Transmission)を組み合わせることで、走行性能の向上とともに二次バッテリーの小型化と、充電1回あたりの走行距離であるAER(All Electric Range)延長を目指す。

 オランダ人であるHub.Van.Doorne博士によって1958年にはじめて製品化されたトランスミッションであるCVTはその後、広く普及。1987年には富士重工業(現SUBARU)の小型車「ジャスティ」に採用された。

 ボッシュでは、1985年からCVTの要である金属ベルト(プッシュベルト)の量産を開始し、2020年には生産実績8800万本を達成している。

■そもそもCVTとはどんな仕組みなのか? 

 早速CVT4EVの試乗といきたいところだが、まずCVTの機構をおさらいしたい。

 CVTとは入力側プーリー(元は内燃機関や電動駆動モーター)と、出力側プーリー(先は駆動輪)をベルト(主流は金属製)でつなぎ、各プーリーの直径を変えることで、歯車による有段ギヤを用いることなく無段階に変速できるトランスミッションのこと。プーリーとは滑車を意味する。

 プーリーは、頂点が向き合った2個の円錐で構成され、その間に金属ベルトがおさまる。円錐を両側から押しつける(幅を狭める)ことで、その間に挟まれている金属ベルトが押し上げられ、結果としてプーリーの直径が大きくなる。反対に円錐を開放する(幅を広げる)とプーリーの直径は小さくなる。

 つまり、2つのプーリー直径を連続可変させるから無段階の変速が実現する。これがContinuously Variableと呼ばれる所以だ。

 具体的には、入力側で内燃機関や電動駆動モーターの回転制御を行い、出力側では駆動輪の回転制御が行われるわけだが、入/出力側で状況に合わせて直径を独自に変化させるため、結果として駆動トルクと回転速度の調整が行える。

 EVでは通常、減速機を使って電動駆動モーターの回転を落とし、最適な回転数に整えてから駆動輪に伝えているが、減速機は金属製の歯車で構成されているためギヤ比はひとつに固定される。そして、このギヤ比は常用する回転域などによって決められ、EVの最高速度は組み合わせたギヤ比でのモーター回転数上限で定まる。

 EVでも走行性能の向上を目指すポルシェ「タイカン」と、アウディのEV「e-tron GT quattro」、「RS e-tron GT」(ベースはタイカン)では後輪側に2速の有段自動変速ギヤを備え、RS e-tron GTでは250㎞/hの最高速度と534㎞/hのAER(WLTCモード値)を両立する。

 今回試乗したCVT4EVはEVの総合性能を押し上げるためにCVTを組み合わせた。

■走行性能が向上

 ポルシェやアウディのような有段ギヤではなく無段階変速ができるCVTによって、たとえば試乗したフォルクスワーゲン「eゴルフ」(いわゆるCセグメント車両)では最高速度を10%以上向上させつつ、1クラスの上Dセグメント車両の場合はAERを最大4%伸ばすことが可能。さらに、ボディが大きく車両重量がかさむE~Fセグメント車両に搭載した場合であっても、加速性能が13%向上するという。

 テストコースに用意されたeゴルフは2017年モデルで、搭載していた減速機を外し、代わりにボッシュ製の金属ベルトを内蔵したCVTを搭載した。金属ベルトは金属製のコマで構成され、CVT4EVではコマのエレメント幅(いわゆる横幅)を内燃機関(2.5lガソリンエンジン)向けCVTで普及している24㎜とした。

 試乗は次の①と②の車両設定を切り替えながら、高速周回路での加速性能テストと、10~30%の登坂路における発進加速テストを行った。

 ①電動駆動モーターのトルク値を290N・m(eゴルフ正規の値)とし、CVTは最高速度が85㎞/hになるようレシオを定めた設定。

 ②電動駆動モーターのトルク値を203N・m(①から30%減少)とし、CVTのレシオカバレッジ(変速比率の幅)を2.55として最高速度を120㎞/hに設定。

 ①高速周回路/筆者はこれまでeゴルフに一般道路から高速道路まで試乗する機会を得ていたが、CVT4EVでもeゴルフと同等の加速力が確認できた。最高速度は出力(PSやkw)、加速力はトルク(kgf・mやN・m)によって大方決まるが、EVは電動モーターの強みである瞬間的なトルクの立ち上がりが特徴だ。よってEVは加速力が良いと評される。

 CVT4EVではプロトタイプ車両であることから、その瞬間的なトルク変化に対応できるよう専用の制御プログラムが組み込まれた。よって内燃機関のCVT車両で指摘されることの多い、エンジン回転が先行して加速力が後から追いつく、ゴムを引き伸ばしたかのような「ラバーバンドフィール」は少なく、緻密に管理された電動駆動モーター本来の走りが体感できた。

■トルクを下げているのに加速も最高速度も上がる

 ②高速周回路/制御プログラムの変更によって電動駆動モーターのトルク値を30%も減らしているのに、加速力はむしろ①を上回る。同乗したエンジニアによれば、「レシオカバレッジを拡大すれば、さらにトルク値を減らしても素のeゴルフと同等の動力性能を出せる」という。

 最高速度が85→120㎞/hにまで引き上げられるが、これは電動駆動モーターの回転数を上げたのではなく、CVTのプーリー直径を変化させることで得られた特性。からくりはこれまでのCVTと同じだが、回転制限とともに、回転域によって電力消費量が変化する電動モーターの特性に合わせることで、性能と効率の両方を伸ばすことができる。これがEVにCVTを組み合わせるひとつの利点だ。

 ①登坂路/鉄板敷きの登坂路でいったん停止し、「そこからアクセルを全開にして発進させるテスト」と、「ゆっくりアクセルペダルを踏み込んで発進させるテスト」、この2パターンを試した。

 アクセル全開では、駆動輪である前輪に回転力が一気に加わるため、タイヤは激しく空転し、なかなか発進できない。ゆっくり踏み込めばじんわり発進するものの、左足でブレーキペダルを踏み込み、アクセルペダルに同調させながらブレーキペダルをリリースする操作を行わないと坂道を後退してしまう。

 市販車の多くは、2つのペダルを同時に踏むとブレーキオーバーライド機能としてアクセル操作がキャンセルされブレーキ操作が優先されるので、こうした同時にペダルを踏み込む操作は現実的ではない。

 もっともCVT4EVが市販車に実装される際には、すでに多くの市販車に普及している駆動力確保を目的としたトラクションコントロール機能や、坂道発進補助機能(一時的なブレーキ保持)が働くため問題にならないはずだ。

 ②登坂路/拡大されたレシオカバレッジによってアクセル全開であってもほとんどタイヤを空転させることなく、鉄板敷きの登坂路からスルリと発進。ゆっくり踏み込んだ場合でもアクセル操作からすぐに車体が動き出すためブレーキペダルを同時に踏み込む必要がなかった。

 CVT4EVは現在、市販化に向けてテスト走行を繰り返し成果を積み重ねている。また、乗用車だけでなくレシオカバレッジと制御プログラムの最適化によって、車両総重量であるGVW(Gross Vehicle Weight)3.5tクラスの商用車にも対応できるという。

 ボッシュによると、テストを行ったCVT4EVを搭載したeゴルフは、標準のeゴルフから120kg車両重量が増えているという。これは評価用機器や使用したCVT、補機類まで含めた重量であるとのことだが、CVT4EV単体の重量は「開発中のため回答できない」とのこと。

■■CVTの特性は電動駆動モーターでも十分に活かせる

 今回、CVT4EV搭載車に試乗してさまざまなメリットがわかった。電動駆動モーターの最大トルク値を30%低くしても加速力が衰えないこと、さらにその状態で最高速度が上げられること、そして車両ごとにレシオカバレッジの最適化を図ることで、発進補助機能がなくとも坂道での発進加速が容易に行えること。

 つまりCVTの特性は、内燃機関だけでなく電動駆動モーターであっても十分に活かせるわけだ。将来的には、補機類を含めたシステム全体の小型軽量化を図れば車両との適合性が高まるし、制御精度を高めれば電費性能も向上させることができるため二次バッテリーの小容量化にもつながる。

 現状、EVのAERについては二次バッテリーの大型化に頼るところが大きいが、全個体電池などエネルギー密度の高い新世代バッテリーが実用化されるとAERは改善されるとの見方もある。

 ただ、全個体電池を開発するトヨタ自動車の経営陣によると「性能は良いが耐久性が足らず、実用化レベルに達していない」とのことだから、普及への道のりは長い。

 そうしたなかCVT4EVは、既存のCVT技術を使ってコストの上昇を抑えながら、乗用車、商用車、さらには最高速度の向上という観点からはスポーツカーに至るまで幅広い分野での適合を目指す。

 脱炭素社会に向けて、電動車、とりわけEVの総合性能を高めるこうした技術にも注目していきたい。

東洋経済オンライン

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最終更新:11/27(土) 7:01

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