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「夜飲み全面解除」でもビール会社が喜べないワケ

10/27 10:01 配信

東洋経済オンライン

 10月12日、ビール大手各社が9月の販売動向を発表した。発泡酒や新ジャンル(第3のビール)を含むビール類の販売数量は、前年同月と比べてキリンビールが20%、サントリービールは28%、サッポロビールは23%の減少となった。販売数量を公表していないアサヒビールは販売額で15%減った。

 各社で特に減少幅が大きかったのは、新ジャンルだ。前年同月比の数字はキリン33%減、サントリー29%減、サッポロ39%減。アサヒは新ジャンルの「クリアアサヒ」が販売額で28%減となった。

 理由としては昨年10月1日の酒税法改正の影響が挙げられる。増税となった新ジャンルの価格は約150円から約160円に上がった。増税前の9月に駆け込みでまとめて買う人が多かった分、今年9月の落ち込みにつながったわけだ。

■飲食店で酒類を出せない状況が続く

 改正により減税となったのが、缶ビールだ。新ジャンルなどと比べると価格はまだ高いが、ここにきて、家庭内での飲酒機会増加という追い風を受けている。市場全体では9月単月で前年比30%増となった。アサヒの「スーパードライ」は今年1~9月で前年比6%という増加率で、新ジャンルとは明暗がわかれた格好だ。

 その一方で飲食店向けに販売している業務用ビールは、新型コロナ禍により大きく低迷した。

 アサヒでは1~9月の飲食店向け(瓶・樽容器)販売数量が、前年比で約4割減となった。ビール大手にとっては、昨年よりも今年のほうが苦しい。今年は緊急事態宣言の発出が繰り返され、都市部などでは飲食店で酒類を出せない異例の状況が続いたからだ。

 緊急事態宣言が9月30日に解除されたことを受け、各メーカーは10月の業務用ビール出荷が、9月と比べて大幅に増加すると見込んでいる。キリンの「一番搾り」の業務用は9月比2.6倍、アサヒ「スーパードライ」は樽が同3.5倍、瓶が同2.7倍となっている。

 ただ、「回復」にはほど遠い。2020年10月比でみると、キリンは数%、サッポロが約1割、サントリーは約2割の減少となっている。ようは昨年と比べても悪化しているのだ。唯一、アサヒは昨年10月並みの出荷を見込んでいるが、「かなり強気にみているのだろう」(キリンHD広報)という声もある。

 感染者数が減少しても、在宅勤務の浸透や会社での飲み会が減るなど、外での飲酒習慣は確実に変わっている。飲食店も感染対策として以前より客席数を減らすなどの対策をとっている。人手が確保できず営業を本格再開できない店も少なくない。

 東京都は都の認証を受けている飲食店に対して、10月25日からワクチンの「接種済証」などの条件付きで、客の人数制限を撤廃。これまでは、認証店の酒類提供は午後8時まで、営業時間は午後9時まで、客の人数は1グループ4人との要請が出されていた。

 しかし大手酒類メーカー関係者らの間では「飲食店でのお酒の飲み方はもうコロナ前のようには戻らないだろう」といった見方が多く、手放しでは喜べない状況だ。

■ウィズコロナでの酒ニーズは「量より質」

 ビールメーカー各社は目下、飲食店で失われた販売機会を家庭内で捉えることに力を入れている。そのカギは「量より質」だ。

 アサヒは今年4月、開栓するとジョッキで飲む生ビールのように泡が出る「生ジョッキ缶」を発売。9月には「マルエフ」ブランドを投入した。同ブランドは、「スーパードライに次ぐビールブランドに育成する」と公言するほどの力のいれようだ。

 「辛口なスーパードライが明日への活力系とすると、炭酸とアルコール度数が弱めでまろやかな味わいのマルエフは、家でリラックスしながら飲むことを想定した」(松山一雄マーケティング本部長)。コロナ禍で「プライベートな時間を楽しむ」ニーズに合うと話す。どちらの新商品も想定を上回る需要によって、供給が追いつかない事態となっている。

 キリンは、3月に「クラフトビール」と位置づける「SPRING VALLEY 豊潤<496>」を家庭用の缶ビールで発売した。クラフトビールは、家でも多様な味わいを求める消費者ニーズに応える商品となる。

 同商品の販売は収益性の向上にもつながる。クラフトビールの350ml当たりの参考価格は250円(税抜き)。同200円(税抜き)である通常のビールよりも価格が上だ。

 一方で、これまでビールの売り上げを支えてきた飲食店への営業のあり方が、見直されるのは時間の問題だろう。「飲食店はブランド認知のためにも、なくてはならない存在。コロナ後に向けて関係性は保ちたい」と各社口をそろえる。だが、コロナ禍の約1年半では、飲食店を通じることなく新ブランドの認知を進めてきた。

 そもそも国内の業務用は、販促費がかさみ収益性の低い分野だった。大手ビールメーカーの関係者からは、「飲食店の数が多すぎ」「ここまで飲食店が増えたのはメーカーが飲食店に多額の協賛金を出してきたからだ」との本音も漏れる。

■すでにアサヒやサントリーは見直し

 ビールメーカーは、飲食店で自社製品を採用してもらうために、協賛金という名目で、冷蔵庫やジョッキグラスなど様々な物資を飲食店に提供してきた。だが、こうした協賛金は、販促費の増加にもつながる。アサヒやサントリーなどは飲食店に対し一律で払ってきた協賛金を、販売量に応じる形に見直している。

 東京商工リサーチが10月1~11日に全国約8000社を対象に行ったアンケートによると、緊急事態宣言等に関係なく忘年会、新年会を「開催しない」と回答した企業は7割に達した。コロナ禍を機に消費者の飲み方は確実に変化している。ビールメーカーは飲食店との付き合い方を再考せざるをえない。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/27(水) 13:22

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