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年収300万円の男性と「アプリ婚」40歳女性の選択

10/24 13:01 配信

東洋経済オンライン

 あなたが今から結婚相手を探すとしたら、「選ぶ」と「選ばれる」のどちらを取るだろうか。関西地方の大学で研究者として働いている井川千恵さん(仮名、40歳)は、「選ばれる」ほうにシフトチェンジして見事ゴールインした1人だ。

 Zoom画面の向こう側にいる千恵さんは昭和時代の女優のような穏やかな外見。話し方も丁寧でこちらの話もよく聞いてくれる。いわゆる女子力が高めに感じるが、本人によれば中身は「肉食系」らしい。

 「20代後半まで博士課程の学生をしていて、論文の執筆などに夢中で結婚や子育てなどは考えていませんでした。私は気が強くて自分の好きなことを貫きたい人間なんです。恋愛も同じでガンガンに行きます。相手も同じぐらい肉食系じゃないとくっつきにくいです」

■結婚を考えられる相手と付き合い始めたが

 人は見かけによらないものだ。そんな千恵さんが激務で体調を崩し、「自分の家族が欲しい」と思ったのは30代半ばになってからのこと。友だちに紹介されて、自分からも「ガンガン」に攻めて付き合い始めた2歳下の男性と結婚を考える仲になった。

 「でも、あるときに『価値観が違う』と唐突かつ一方的に婚約を破棄されてしまいました。彼が浮気相手との間に子どもができたことを知ったのは振られてから1年後です。彼はその相手と結婚しました。浮気や妊娠を早めにちゃんと話してほしかったですね。そうしたらすぐに諦められたのに……。女性として貴重な1年間を無駄にしてしまいました」

 今から冷静に考えると、その男性とは確かに価値観が異なっていた。例えば彼は外国人観光客に対する差別的な発言が多く、千恵さんは納得できずに反論していた。「従順な妻」を求める彼とは合わなかったと千恵さんは分析して反省する。

 「私が選ぶとチャラい雰囲気の人と出会いがちです。肉食系だけど誠実な人と結婚するには相手に選んでもらうべきだと思いました」

 マッチングアプリを活用するにあたり、千恵さんは婚活パーソナルトレーナーへの相談および婚活本で勉強して自分なりの方針と方法を固めた。1つ目は、前回の反省を生かして自分からはアプローチをしないこと。2つ目の方針は、プロフィールには学歴や年収をうそ偽りなく記し、論文執筆や趣味にも打ち込んでいる近況を長めに書くことだ。

 「アプリは登録当初はたくさんの『いいね』をもらえます。私の場合、50人ほどからメッセージ付きの『いいね』が来ました」

 この段階で千恵さんによる選別が行われている。「いいね」自体は200件ほどあったが、メッセージのないものは真剣度が低いとみなして無視したのだ。そして、自分のプロフィールをちゃんと読んで理解してくれているのかという基準でメッセージを精査し、20人ほどは落とした。職場でも学生のレポートを採点している千恵さんにとっては難しくない作業だろう。

 マッチングアプリには気軽さゆえのリスクもある。遊びや詐欺目的などの不誠実な人が混じっていることだ。そういう人は「効率」を重視するため、知的で長めのプロフィール文を読み込んで的確なメッセージを送るような手間はかけない。実際、絞り込みを行った後の千恵さんはメッセージのやり取りで嫌な思いは一度もしなかったと語る。

■出会ったのは家族といるような安心感の人

 「会ってみようかなと思った方は4人ほどいました。実際に会ったのは夫だけですけど」

 夫の幸太郎さん(仮名、49歳)は首都圏在住。千恵さんとは遠距離というだけでなく、スペックの面で婚活の場で選ばれにくい男性である。離別と死別の前歴が1回ずつあり、年収も300万円ほどだからだ。

 以前は大企業で働いていて倍ほどの収入があった幸太郎さんは起業を志して数年前に離職。現在は教育関係の会社で正社員として働きつつ、アマチュアスポーツの選手としても活躍している。仕事だけに集中はできないのかもしれない。

 幸太郎さんが関西在住だった千恵さんを選んだのには理由がある。死別した前妻も研究者であったこと、幸太郎さん自身が落語鑑賞や読書などが好きでハードコアな文化系である千恵さんに共感したことだ。

 「最初はZoomで話して、1週間後に東京で実際に会いました。浅草でドジョウ料理を食べてから寄席に行くという私好みのデートコースです(笑)。半日一緒にいて、家族といるみたいな安心感がありました。ドキドキの恋愛とはちょっと違います」

 交際が順調に進み、結婚することに決めた。千恵さんの父親は幸太郎さんとの年齢差や彼がバツ2であること、出会いがアプリだったことに難色を示した。コロナ禍で対面もしにくい。半年ほどの交際で「彼の人柄はどこに出しても恥ずかしくない。お父さんもきっと気に入ってくれる」と確信していた千恵さんは今年5月にZoomでの挨拶を決行。オンライン上だったが、父親も「すごく真面目な人なんだな」との感想を述べてくれた。

 新居は東京に構えた。千恵さんは職場と交渉して、毎週1泊2日だけ出勤して授業などを行い、あとは在宅で働くことにした。それでも交通費や宿泊費はかかる。

 収入やキャリアを考えれば、幸太郎さんのほうが関西に引っ越すべきだったのかもしれない。実際、幸太郎さんは今後の共同生活でかかる夫婦の費用を計算し、自分が関西に行くべきだと認識した。しかし、幸太郎さんの実家には高齢で介護が必要な父親と病弱な妹がおり、関東地方から離れるのは難しい。千恵さんのほうが折り合いをつけることにしたのだ。

■すり合わせをしながら暮らす

 「引っ越してから1カ月ほど経ちますが、自分のテンポとは違う他人と暮らすのは大変です」

 千恵さんがあまり表情を変えずに本音を漏らした。「大変さ」はある程度覚悟して結婚生活に臨んでいるのだろう。お互いに荷物が多いほうだが、千恵さんはさっさと片づけたい。

 一方の幸太郎さんは「これはどこに飾ろうかな」と楽しみながら少しずつ進めている。引っ越した際の段ボールがまだ積まれている状態だが意に介してない。家事は在宅していることが多い千恵さんがすることが多く、重荷になっている。

 「あまりに負担が多いと、ときどき小さく爆発します。私が不機嫌になって無口になると、彼も『どうしたの?』と聞いてくれるので話し合ってすり合わせをしているところです。彼は料理以外の家事はできるので問題はありません」

 すり合わせが難しいポイントもある。幸太郎さんは死別した前妻のことを今でも大切に思っており、位牌には毎朝手を合わせて前妻との結婚記念日には思い出のレストランに1人で訪れたいと主張。まあ、それはいい。千恵さんが「キツイ」と悲鳴を上げそうになったのは、幸太郎さんが前妻の遺品や前の結婚生活で使っていた食器類を新居にたくさん持ち込んだときだった。

 「私にもガマンの限界はあります。これから新しい生活をする気があるのか、と問いただして、大半は彼の実家に送ってもらいました」

 それでも千恵さんは毎日が楽しい。幸太郎さんからプロレスや大相撲の楽しさを教えてもらって一緒に鑑賞できるというプラスの側面だけではない。「一人で暮らすことにはとっくに飽きている」という千恵さんは自分のペースだけでは物事が決められない煩わしさをむしろ楽しんでいるのだ。

 「おそらく向こうも煩わしく思っているはずです。でも、迷惑をかけられる人が近くにいることは幸せなことだなと感じています」

 年齢を重ねてからの結婚は「今の仕事や生活を変えずに済むこと」に注視しがちだ。しかし、他人と人生を分かち合うことは新しい自分になることでもある。変化には苦労が伴いがちだが、それすらも生きる喜びだと思える人が晩婚には向いているのかもしれない。

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最終更新:10/24(日) 13:01

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