IDでもっと便利に新規取得

ログイン

豪雨被災から10年、復旧すすむ只見線不通区間 3つの鉄橋が流されたが、2022年に運転再開へ

10/24 19:01 配信

東洋経済オンライン

鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2021年12月号「復旧工事すすむ只見線不通区間」を再構成した記事を掲載します。

 2011年7月の新潟・福島豪雨で鉄橋の流失や土砂崩れ等で大きく被災し、会津川口―只見間が10年にわたり不通となっているJR東日本只見線において、全線開通に向けた復旧工事が続けられている。

 とくに被害が大きかった3カ所の鉄橋流失箇所については、今年7月末現在、第五只見川橋梁は橋脚・桁架設を完了して軌道工事中、第六只見川橋梁は橋脚の施工を完了し、桁を架設中、第七只見川橋梁は橋脚、桁架設から軌道工事も完了と発表されている。すべての工事完了は2022年度上半期を見込み、訓練運転等を経て2022年中の運転再開を目指すという。あと1年である。

 只見線は会津若松(福島県会津若松市)と小出(新潟県魚沼市)の間135.2kmを結び、福島県内のほとんどの区間は只見川に沿って走る。現在の車両は2020年に置き換えが行われたもので、キハ40系に代わり福島県側の会津若松―会津川口間は3月にキハE120形が、新潟県側の小出―只見間は7月にキハ110系が導入されている。

■震災に追い討ちをかけた空前の豪雨

 只見線は、会津若松から会津宮下までが戦前、1926年から1941年までに会津線として開通し、戦後、1956年に会津川口まで延伸、会津川口―只見間は1963年に電源開発の専用鉄道を改良して国鉄線に編入した。小出側は1942年に小出―大白川間が只見線の名称で開通していた。東西に分かれていた只見線が全通したのは1971年8月、県境の只見―大白川間の開通による。このとき線名も会津若松―小出間が只見線となった。

 その山深い峡谷をたどる姿から全国屈指の秘境路線と言われる。名だたる豪雪地でもあり、並行する国道252号は冬期、半年近くも県境の六十里越の区間が通行止めになるため、只見線は地域の交通路としても重視されてきた。

 しかし東日本大震災が発生した2011年、7月27日から30日にかけて会津地方西部を中心に猛烈な豪雨に見舞われ、一帯には震災に追い討ちをかけるような大きな被害が発生した。只見線については豪雨と河川の増水により、会津若松ー会津坂下間を除くほぼ全線にわたり盛土崩壊や土砂流出入、橋台や橋脚、護岸の洗堀等が発生、とりわけ会津川口―只見間では3カ所の鉄橋が流失した。

 会津川口―只見間以外の区間は、2012年10月までに運転を再開したが、当該区間は被災前より輸送量はきわめて少なく、災害発生前の2010年度の輸送密度は49まで低落していたため、JR東日本はバス転換を提示するなど存廃の議論となった。しかし、長期の議論と検討の末、地元自治体および福島県は鉄道の維持を決断し、2017年末に上下分離方式を採用して残すことでJR東日本と合意し、覚書が交わされた。

 福島県は運休区間(会津川口ー只見間)の鉄道施設と土地を保有、維持管理、JR東日本は被災前の1日あたり3往復を基本に運行を担う。営業再開までに福島県は第三種鉄道事業者、JR東日本は第二種鉄道事業者の許可を取得する。

 復旧費は約81億円(当時)で、福島県が3分の2、JR東日本が3分の1を負担し、鉄道施設の復旧はJR東日本が施工したうえで完成後に福島県に無償譲渡する。運行に際してJR東日本は県に線路使用料を支払う(実際は収支にあわせた減免措置が講じられ、実質的には無償になると考えられる)。

■流失3鉄橋は2018年に復旧工事スタート

 このような内容で復旧工事に漕ぎ着けたのは2018年で、6月15日に福島県金山町の大塩地区において起工式が執り行われている。

 冒頭に挙げた3橋梁の状況を順に記すと、会津川口―本名間の第五只見川橋梁は径間77.5mの曲弦下路トラス桁を挟んだ延長194.1m、5径間の橋梁で、川幅が広いため全壊は避けられたものの、会津川口方の左岸が洗堀されて橋台と上路鈑桁1径間が流失した。このため復旧は新橋台をやや後退させ、橋脚を1基増設、鈑桁は2連とされた。トラス桁を含む他はそのまま利用されている。鈑桁1径間分が延びているため、橋梁の延長は212.8mとなった。

 本名駅から会津越川方の第六只見川橋梁は、本名ダムの堰堤と並行に下流側近傍に位置している。径間77.5mの上路トラス桁と短い上路鈑桁を組み合わせた延長169.8m、9径間の橋梁だったが、左岸河床が洗堀されてトラス桁の橋脚が倒壊し、トラス桁および前後の上路鈑桁の計3径間が流失した。また、被災時には水位は上路トラス桁の下弦すれすれまで上昇した。このため、新橋梁は河床洗堀を考慮して、流路上の径間を倍近く拡げた径間135.6mの下路曲弦トラスを採用、左岸側橋脚と右岸側橋台を新設、左岸側鈑桁6連のうち4連のみ再利用している。

 会津横田―会津大塩間の第七只見川橋梁も、径間77.5mの上路トラス桁と右岸側に5径間の上路鈑桁を組み合わせた延長164.8m、6径間の鉄橋だった。ここは水位がトラス桁の半分近くまで上昇して桁を押し流し、隣接の鈑桁1連とともに流失した。そのため、径間106.6mの下路曲弦トラスを採用した。橋脚数を減らすため、鈑桁部分も径間を広げて2連に架け替えることが検討されたが、結果的にはそのまま再使用となった。トラス桁部分の変化により橋梁の延長は182.8mとなっている。

 なお、只見まであと1駅の会津塩沢―会津蒲生間には第八只見川橋梁が架かる。ここはダム湖の左岸側斜面に沿って線路が敷設され、旧橋梁は下路曲弦トラス桁2連の前後に大小計16連の鈑桁を連ねた延長371mで、さらに盛土区間137mを挟んで会津塩沢側には短い径間で16連の深沢橋梁144mも架かっている。

 これらは水を被り、全般にわたり土砂流入、堆積、道床流失、土留壁変状、流木堆積、一部の橋脚洗堀、盛土崩壊、路盤沈下等を引き起こした。このため復旧計画の当初案では約1kmにわたりレールレベルを最大7m引き上げることが立案された。しかし事業費が高騰することから5mの扛上案に改められ、さらに2016年11月、上流ダムの流量調整や当該地のダムの水位調整、計画的な堆砂対策による新たな水位低下策等を講じることとして、扛上せず旧状の線路を再生する最終案となった。

■1年縮まり半年延びた完成時期

 そこで、線路の安全対策としては、盛土箇所の法面工や土留擁壁の新設、補強、橋桁の修繕、河床根固めや橋桁流出防止ストッパーの設置等を行い、10月首現在、軌道関係の工事は完了している。これにより当該箇所の復旧費は約45億円と見積もられたものが約25億円に圧縮されるとともに、4年以上と見込まれた工期も3年に短縮された。

 一方、第六、第七只見川橋梁のトラス桁架け替えは、両岸に鉄塔を立てて架設用ケーブルを渡し、吊り下げられたクレーンにより桁を運ぶ手順とされたが、第六橋梁にあってはケーブルを固定するグランドアンカーを打ち込む堅い地層が想定より深い位置であることが着手後に判明。そのため固定地点にコンクリートウェイトを施工してアンカーを打ち込むこととなり、工事完了見込みが2021年度中から半年延び、2022年度上期中に変更されている。

 只見線は利用が著しく減少した路線だが、新体制による再度の全通に向けて、地元やJRによる利用促進の取り組みも進められている。その主な内容を挙げると観光路線としてのPRが筆頭であり、地域間の相互交流、自治体職員の通勤利用促進、学校利用の呼び掛け等がなされている。深い峡谷を走る様子は四季折々に絶景となり、自動車の利用層ではない海外観光客にはかけがえのない旅行手段となる。現下の状況に海外旅行者の姿は消えてしまったが、今後の回復が心待ちにされるところだ。

 折しも今年は、1971年8月29日に新潟県の大白川と福島県只見の間が結ばれ全通してから50周年となる。開通記念の当日には、通常は新潟―酒田間を運行している観光列車の「海里」を使用した団体臨時列車が新潟―只見間に運行された。また、各駅には50周年記念の幟が用意されたり、主要駅では記念入場券の販売も行われたりしたが、注目度が高かった模様で入場券はすでに完売している。

■列車を運休して設備強化工事実施中

 また、県や沿線自治体による協議会では、只見線の鉄橋やトンネル等について土木遺産認定に向けた取り組みを進めてきた結果、今年9月17日に土木学会から「只見線鉄道施設群」として選奨土木遺産の認定を受けた。

 大正期の最初の開通から1971年の全通時まで、幅広い時代それぞれの技術が集積し「福島新潟両県の地域資源の活用や豪雪地帯を結ぶライフラインとして機能美や四季の風景を創生する貴重な遺産群」と評され、第一只見川橋梁、第二只見川橋梁、六十里越トンネル等17施設が該当する。

 一方、災害復旧とは別に、線路設備を強化する工事が区間ごとに進められている。この9~10月には計32日間、大白川―只見間でトンネルの健全性を確保する設備強化工事が平日日中1往復の列車を運休して行われた。また、11月15日からは月内いっぱいの平日、計12日間、会津坂下―会津川口間でコンクリート枕木に交換する作業が行われる。このためやはり、実施日の日中は上下各1本の列車が同区間で運休となる。これらの代行輸送は行われないので、現地の様子を見ようと列車と代行バスの乗り継ぎ旅行を計画されている方は、注意されたい。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:10/24(日) 19:01

東洋経済オンライン

投資信託ランキング

Yahoo!ファイナンスから投資信託の取引が可能に

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング