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京急、旧ホテルパシフィック「解体直前」最後の姿 「アリガトウ」駅前開発の象徴に描く“品川愛”

10/23 5:31 配信

東洋経済オンライン

 2021年春に閉館した品川駅西口(高輪口)の商業施設「SHINAGAWA GOOS(シナガワグース)」は、かつて京浜急行電鉄が社運をかけて建設した「ホテルパシフィック東京」だった。1971年の開業以来、半世紀にわたって品川の発展を見守り続けてきたシンボルはいよいよ取り壊しが迫り、見納めの時期を迎えた。

■窓文字で最後のメッセージ

 閉館から半年が経った10月22日、品川駅側の正面の横幅いっぱいに、巨大な「アリガトウ」の5文字が出現した。客室の窓にピンク色の紙を貼り付けた「窓文字」だ。京急によると、11月には本格的な解体作業に入ることになっているため、この窓文字が見られるのは10月29日までの8日間限定という。

 中層階には40部屋分の窓を使い、大きなハートマークを配置した。1つの窓につき4枚の画用紙を用いており、全体で計100を超える窓をピンク色に変えた。

 窓に紙を貼る作業は10月22日の午前10時ごろ開始。京急社員と解体を担当する大成建設のスタッフ、合わせて約20人が参加した。上層部のエレベーターホールは照明もなく真っ暗闇の中。解体の準備が進む廊下から、ベッドやソファ、テーブルなど備品がすべて運び出されてがらんとなった客室に入り、約3時間半かけて作業した。当日は気温が低く、冷たい雨が窓の外を濡らしていた。

 京急電鉄がわざわざ解体直前の建物で窓文字を作ったのはなぜか。プロジェクトを担当した同社品川開発推進室の金子正輝さんは「品川の地域の皆さんに支えられて、今までやってこられた。ホテルの利用者の皆様にも、感謝の気持ちを伝えたいと考えた」と説明する。

 ハートマークのデザインや色については「感謝の気持ち、愛をダイレクトに伝えられる」との理由で決めた。「実際に複数の色の紙を窓に貼ってみて、駅の反対側の港南口から眺めてテストした。黄色やピンクなどが見えやすく、ハートマークと言えばピンクだろうと決まった」という。そのうえで「窓文字がちょっとでもホテルの思い出に浸っていただく機会になれば」と話していた。

■京急の威信をかけたホテル

 シナガワグースの前身となるホテルパシフィック東京は1971年7月27日に開業した。都内に高層建築自体が少なかった当時、地上30階、地下3階を誇り、品川開発にかける京急の威信が表れていた。大宴会場1、中・小宴会場13、高層宴会場7のほか、洋食、中華、和食、セラーバーなどレストラン・バーが11もあった。30階のスカイラウンジ「ブルーパシフィック」からの眺めや、名物のチーズケーキも人気を集めた。

 だが、ホテルパシフィック東京は老朽化などを理由に2010年9月末で閉館。その設備を活用して2011年4月、宿泊特化型の「京急EXイン品川駅前」(のちの「京急EXホテル品川」)と、グループ外企業が運営する飲食施設や婚礼施設などが入るシナガワグースが開業した。

 ホテルは至れり尽くせりのフルサービスの提供はなくなったものの、駅前の好立地が人気でビジネス利用が多い平日は900を超える客室がほぼ満室になったという。有田焼のタイルをぜいたくに使った外観やシャンデリアが輝くロビー、滝の水が流れる庭園など、お手軽な宿泊料金ながら最高級ホテルの雰囲気を随所に感じられる特異な施設だった。

 そして10年後の2021年3月末にはシナガワグースも営業を終了。閉館が近づくと、ホテルパシフィック時代を含め宿泊や挙式の思い出がある人々も別れを惜しんで次々と訪れるようになり、ロビーに設置したメッセージボードにはたくさんの言葉が寄せられた。

■過去にも窓文字でアピール

 品川駅へ向けて窓文字を発信するのは今回が初めてでない。ホテルパシフィック東京が閉館した2010年秋には、羽田空港国際線ターミナル駅(現在の羽田空港第3ターミナル駅)の開業に合わせ、窓の明かりで「羽田へKEIKYU」とアピール。ほかに「世界へ羽田」の文字と電車マークの組み合わせや「merry X’masとクリスマスツリー」、「火の用心」といったデザインもあった。

 今後、京急はトヨタ自動車との共同事業で、シナガワグースの跡地にオフィスやホテル、国際会議や展示会などの「MICE」を用途とする大型複合施設を建設する方針だ。

 これ以外にも品川駅周辺では、京急線の地平化と東西自由通路の延伸といった大改造が予定されている。また、北側の高輪ゲートウェイ駅周辺でも「品川開発プロジェクト」が控えている。

 紙を貼り付ける作業中、窓の下には品川駅周辺で進む工事の様子が見えた。京急やJR在来線、新幹線など、さまざまな列車がひっきりなしに行き交い、半世紀にわたって宿泊客の目を楽しませてきた景色もついに見納め。数年後、再開発で新たに建ったビルから眺める駅の風景は、現在とはかなり異なって見えるに違いない。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/23(土) 5:31

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