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メジャーリーガーが「ゴロ狙い」やめた意外な理由

10/20 13:01 配信

東洋経済オンライン

 「21世紀で最も魅力的な(セクシーな)職業」――。データサイエンティストがアメリカの有名経営学誌でこう紹介されてから9年。一部の企業には浸透したが、まだまだ知名度の低い職業だ。

 一方、デジタル化の進展で、企業が取り扱えるデータは増加し続けている。「データは21世紀の石油」とも呼ばれ、企業にとっては利益を生む源泉ともなっている。今のところ、データの埋蔵量は無尽蔵で、それを扱えるデータサイエンティストだけが不足している状態だ。

 今回はそんな圧倒的「売り手市場」のデータサイエンティストとはどんな仕事なのか、どんな力が必要なのか紹介しよう。

■マイクロソフトは1990年代初頭から積極採用

 マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツは「マイクロソフトが競争優位にたっているのは『ベイズ・テクノロジー』のおかげ」と語ったことがある。

 ベイズ・テクノロジーとは、トーマス・ベイズが提唱した「ベイズの定理」という考え方をビジネスに応用するというものだ。特定の条件のもとで、ある事象が起こる確率(条件付き確率)を計算するという定理で、古くからある単純な定理だ。新しいデータを取り込みながら、推定や予測の精度を高めることができるため、ビッグデータ時代に適しており、迷惑メールの推定などで高い効果をあげている。

 ビル・ゲイツは、この古くからある「ベイズの定理」の有用性に着目し、これを使いこなすことができるデータサイエンティストを1990年代初頭から積極的に採用した。その結果、マイクロソフト社はデータサイエンスで成功した代表的な企業となった。

 このようにデータサイエンティストは、まずデジタル関連のデータを取得しやすいIT企業で活躍するようになった。経験や勘に基づいて判断するのではなく、データを多面的、客観的に取り扱うことができるデータサイエンティストが新しいビジネスを創出していった。

 アメリカのプロ野球であるメジャーリーグベースボール(MLB)では2017年頃から「フライボール革命」という現象が起こった。ここにもデータサイエンティストが深く関わっている。

 従来、打者は“ボールを転がすべき”とされてきた。内野安打なども含め打者が出塁できる可能性が高くなり、チームの勝利に貢献できると考えられていたからだ。それに対して、ボールを打ち上げた方がホームランだけではなく安打になる可能性も高く、総合的にチームに貢献する割合が高まるとする考え方が「フライボール革命」だ。

 この考え方が流行した背景には、2015年からMLBで全面導入された「スタットキャスト」という、グラウンド上の選手やボールの動きを分析するデータ解析ツールがある。

 単純にゴロやフライといった結果だけではなく、打球の角度や初速度、打つ瞬間の画像などのデータを分析できるようになり、フライボールの価値が可視化され、「フライボール革命」は急速に広まったのだ。

 つまり、新しいデータがとれるようになったこと、それらのデータを分析し、新しい概念を生み出すデータサインティストがいたことで“革命”につながったのだ。ビジネスの世界でも、データをもとに”ゲームチェンジ”できるデータサイエンティストが求められている。

■2030年には「54万人」不足

 しかし、冒頭で述べたように、データサイエンティストは慢性的に人手不足状態だ。

 経済産業省がIT人材の需給状況について調査した結果がある。AI、ビッグデータ、IoTなどの新しいビジネスの担い手である「先端IT人材」に必要な人数を推計している。この中にはデータサイエンティストも含まれている。この調査では、先端IT人材は、2020年の12万人から、2030年には35万人に増加するが、実に54万人が不足すると予測している。

 今後、データサイエンスは色々な場面で必要となっていくであろう。マーケティング、受発注、工場における製造工程、配送、従業員の管理、人事制度など、データがあるすべての業務でデータサイエンティストが求められる。このため、データサイエンティストの人数が増えても、それ以上にデータサイエンティストに対する需要が伸び、さらに人材不足が加速することが予測されているのだ。

 当然、データ人材育成の取り組みも活発化している。ここ数年、「データサイエンス学部/学科」の新設が私立・国公立問わず相次いでいる。2023年には、一橋大学にも「ソーシャル・データサイエンス学部/研究科」が設置される予定だ。

 また、一般社団法人データサイエンティスト協会は、2021年9月に「データサイエンティスト検定」をスタートさせた。データサイエンティストに求められる能力が正式に整理されたことになる。同協会では、データサイエンティストには、「ビジネス力」、「データサイエンス力」、「データエンジニアリング力」の3つの能力をバランスよく持つことを求めている。

①ビジネス力:データをビジネスに活かす能力
ビジネスに必要なデータを収集・分析し、ビジネスに実装するスキル。何のためにデータを使うのかなどの課題設定の能力が問われる。

②データサイエンス力:統計的な知識を持ちながらデータを分析できる能力
機械学習、予測モデル、データ可視化などのスキル。高度なレベルとして、分析手法や数理モデルなどで、新しい方法を開発・導入する能力なども。
③データエンジニアリング能力:大量のデータを処理するための環境を構築する能力
環境構築、データ蓄積・加工、プログラミングなどのスキル。ビッグデータが取れるようになったため、以前にも増して重要になってきている。

 第一に「ビジネス力」が挙げられることに、意外に思った方も多いのではないだろうか。確かに、以前は「データサイエンス力」や「データエンジニアリング力」が重視されていた。まずは大量のデータを処理、分析することに主眼があったためだ。

 しかし近年では、与えられたデータを分析するだけではなく、具体的に、どのようにビジネスに活かせるかが重視されるようになり、自ら課題を発見する「ビジネス力」も備えたデータサイエンティストが求められている。

 ただでさえ人材が不足している中で、この3つの力を兼ねそろえた人材を見つけ出すのは至難の業と言える。しかし今の時代、企業が成長していくためには、避けられない課題となるだろう。

 次回はそんなデータサイエンティストを「採用」する際のポイントについて、説明しよう。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/20(水) 13:01

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