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中国EC大手「京東」が「新型実体企業」を標榜する訳 プラットフォーマー規制を乗り越える秘策とは

10/20 8:31 配信

東洋経済オンライン

欧米を中心に影響力の大きいプラットフォーマーのあり方に関してさまざまな議論が行われている。大きな利益を上げているのに、雇用創出や納税を通じて実体経済に貢献しているかが焦点の一つになっている。
中国も同様の課題を抱えており、当局によるプラットフォーマーに対する規制強化が続いている。こうした中、大手プラットフォーマーの京東が自らを「新型実体企業」と宣言した。この宣言が中国で物議を醸している。
倉庫や物流などのインフラ投資に注力し、約40万人の雇用をつくり出して社員の福利厚生も重視といった実体企業の属性を持ちながら、デジタル技術のノウハウを擁するため、新型実体企業だという。なぜ京東はこのような動きをとるのだろうか。

『チャイナテック:中国デジタル革命の衝撃』を上梓した、趙瑋琳氏がその背景と京東の戦略転換を解説する。

■京東が自らを「新型実体企業」と標榜

 中国では製品の生産や販売を行う企業、例えば製造業や工場を持つメーカーが「実体企業」と定義されている。これと対照的にオンラインで他のプレイヤーの製品・サービスと消費者(ユーザー)を集め、取引を支えるビジネスが「プラットフォーム経済」と呼ばれ、その最たる例がEC最大手アリババのようなプラットフォーマーである。

 当然、アリババに次ぐEC大手の京東もプラットフォーマーだ。だが、京東は8月からさまざまな場で自社が「新型実体企業」であることを表明している。

 8月下旬に行った中間決算で、京東は「わが社は実体企業の属性とデジタル能力を併せ持つ新型実体企業であり、プラットフォーム経済と根本的な違いがある」と宣言し、従来のプラットフォーマーのポジショニングから決別しようとする動きを見せている。

 また、9月上旬に開催された「2021年中国EC大会」では、京東の新CEOである徐雷氏は「デジタル技術を翼に、新型実体企業の発展経験をもって実体経済の発展を促す」とのテーマで基調講演をし、「京東が創業から実体経済に根差しサービスを提供してきた。京東が名実ともに実体企業だ」と強調した。

■実体経済に活路を求める
 プラットフォーマーに対する規制強化が続く中、京東の動きが物議を醸している。政府系メディアでは称賛する声がほとんどだが、「身を守るための動きだ」と違和感を覚える人も少なくない。

 中国の経済(政治)環境では多くの企業にとって、“実体”が魅力的な言葉だ。中国では生産年齢人口(15~64歳)が減少しているものの、雇用の確保が大きな課題である。加えて、製造業をはじめとする実体経済を重視するのが中国政府のスタンスだ。

 しかしプラットフォームビジネスに取り組むプラットフォーマーは、破壊的創造の力と力強い先進性を持っていても雇用の創出や整備投資は多いとは言い難い。

 だからこそ、どんな業界のどの企業も自身が実体経済との関連性および貢献を強調しようとしている。

 また、昨今、米中対立や人口減、規制強化などの逆風が強まる中、中国のプラットフォーマーが新たな成長ができるかが問われている。

 こうした中、多くのプラットフォーマーはトラフィックの競争だけでなく、さまざまな業界のデジタルシフトに伴うビジネスチャンスに攻勢をかけている。例えば、アリババは新しいデジタル工場モデルを打ち出し、短納期でオーダーメイドの生産を実現する新たな製造業のあり方を示そうとしている。

 新型実体企業とわざわざ言うまでもなく、プラットフォーマーは実体経済におけるデジタル化の担い手として牽引役を果たしながら、さらなる発展を求めることになろう。

■四つの柱で実体経済との融合を強化

 新型実体企業の宣言とともに、京東の戦略転換もより鮮明になっている。製品・サービスの提供対象を別に四つの柱で実体経済との融合路線を強めようとしている。

 消費者向けのサービスは依然として成長の基軸である。商品の品揃えが豊富な「京東商城」の販売力の強化とともに、低価格な製品を中心に取り扱う新たなオンラインマッケートプレイス「京喜」を立ち上げた。また、商品のオンライン販売だけでなく、OMO(オンラインとオフラインとの融合)戦略をも重視する。すなわち、ECサイトと実店舗の連携に力を入れて消費者の体験価値を高めていく。

 大手企業に向けてはデジタルソリューションを提供し、家電メーカーをはじめとする産業のデジタル化の“ブレイン”になろうとしている。

 中小企業の場合、サプライチェーンや物流の整備への投資を強化し、中小企業の生産力・ブランド力の向上とともに、京東の影響力を拡大していく。

 農村地域では、中国政府が掲げた農村振興の目標をビジネスチャンスにし、農村ECの拡大や農産物の流通販売に注力する。

 実体経済との融合強化に踏み込んで、新型実体企業という新たな顔でさらなる成長を追い求める京東がうまくいくか、他のプラットフォーマーやネット企業が追従してくるか、今後も注視したい。当然、新型実体企業を護符のように身につければ良いわけではなく、成否はデジタルの力で実体経済にどれほど寄与するかにかかっている。

 なお、日本でも楽天やヤフーなどのプラットフォーマーに対して、政府による規制の動きがある。だからこそ、プラットフォーマーのあり方に一石を投じた京東の動きを知っておいたほうが良いと筆者は考える。参考あるいは反面教師になるヒントが多く出てくるだろう。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/20(水) 8:31

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